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『君とボクの虹色の世界』

2006年11月14日 | 映画(か行)
『君とボクの虹色の世界』(原題:Me and You and Everyone We Know)
監督:ミランダ・ジュライ
出演:ミランダ・ジュライ,ジョン・ホークス,マイルス・トンプソン,
   ブランドン・ラトクリフ,カーリー・ウェスターマン他

パフォーマンス・アーティストとして活躍する、
ミランダ・ジュライの長編監督デビュー作。
彼女自身が主演を務める本作は、
作品全体が穏やかなピンク色で包まれているかのようです。

物語は私の大好きな群像劇。

クリスティーンは高齢者タクシーの運転手。
パフォーマンス・アーティストを夢見ている。

クリスティーンが恋をするリチャードは
ショッピングモールの靴店のセールスマン。
最近、妻のパムと離婚したばかり。
14歳の長男ピーターと6歳の次男ロビーを引き取る。
息子たちは大人になりすましてアダルトサイトのチャットに夢中。

その隣家に住む小学生シルヴィーは、
スーパーのチラシを見ては嫁入り道具を物色するのが趣味。

リチャードの同僚アンドリューは、
10代のヘザーとレベッカが自宅の前を通るたび、
卑猥な言葉を投げかける。

この町の美術館の学芸員、ナンシー。
クリスティーンが作品を持ち込むが、素っ気ない態度。

こんな十数名の登場人物はみんな、
心の隙間を埋めようと、人と人同士のつながりを求めています。
そこに向けられる優しいまなざし。

とても好きだったのは、クリスティーンのタクシーの固定客、
70歳になるマイケルの台詞。
彼女は施設で知り合ったエレンという女性に恋をします。
マイケルはクリスティーンにこう話します。

「20歳の頃に彼女と出会いたかったよ。
 でも、彼女にふさわしい男になるために
 50年かかったのかもしれない」。

20歳の頃に出会いたかったけれど、
もし本当にそうなっていたとしたら、
彼女と恋に落ちることはなかったのかもしれない。
今だからこその恋、生涯最後の恋。

だから、余命わずかとなったエレンが
身を引こうとしてマイケルに別れを告げたとき、
彼の心の痛みが私にも突き刺さるようでした。

「好きでもない妻をあちこちへ連れていったのに、
まだ彼女をどこにも連れていっていない」と嘆く彼に、
クリスティーンは「そんなに好きなのにあきらめるの?」と問います。
マイケルは悲痛な面持ちで「ちがう、彼女から去ったんだ」。

マイケルとエレンの想いを紡ぐかのような
クリスティーンの作品に胸がいっぱい。
観終わると、なんだか冬の日だまりにいる気分になります。

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