夜な夜なシネマ

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『湾生回家』

2016年12月11日 | 映画(わ行)
『湾生回家』(原題:湾生回家)
監督:ホァン・ミンチェン

前述の『追憶』とハシゴ。これもシネ・リーブル梅田にて。

沖縄の作品を観ると、沖縄出身とおぼしきお客さんが多いことに驚きます。
そしてこの台湾の作品は高齢層のお客さんで満席。
沖縄と同じようにというのが正しいかどうかはわかりませんが、
台湾に特別な想いを抱いている人が多いのだろうと推測します。

私は中国に興味があったわけでもないのに、大学では中国文学を専攻していました。
第一外国語は中国語だったにもかかわらず、まったくしゃべれません。
もっと真面目に中国語を勉強しておけばよかったと思うものの、
巷にあふれる中国人観光客を見るとやかましすぎてたまにムッ(笑)。
で、中国語を話している一団だけれども全然やかましくないなぁ思うと、
大陸中国の人ではなくて台湾の人だった、ということがよくあります。

一時頻繁に台湾に出張していたダンナも、大陸の人と台湾の人は違うと言います。
街なかでよく道を聞かれる私が、「今日中国人ぽい人から道聞かれた。
でもなんかすごく品のいい人やった」と言うと、「それ絶対台湾の人」とダンナ。
もしかしてすっごい偏見&差別でしょうか。すみません。(^^;

そんなわけで、中国の映画も嫌いじゃないけど、台湾の映画は大好きです。
特に台湾と日本のつながりを感じられる作品は、だいたい号泣するはめに。
『海角七号 君想う、国境の南』(2008)はその筆頭。
フィクションもノンフィクションも、台湾がらみは外せません。

「湾生(わんせい)」とは、1895(1895)年から1945(昭和20)年にかけての日本統治時代
台湾で生まれ育った約20万人の日本人を指す言葉。
日本の敗戦後、日本本土に強制送還された湾生の人々にインタビューし、
取材を重ねてつくり上げたドキュメンタリーが本作です。

その時代、労働力が過剰だった日本は、移民の送出に前向きでした。
台湾のみならず、ハワイやブラジル、カナダなど、さまざまな国へ人々が移り住みました。
よその国でもっと稼ぎたい、そんな気持ちから新天地を求めた人もいたでしょうが、
本作を観たところでは、比較的富裕な日本人が台湾へ移住したようです。

生活に必要なものは揃っているように聞いて行ってみたけれど、
何もないところを耕して畑を作ったり、事業を始めたり。きっと苦労は尽きなかったはず。
でも、食べるものは美味しく、皆親切で、楽しかったと目を細める湾生の人たち。

中には富裕ではなかった家庭から台湾へ養女に出された人もいました。
今は寝たきりになってしまった彼女のため、
家族が彼女の母親を探しに日本までやってきます。
決して彼女が捨てられたわけではなかったことを確かめたいと。

『セデック・バレ』(2011)や『セデック・バレの真実』(2013)で描かれたような、
悲惨な事件もあった。
それでも日本を叩くことなく、震災のときなどはいち早く義援金を送ってくれた台湾。
ダンナが台湾へ行ったときも、どこへ行こうが日本人と見るや、
親しげに日本語で話しかけてくれる現地の人が本当に多かったと言っていました。
日本に対して、日本人が思う以上に絆を感じてくれているのだと思わずにはいられません。
私たち日本人がそれをもっと感じて大切にしなければいけない。

今年観たドキュメンタリーの中では『さとにきたらええやん』がイチオシでしたが、
本作もものすごくよかったです。

私も行ってみなくちゃ、台湾に。

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