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『デビルズ・ダブル ある影武者の物語』

2012年08月05日 | 映画(た行)
『デビルズ・ダブル ある影武者の物語』(原題:The Devil's Double)
監督:リー・タマホリ
出演:ドミニク・クーパー,リュディヴィーヌ・サニエ,ラード・ラウィ,フィリップ・クァスト他

今年1月に新宿ミラノを皮切りに、全国のマニアックな劇場ばかりで公開され、
大阪では5月に新世界国際劇場にて公開されました。
HPを見たら、とてもユニークな劇場で興味を惹かれますが、
成人映画を併映している劇場に、女ひとりではちょっとよう行かん。(^^;
2週間前にDVDレンタル開始となったところ。

イラクの元大統領サダム・フセインの長男ウダイ・フセイン。
彼の影武者を務めたラティフ・ヤヒアの体験談を映画化したという触れ込み。
どこまで真実かわかりませんが、物語としては非常に面白いです。

中流階級に生まれ育ち、贅沢な暮らしはできないものの、
両親と弟妹に囲まれて、穏やかな毎日を送ってきた青年ラティフ・ヤヒア。
ところがある日、ラティフは拉致同然で車に乗せられる。
連れて行かれた先は、サダム・フセインの長男ウダイが住む屋敷。

学生の頃、ウダイとラティフは同級生。
血のつながりもないのに、双子のようにそっくりだと評判だった。
それゆえ、ウダイはラティフを自分の影武者に指名。
ラティフが断ろうとすると、家族の命はないものと思えと脅される。
影武者になるしか選択肢はない。

似ているとは言え他人。頬骨など微妙にちがう部分を整形。
異なる口元は付け歯を用い、身長差は靴で補うことに。
ウダイの屋敷の一室に住み、必要とあらばウダイの代わりに人前に出る。

しかし、このウダイの日常は想像を絶する狂気にまみれていた。
高級車を乗り回し、気に入った女性を見つければ、
それがたとえまだ少女であったとしても車に押し込んで連れ帰る。
用済みになればすぐにポイ。死んでしまおうが気にしない。
面白くないことがあれば銃やナイフを振り回し、後始末はすべて部下に。

影武者がいなくなれば困るのはウダイのほう。
殺人の片棒までは担げないと、ラティフは時に反抗してみせるのだが……。

あのサダム・フセインの息子の話でありながら、
製作国はベルギーで、台詞は英語のせいか、生臭さはほとんど感じません。
政治的な背景が描かれるわけでもなく、
ただただウダイのイカレっぷりに驚くばかり。
ウダイとラティフを一人二役、ドミニク・クーパーが快演していて、
同じ顔でどこまでも人格のちがう二人をみごとに見せてくれます。

みんなが二人を見誤るのに、ウダイの弟はさすがに騙されません。
テレビに映っているのは兄貴じゃないと断言する理由が、
「しらふで口の端から泡を飛ばしていないから」。
また、ウダイのふりをしてサダム・フセインと面会したラティフは、
その様子をウダイに伝えるさい、向こうもサダム・フセインの影武者だと言い切ります。
父親が息子を見誤るはずはやはりないそうで。

1996年に起きたウダイ暗殺未遂事件までが描かれていますが、
撃たれた身体の部位は実際とは微妙に異なっているようです。
これはいい具合にシャレて皮肉なオチではないかと。

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