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『帰ってきたヒトラー』

2016年06月28日 | 映画(か行)
『帰ってきたヒトラー』(原題:Er Ist Wieder Da)
監督:ダーヴィト・ヴネント
出演:オリヴァー・マスッチ,ファビアン・ブッシュ,クリストフ・マリア・ヘルプスト,
   カッチャ・リーマン,フランツィスカ・ヴルフ,ラース・ルドルフ他

仕事帰りにTOHOシネマズ西宮でハシゴの2本目。
1本目に観た『植物図鑑 運命の恋、ひろいました!』
いろいろある選択肢からどれでも良くて選んだ作品でしたが、
この2本目はそれよりずっと前に迷わずに決めていました。

ナチスの残党が出てくるぶっ飛び作品といえば、
記憶に新しいところでは『アイアン・スカイ』(2012)。
フィンランド/ドイツ/オーストラリア作品でした。
本作はそれよりも真面目で可笑しく辛辣で恐ろしいドイツ作品です。

1945年に自殺したはずのアドルフ・ヒトラー
その直前の失神した状態で意図せずタイムスリップ
ベルリンの空き地で目を覚ます。

いったい今が何年なのかわからぬまま、
ヒトラーは指揮を執るために総統地下壕へ向かおうとするが、
誰も自分のことを総統とは認めていない様子。
それどころか笑われたり一緒にカメラに収まることを求められたり。
キオスクで新聞を手にとってみれば、2014年。
店主の厚意で一晩居座らせてもらうことに。

一方、フリーの映像作家ファビアン・ザヴァツキは、
これまで契約を結んできたテレビ局からクビを告げられて困惑。
なんとかもう一度雇ってもらおうとネタ探しに躍起になっていた矢先、
街なかで回したビデオカメラに写っている人物を見て仰天。
アドルフ・ヒトラーのそっくりさん。これこそ絶好のネタ。

キオスクでヒトラーに接触することに成功したザヴァツキが撮影を開始したところ、
YouTubeで凄いヒット数を記録。
テレビ局に持ち込むと、副局長のクリストフ・ゼンゼンブリンクは取り合おうとしないが、
女局長のカッチャ・ベリーニが大乗り気。

ヒトラーが生きていたとしたらいかにも言いそうなことばかり。
まさかタイムスリップしてきた本人だとは誰も思わないから、
なりきり芸人だと信じられてその完成度の高さが評判に。
たちまちヒトラーは時の人となるのだが……。

相当笑えるだけにラストの恐ろしさが大きい。
と言っても、どんでん返しや衝撃的な出来事があるわけではありません。
ただ、独裁者はこうして大衆の心を掴んでゆく。
国民として同じ過ちは犯さない、騙されないと誓っているにもかかわらず、
するすると心に入られて、いつのまにか同じことに。
断固として拒否しているのが認知症のお婆さんだけだという皮肉。

歴史は繰り返されるのだということ。
面白いという言葉を使うのはどうかと思いますが、非常に興味深く面白い。
唸りました。

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