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『種まく旅人 みのりの茶』

2012年04月04日 | 映画(た行)
『種まく旅人 みのりの茶』
監督:塩屋俊
出演:陣内孝則,田中麗奈,吉沢悠,柄本明,石丸謙二郎他

シネ・リーブル梅田にて。
前述の『昼下がり、ローマの恋』とのハシゴです。

開映直前に滑り込んだらほぼ満席。
私と私の直後に来た人を二人連れだと思った係員が、
もう2列目の端しか並んでは座れないと教えてくれました。
で、2列目の端っこへ座ったところ、数分後にカップルが。

「私、前へ行きますね」と2列目をカップルに譲り、1列目の端っこへ。
すると隣のおじさまが「寄りますわ」とひとつ内側に移ってくれました。
私は食べ物も席も端好きなんですが、せっかくなので最前列の端から2番目へ移動。
確かに少しでも内寄りのほうが観やすいです。
こんな客同士のやりとりも心地よく、観る前からいい感じ。

東京で実家暮らしの30代の独身女性、森川みのりは、
アパレルメーカーにデザイナーとして勤務している。
しかし、経費削減のために縫製をすべて中国工場でおこなうことになり、
今後はそのマネージメントに当たるようにと言われる。
デザインの仕事ができないならば自分がいる意味はないと叫ぶ。

勢いで辞めたものの、このご時世では再就職先は見つかりそうにない。
就職情報誌で、農業カフェをオープンした親友の特集記事を読み、
久々に会おうと大分県臼杵市へ。

臼杵市には父方の祖父である森川修一も住んでいる。
父の修造と修一はわけあって疎遠だが、母の依頼で立ち寄ることに。
独身のうえに無職では顔を合わせづらいと思いつつ修一を訪ねると、
無愛想ながらも孫を手料理でもてなしてくれる。

早々に辞去を決めたところ、妙な中年男性がやってくる。
修一が破顔で迎えるその男は「金ちゃん」と言い、
茶園を営む修一と有機栽培の話で大いに盛り上がっている。
帰るに帰れなくなったみのりは、その日は修一宅に泊まる。
ところが翌朝、修一が心臓発作で倒れて……。

金ちゃんこと大宮金次郎は、実は農水省の凄い肩書きを持った役人なのですが、
修一にとってはただの農業好きの、作物の気持ちがよくわかる男。
金次郎はこれまでも全国の農家を回って農作業を手伝い、
肩書きをかざすことなく人びととの交流を重ねてきました。
やむを得ず畑仕事をすることになったみのりにも正体を明かさずに協力します。

農家の人びとの前では正体不明を貫き、
そんな彼がどこの誰だろうかなんて、誰もこだわらない。
ただみんな、畑で作物を通して心をかよわせます。

異動先で部下の前に一度も姿を見せないなんてあり得ないことで、
この辺りは若干イライラしますが、それもラストでスッキリ。
なんとなくすさんだ気分のとき、まばゆい緑が目と心にしみて、
春風が吹いたような作品でした。

ところで私のオススメは、京田辺市の「舞妓の茶本舗」。
通販などで全国展開も始め、規模拡大が嬉しいような心配なような。
ちょっと前までは店舗へ行けば、まるで軒先におじゃましたかのように、
おばあちゃんがごく低い温度で絶妙に美味しいお茶を出してくれるお店でした。
おばあちゃん、お元気なのかなぁ。

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