石油と中東

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国際石油・帝石の企業統合と新日本石油(帝石に嫌われ、経済産業省に油揚げをさらわれた新日石?)

2005-12-24 | 海外・国内石油企業の業績
 11月5日に記者発表された国際石油(旧インドネシア石油)と帝国石油(以下帝石)の経営統合は、12月19日、来年4月に発足する共同持株会社「国際石油開発帝石ホールディングス(株)」の役員人事が公表され、また同時に新日本石油(以下新日石)を含めた「三社合意について」と題する記者発表も行われて一件落着の様相を呈した。
 帝石の筆頭株主(16.5%)である新日石は、経営統合の発表当日これに待ったを掛けるようなコメントを発表、更に同月22日には帝石の株を20.3%まで買い増した。日経新聞は、新日石が帝石及び国際石油との3社統合を提案するであろう、と報道した。結局、19日の「三社合意」で、新日石は国際石油と帝石の経営統合に賛成し、事業面及び資本面で統合会社と新日石が今後協力を検討する、ことが決まった。
 11月5日から12月19日までのほぼ1ヵ月半の間に関係者間でどのような水面下の駆け引きが行われたかは知る由もない。しかし5年前の2000年2月に当時の日石三菱(現新日石)が帝石の第三者割り当てを引き受け、筆頭株主になった際の記者発表の内容を読み返すと、そこには両社が「石油・天然ガス開発分野の幅広い提携」を進めつつ「国際的な競争力を有する体制の構築」を検討するため「第三者割当増資を日石三菱が引き受ける」と謳い上げられている。しかしその後協力の具体的な成果は何一つ無く、そして今回、帝石は新日石を袖にし国際石油に身を預けた。そこに浮かび上がるのは、新日石が帝石に嫌われ、挙句の果てに国際石油の筆頭株主(36.1%)である経済産業省に油揚げをさらわれたと見られても致し方のない結末である。
 元々帝石は日本石油(当時)の鉱業部門が昭和16年に国策会社として分離独立したものである。新日石は戦後、上流部門(石油開発)から下流部門(石油精製)までの一貫操業会社となることを悲願に、北海、ベトナム、マレーシアなどで石油・ガス開発を手がけ、今では15万B/Dの自社原油を所有するまでになった。同社にとって帝石との統合はその仕上げになるはずであった。
 一方、経済産業省は石油のほぼ全量を海外から輸入し、しかも産油国や欧米のメジャー(ExxonMobil, Shellなど)に供給ソースを抑えられている現状を打破するためにも、同省がイニシアティブを取って日本企業による海外での原油開発、いわゆる「和製メジャー」実現の意向が強くある。さらに経済成長が著しい中国やインドなどが産油国との提携や石油開発企業の買収等、国家主導で積極的なエネルギー確保に奔走している現状に経済産業省は焦りを募らせていると思われる。
 新会社の役員構成を見ると国際石油が新会社の会長、社長ポストを独占している。会長、社長はいずれも元経済産業省幹部であり、帝石の会長、社長は新会社の代表取締役ではあるものの肩書は無い。また新日石は社外取締役として1名が名を連ねているだけである。国際石油が帝石を呑み込んだことは誰の目にも明らかである。「三社合意」では新日石が新会社の株を買い増す可能性に触れているが、今後新日石が新会社に影響力を及ぼすことはかなり難しそうである。
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