石油の内外情報を読み解く

内外の石油・天然ガス関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。(元ジェトロリヤド事務所長 前田高行)

見果てぬ平和 − 中東の戦後70年(21)

2016年05月25日 | その他
第2章:戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界
 
7.第三次中東戦争とナセルの死
 1964年に結成されたPLO(パレスチナ解放機構)は祖国の地パレスチナをイスラエルから奪回するための活動を開始した。当初活動の拠点はヨルダンのアンマンにおかれた。
 
 この頃中東では、エジプトとシリアのアラブ連合結成(1958年)とその解消(1961年)、イラクとヨルダンのハシミテ王国連邦結成および同じ年のイラク革命による連邦解体(1958年)、イエメン内線(1962年)などアラブ諸国は内輪もめを繰り返していた。これを横目でじっと眺めていたのがイスラエルである。エジプト、シリア、イラクなど各国の独裁的指導者たちは自分たちの失政を糊塗し、あるいは権力を正当化するため自国民に向けて「イスラエルを地中海に突き落とせ」と声を張り上げた。独裁者が国民の目をそむけるためにヘイトスピーチによる外交的扇動を行うのは洋の東西を問わない。
 
 一方のイスラエルも国内向けに亡国の危機キャンペーンを張った。時の首相は退役した隻眼の猛将モシェ・ダヤンを国防相に呼び戻した。ダヤンの戦略は先手必勝である。彼は世界第一級の諜報組織モサドが集めた周辺アラブ諸国の情勢を分析し、奇襲攻撃のタイミングを探った。
 
 1967年6月5日午前8時を期してイスラエルの奇襲攻撃が始まった。目指す相手は国境を接するエジプト、ヨルダンおよびシリアである。まずシナイ半島のエジプト空軍基地を奇襲し、空爆で滑走路を使用不可能にするとともに、駐機していたソ連製戦闘機すべてを破壊した。寝覚めを襲われたエジプト側は全く反撃できなかった。イスラエル軍は怒涛のごとくシナイ半島を横断、スエズ運河の対岸に達したのである。
 
 シナイ半島を制圧したイスラエルは踵を返すとヨルダン川西岸のヨルダン領を占領、さらにシリア領のゴラン高原も押さえた。第三次中東戦争はイスラエルの圧勝、エジプトはじめアラブ側の惨敗と言う結果に終わった。両者の戦闘はわずか6日間で決着が付いたのである。このため第三次中東戦争は俗に「6日間戦争」と呼ばれている。この戦争でイスラエルはシナイ半島とガザ地区、ヨルダン川西岸地区及びゴラン高原を一挙に手に入れ国土面積は倍増した。シナイ半島は後にエジプトに返還されたが、その他のガザ地区、ヨルダン川西岸およびゴラン高原は今もイスラエルによる占領状態が続いている。
 
 スエズ運河はしばらく閉鎖され国際経済に多大な影響が出た。それよりももっと大きな悲劇はヨルダン川西岸に住んでいたパレスチナ人たちの上に降りかかった。彼らの多くは難民となってヨルダンに雪崩れ込み、その数は百万人に達した。
 
 ナセル大統領は敗戦の責任を取って6月9日夜あらゆる公職からの辞任を表明した。しかしエジプト国民のナセルに対する思いは敗戦で消えるどころか、むしろエジプトを救えるのはナセルしかいないという熱思いが噴出した。辞任表明の直後からカイロ市民はナセルの翻意を求め街頭に繰り出してデモ行進を始めた。真っ暗な灯火管制の中で巨大な群衆の渦が生まれた。辞任表明からわずか3時間半後、ナセルは問題を国民議会の決定に委ねるとの声明を発表した。翌10日早暁、国民議会はナセルに国家元首としてとどまるよう要請し、ナセルは大統領職を続けることになったのである。
 
 8月、アラブ諸国はスーダンのハルツームでアラブ首脳会議を開き、三つのノー(No)と呼ばれるイスラエルに対する強硬路線を採択した。すなわち「ユダヤ人国家は承認しないというNO」、「イスラエルとは交渉しないというNO」、そして「アラブとイスラエルの和平はNO」と言う居丈高な宣言であった。実はエジプトもヨルダンも米国を仲介役とする話し合いでイスラエルから領土を取り戻したいと願っていたが、虚勢としか言いようのないアラブ各国首脳の掛け声に押し流されたのである。
 
 ナセルはその後3年近く大統領の座を保ったが、本人自身がレームダック(死に体)であることを最も良く理解していたに違いない。1970年8月、イスラエルとの停戦を実現すると、その翌月現職大統領のまま52歳の若さで心臓発作により急死したのであった。
 
(続く)
 
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(5月25日)

2016年05月25日 | 今日のニュース

・原油価格WTI$48.49, Brent $48.34、仏石油産業スト、6/2OPEC総会など今後の波乱要因も

 


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2016年05月21日 | その他

 これまでにブログ「アラビア半島定点観測」、「内外の石油情報を読み解く」および各種の雑誌への寄稿等に発表したレポート、エッセイ等を「マイ・ライブラリー(論稿集)」としてまとめました。 日々のニュースをモニタリングしているブログ「アラビア半島定点観測」及び「石油の内外情報を読み解く」とあわせてお読みください。

おすすめのコーナー:

・(New)五大国際石油企業2016年1-3月期決算速報

・(New)五大国際石油企業2015年度業績速報

・(New)(ニュース解説)サウジアラムコIPOニュースの波紋

・(New)(ニュース解説)決められないOPEC−第168回総会をめぐって

・(ニュース解説)OPECに石油輸入国?−インドネシア再加盟の背景

・米国、ロシア、サウジアラビアが三強:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(石油+天然ガス篇)

 


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今週の各社プレスリリースから(5/15-5/21)

2016年05月21日 | 今週の新聞発表

5/16 JX石油開発    英国北海カリーンガス田の権益一部売却について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2016/20160516_01_1050061.html
5/16 三井物産    オマーンでIbri Sohar-3 発電事業案件の調印式を実施 http://www.mitsui.com/jp/ja/topics/2016/1219269_8923.html
5/17 経済産業省    高木経済産業副大臣がアラブ首長国連邦(UAE)を訪問しました http://www.meti.go.jp/press/2016/05/20160517008/20160517008.html
5/17 経済産業省    液化石油ガス流通ワーキンググループの報告書を取りまとめました http://www.meti.go.jp/press/2016/05/20160517006/20160517006.html
5/17 経済産業省    「平成27年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)」が閣議決定されました http://www.meti.go.jp/press/2016/05/20160517001/20160517001.html
5/18 国際石油開発帝石    幹部社員の人事異動について  http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2016/20160518.pdf
5/18 石油資源開発    代表取締役の異動および役員等の異動に関するお知らせ  http://www.japex.co.jp/newsrelease/pdfdocs/JAPEX20160518_Appointment_President%26ManagingExecutives_j.pdf
5/20 三菱商事    秋田潟上ウインドファーム合同会社の設立について〜秋田県潟上市及び秋田市で6.6万キロワットの風力発電事業に参画〜 http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2016/html/0000030245.html


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ニュースピックアップ:世界のメディアから(5月20日)

2016年05月20日 | 今日のニュース

・米金利引き上げ予測で原油価格2%下落。Brent $47.53, WTI $46.89

・エンジニアリング企業仏Technipと米FMCが合併。売上200億ドル、コスト削減効果年間400億ドル

カタール、JERA(東電・中電のエネルギー調達合弁企業)と新LNG契約

 


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見果てぬ平和 − 中東の戦後70年(20)

2016年05月18日 | その他

第2章:戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界

6.立ち上がるパレスチナ人
 1956年の第二次中東戦争ではエジプトはスエズ運河の国有化を国際社会に認めさせたことにより政治的な勝利を得た。しかし軍事的には間違いなく敗北であった。結果としてエジプトのナセル大統領はアラブの英雄として讃えられたものの、パレスチナに住み続け或いはパレスチナからヨルダンなどの隣国に移住した「パレスチナ人」と呼ばれる人々は歴史の渦にのみこまれる羽目に陥った。

 そもそもパレスチナとはシリア南部地中海東岸の地域的名称である。そこには古代からセム系の民族が住んでいたが、歴史に登場する最も古い部族はヘブライ語を話すユダヤ教徒である。彼らはパレスチナを自分たちに約束された土地イスラエルと称した。イスラエルとはユダヤの祖先アブラハムの孫ヤコブの別名である。

 しかしもちろんここに住んでいたのはユダヤ教徒だけではない。むしろ住民の多くはアラブ人である。キリスト生誕の紀元後はローマ帝国が支配し、キリスト教の勢力下に入る。そして7世紀にイスラームが興るとそこはアラブ人イスラム教徒の世界となり、その後1300年の間イスラームが支配する平穏な世界であった。もちろん地域の小競り合いが無かった訳ではないが、ヨーロッパや他のアジア地域に比べれば極めて平和な世界であったことは間違いない。オスマン帝国など歴代王朝の過酷な圧政があったことは否定できないが、それはヨーロッパやアジアでも同じだった。とにもかくにもパレスチナの住民たちは平和な暮らしを続けてきた。

 その平和を破ったのが20世紀の初めヨーロッパのユダヤ人たちが唱え出したパレスチナ祖国建設運動である。ロスチャイルドなど豊かな同胞の支援を受けて貧しいユダヤ人たちが大挙してパレスチナに押しかけ、先住民であるイスラム教徒(ムスリム)のアラブ人を圧迫した。ユダヤ人たちは「国無き民に民なき土地を」と言う巧妙なスローガンでパレスチナ入植を正当化した。しかしパレスチナが「民なき土地」ではないことは誰の目にも明らかである。

 結局パレスチナのアラブ人たちの多くは土地を追われ難民となってヨルダンなど隣国のアラブ諸国に移り住んだ。その動きを加速したのが第一次中東戦争、いわゆるイスラエル独立戦争である。70万人ともいわれるパレスチナ人が祖国を追い出された。祖国に残り或いは祖国を離れたアラブ人たちは以後「パレスチナ人」と呼ばれるようになった。親子代々パレスチナに住み続けた彼ら自身にはそもそも「パレスチナ人」などと言う意識は無かったはずである。第二次大戦後、国民国家が当たり前となり誰しもが「何々国民」として色分けされる世界になり、パレスチナにパレスチナ人が生まれたのである。

 彼らパレスチナ人はいつの日にかアラブの同胞が自分たちの土地を取り戻してくれると信じ、1948年の第一次中東戦争(イスラエル独立戦争)さらには8年後の第二次中東戦争(スエズ戦争)に耐え抜いてきた。第一次中東戦争ではイスラエルなど一ひねりで潰してみせると豪語したアラブ諸国の為政者たちに裏切られた。そして第二次中東戦争(スエズ戦争)ではエジプト軍とイスラエル軍の装備と戦闘能力の差をいやと言うほど見せつけられた。結局第一次中東戦争ではアラブ連合軍が単なる烏合の衆に過ぎなかったことを思い知らされ、第二次中東戦争ではスエズ運河の国有化を勝ち取ったナセル大統領ただ一人が英雄となった。パレスチナ人の心の中にはアラブ陣営が束になってもイスラエルには勝てないと言う無力感が残っただけであった。まさに「一将功成って万骨枯る」である。パレスチナ人はアラブの同胞に失望した。

 パレスチナ人たちに残された道はただ一つ、自ら立ち上がることであった。1964年、彼らはパレスチナ人の民族自決と離散パレスチナ人の帰還を目的とするパレスチナ解放機構(PLO)を結成する。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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縮み続ける売上・利益・設備投資:五大国際石油企業2016年1−3月期決算速報(5完)

2016年05月17日 | 海外石油企業(メジャー等)の動向

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行)論稿集」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0377OilMajor2016-1stQtr.pdf

 

2.2015年第1四半期以降の四半期別業績の推移(続き)

(2)利益の推移(続き)

(2−2)上流部門(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-63.pdf 参照)

 5社の上流部門の利益はいずれも下流部門の利益に比べて見劣りし、前期(2015年第4四半期)および今期は5社中3社が欠損を出している。ExxonMobilも前期までは利益を計上していたが今期はマイナスに転じている。Shellは昨年は全四半期を通じてマイナス決算であり、今期漸く利益を計上している。BP及びChevronも前期および今期の2期連続で10乃至20億ドル強の巨額の損失を計上している。

 

(2−3)下流部門(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-64.pdf 参照)

 下流部門は全社が年間を通じて利益を出している。特にExxonMobilは昨年第2四半期に上流部門の3倍以上の64億ドルの利益を上げている。Shellの場合は昨年は年間を通じて25億ドル前後の安定した利益を計上しており、今期も17億ドルの利益であった。Totalもコンスタントに10億ドル台前半の利益水準を維持している。各社とも原料となる原油の価格が年間を通じて低く推移したことにより下流部門の利益を確保している。

 

(3)設備投資の推移 (図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-65.pdf 参照)

 5社の四半期の設備投資額は100億ドルを下回る低い水準が続いており、また期を追うごとに投資額が減少する傾向にある。ExxonMobilの場合は昨年1-3月期の77億ドルに対して今年1−3月期は34%減の51億ドルにとどまっている。Totalも同様に58億ドルから39億ドルの33%減である。BPの設備投資は各期の変動が少ないが、投資規模は40億ドル台と5社の中では最も少ない。

 

以上

 

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        前田 高行        〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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縮み続ける売上・利益・設備投資:五大国際石油企業2016年1−3月期決算速報(4)

2016年05月16日 | 海外石油企業(メジャー等)の動向

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行)論稿集」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0377OilMajor2016-1stQtr.pdf

 

 

2.2015年第1四半期以降の四半期別業績の推移
 五社の売上高、利益(全体、上流部門および下流部門)、設備投資に関する2015年1-3月期以降今期までの四半期ごとの業績推移は以下の通りである。

(1) 売上高の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-61.pdf 参照)
 2015年第2四半期をピークとして5社の売上高は4期連続で減少している。各社の2015年第2四半期売上高と今年第1四半期の売上高を比べると、ExxonMobilは741億ドル→487億ドル、Shellは740億ドル→497億ドル、BP606億ドル→385億ドル、Total447億ドル→328億ドル、Chevron404億ドル→236億ドルである。減少幅が最も大きいChevronは42%減、最も少ないTotalでも27%減であり、ExxonMobil、Shell、BP3社も30%台の減少である。

 これは言うまでもなくこの間に原油価格が大幅に下落したためであり、Shellの決算資料でこの間の四半期平均原油価格の推移を見ると55.84ドル/バレル(2015年第2四半期)→45.22ドル/バレル(同第3四半期) →38.81ドル/バレル(同第4四半期)→29.49ドル/バレル(2016年第1四半期)となっており、原油価格はこの間に半値近くになっている。各社は販売価格の落ち込みを生産量の増加でカバーしようと努力し(前項「原油・ガス生産量」参照)、売上高を価格の下落幅以下に抑えたが売り上げの大幅な落ち込みは避けられなかった。

(2)利益の推移
(2−1)全体利益水準の推移(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-62.pdf 参照)
 過去1年間の四半期ごとの利益水準は各社によって異なるものの、全体を通してみると下落傾向にあると言って良く、またExxonMobil以外の4社は1期またはそれ以上の複数期で欠損を出している。2015年第1四半期はExxonMobilの49億ドルを筆頭に5社ともに利益を計上したが、ExxonMobilのその後の利益は減少を続け今期は18億ドルにとどまっている。

 ExxonMobilと同程度の売上規模であるShellは第3四半期に74億ドルと言う大幅な欠損を記録している。その後業績は回復したが利益水準は一桁台(第4四半期:9億ドルおよび今期:5億ドル)に低迷しており、1年間を通じると利益の凋落傾向が止まらない。

 BPは5期のうち3期がマイナスであり、特に最近の2期は連続して欠損である。Chevronも同様に2期連続の赤字である。TotalはExxonMobilを除く4社と比較すると増減幅は小さいが、利益は低迷状況を続けている。

(続く)

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縮み続ける売上・利益・設備投資:五大国際石油企業2016年1−3月期決算速報(3)

2016年05月13日 | 海外石油企業(メジャー等)の動向

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行)論稿集」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0377OilMajor2016-1stQtr.pdf

 

 

1.五社の1−3月期業績比較 (続き)
(4) 設備投資
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-4-22.pdf参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-54.pdf 参照)
 2016年1−3月期の各社の設備投資額はChevronが65億ドルと最も多く、Shellが53億ドでこれに続いている。第3位のExxonMobilの投資額は51億ドルである。またBPは44億ドル、Totalは最も少ない39億ドルにとどまっている。前年同期と比べると各社とも減少しており、特にExxonMobilおよびTotalは3分の2程度にとどまっており、Chevronも25%減である。低迷する石油市況を受けて各社とも設備投資には消極的な姿勢が見える。

(5)原油・ガス生産量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-4-22.pdf参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-55.pdf 参照)
 今年1−3月の原油生産量はExxonMobilが平均日産量254万バレル(以下B/D)で5社の中では最も多い。その他の4社はShellとChevronが同じ171万B/D、BP 141万B/DでTotalはExxonMobilのほぼ2分の1の129万B/Dで5社の中では最も少ない。ExxonMobilは世界各地で万遍なく原油生産をおこなっており他社を圧倒している。前年同期と比較するとExxonMobil、ShellおよびBPは10%以上伸びており、Totalは4%の増加であった。これに対してChevronは前年同期の生産量180万B/Dを下回っている。原油価格が低迷する中で米国内におけるシェールオイルが主力の同社は減産を余儀なくされているようである。

 天然ガスの生産量はShellとExxonMobilがそろって100億立方フィート(以下cfd)を超える生産を誇っている。残る3社はTotal64億cfd、BP59億cfd、Chevron53億cfdと上位2社の5乃至6割前後である。前年同期に比べるとShellは16%増と大幅に伸びた一方、ExxonMobilは9%の減少となった。その他3社もTotal、Chevronは微増、BPは微減となっている。

 天然ガスを石油に換算した原油・天然ガスの合計生産量ではExxonMobilは433万B/Dでこれに次ぐのがShellの366万B/Dである。その他の3社はいずれも250万B/D前後である。石油と天然ガスの比率を見ると、ExxonMobilは石油59%、天然ガス41%であり石油の比率が高い。BP、TotalおよびChevron3社も同様に原油生産量が天然ガス生産量を上回っており、特にChevronは石油67%対天然ガス33%と石油が天然ガスの2倍以上である。これに対してShellは原油生産量が49%、ガス生産量が51%と4社の中で唯一天然ガスが原油を上回っている。Shellは今年初め英国のBGを買収しており、重点を天然ガスにシフトしつつある。

(続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(5月13日)

2016年05月13日 | 今日のニュース

・カナダ山火事、インドの需要急増で今年の需給ギャップは劇的に縮小:IEAレポート

 


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