石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

消費量でインドに追い抜かれた日本:BPエネルギー統計2016年版解説シリーズ:石油篇18(完)

2016-07-18 | BP統計

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます


5.世界の石油精製能力(続き)

(景気低迷で稼働率70%台にとどまる中国!)

(5)主要な国と地域の精製設備稼働率(2000~2015年)

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-5-G04.pdf 参照)

 精製能力に対して実際に処理された原油の量(通油量:Refinery throughputs)で割ったものが設備の稼働率である。ここでは日本、米国、中国、インド及び欧州・ユーラシア地域について2000年から2015年の稼働率を比較検討する。

 

 2000年には米国とインドが90%を超える高い稼働率を示し、日本も83%を記録している。これに対し中国および欧州・ユーラシア地域は74~75%にとどまっていた。インドはその後も高い稼働率を維持し2003年以降は稼働率100%を超える状況が続き、2015年の稼働率は106%であった。前項の精製能力の推移に見られるとおりインドは2000年以降精製能力を拡大しており、2015年には2000年の1.94倍の能力に達しているが、需要の伸びに追い付かず慢性的な精製能力不足であることがわかる。

 

 米国の稼働率は2000年の91%をピークに年々低下し2009年には82%まで下がった。その後稼働率は年々上がっており2015年には88%とほぼ2000年の水準に戻っている。同国の精製能力は2000年の1,660万B/Dに対して2015年は1,832万B/Dに増加しており、近年経済が回復しガソリンなどの石油製品の需要が堅調であることを示している。但しシェールオイルおよびOPECが高水準の生産を維持しているため昨年の後半以降原油価格が急落していることを勘案すると米国の石油産業は「利益なき繁忙」の状況にあるとも言えそうである。

 

 日本は設備能力の削減により漸く稼働率が上がりつつある。前項に示したとおり日本の精製能力は2000年の501万B/Dから2015年には372万B/Dへと4分の1も減少している。その間の稼働率は2000年の83%が2005年には91%に上昇し設備廃棄の効果が見られた。その後稼働率は再び80%台前半に低迷しており、2012年は80%に落ちたため、更なる設備削減が行なわれた結果、2015年には88%まで回復した。

 

 中国の精製能力は2000年の541万B/Dから2015年には2.6倍の1,426万B/Dに急拡大している。その間、2011年までは80%前後の稼働率で推移してきたが、2012年以降は稼働率は70%台にとどまっており景気低迷の影響がうかがわれる。

 

 欧州・ユーラシア地域の精製能力は2000年の2,503万B/Dから2015年には2,364万B/Dに減少している。しかしながらこの間の稼働率は80%前後でありほぼ横ばい状態である。現在でも設備過剰感が残っているようである。

 

(石油篇完)

 

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        前田 高行        〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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