九品人の落書帖

写真をまじえ、身の回りで見聞きしたことを、つれづれなるままに!

健忘症

2017年09月07日 | 書籍
 最近、あまり聞かなくなった言葉に「健忘症」というのがある。
 認知症という言葉が、すっかり定着したせいでもあろうか。
 広辞苑で健忘症を引くと、
 ①、記憶がいちじるしく障害される症候。
 ②、物事を忘れやすい性質、とある。
                        ■
 前置きは、そのくらいにして、
 暇つぶしに雑誌をめくっていたら「健忘症の特効薬」という活字に出会った。
 載っている話は、中国・明代の典型的な健忘症の男の話しであり、
 筋書きも大げさで愉快なので、以下、引用させてもらう。
                        ■
 斎(中国・春秋時代、山東省)に、ひどい健忘症の男がいた。
 行けば止まることを忘れ、寝ては起きることを忘れるという、ていたらく。
 その妻が心配して「よく膏盲に入った病気を治す名医がいるから、行って診てもらったら良かろう」とするめた。
 くだんの男は、早速、馬にまたがり弓矢を携えて出かけた。

 ところが、まだ一丁も行かぬうちに、急に便意をもよおした。
 馬を降り、矢を地面に立て、馬を樹につないで用便を済ました。
 終って左のほうを見ると、矢が地面に突き刺さっている。

 これは危なかった、どこから飛んで来たのだろう。
 もう少しで当るところであったと、首をすくめた。
 右を見ると、馬がつないである。

 こんないい馬が手に入って良かったといい、馬を引いて出かけようとした。
 すると、いま排便したばかりの自分の糞を踏みつけた。
 足をちぢめて、糞を踏んで靴が台なしだ、
 惜しいことをしたと言いながら、くるりと回って、もと来た道を戻って行く。

 本人は、それとは知らず自分の家の前で、しばらく、うろつき、
 ここは誰の家だろう?病気を治してくれる先生の家かも知れないと、つぶやく。
 そこへ妻が出て来て、夫に向かい口ぎたなくののしった。

 すると、男は、しょんぼりして、
 ご新造さんは私と知り合いでもないのに、
 どうして、そんなにガミガミ私をいじめるのですかと言った。
                        ■
 この話しには、健忘症に対する2種類の特効薬も紹介されている。
 いずれも漢方薬で、
 (1)巴戟天丸=健忘症の専門薬。丸薬で毎服30粒を服用。
 (2)丹参飲子=記憶を善くする薬。煎じて随時服す。
 ただし、この2種類の処方については、信用できる医師の指示に従えとある。

コメント
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