goo

国木田独歩



今回宿泊したのは渋谷エクセルホテル東急。中央のビルです。



講座が修了した日、ホテル周辺の街を足の向くまま歩いて、たくさん写真を撮りました。東京はまったく土地勘が無いので、どのあたりを歩いているのかという認識がないんですが・・・





















西武百貨店のまえに立っている小さな像に眼がとまりました。



台座にはこう刻まれています。

明治29年、国木田独歩は愛妻信子に去られた悲しみを抱いてこの付近に住み、武蔵野を散策し、田山花袋、柳田国男、宮崎湖処子などと交わった。
伊藤整 日本近代文学館長

これを見てはっとしました。全く偶然、こういうものに行き当たったことに驚きました。彼が渋谷に住んでいたことは知っていましたが、それが駅に近いこのあたりだったとは・・・



今年7月5日のブログに、こんな地図をアップしています。
http://blog.goo.ne.jp/ki_goo/e/149de275790052285e6ee359e3209364





明治30年のころ、このあたりは雑木林だったんです。
私が写真を撮って回った街は、全くの別世界でした。
当時、独歩が書いた詩です。

嗚呼(ああ)われはこの孤屋(こおく)を愛す。
今われ独り住む、人の声 あたりに聞えず。
世の波の音、聞くべくもあらず。
ただ梢を渡る風の音の遠く聞ゆるのみ。
ただ雪 融(と)けて落つる滴声の軒をめぐるのみ。
ああ彼(か)の遠き風の音は冬の夜寒の声なるかも。
われこの声を聞けば遠き国の恋人が音信(おとづれ)を聞く心地して哀感を催す。
われ実にこの孤屋を愛す。
声はりあげて歌はんも心のままなり。
声はりあげて泣かんも心のままなり。
声はりあげて祈らんも心のままなり。
われただ独りこの野中の孤屋に坐す。
われ今こそ赤裸々のわれなり。
遠き友を思ひ、過ぎし昔を思ひ、
老ひたる親を懐(おも)ひ、恋の夢を思ふ。
天地悠々の感 自から沸き、
哀々たる情 自然に発す。
嗚呼われこの孤屋の独坐を愛す。
夜半独り眠らず孤燈に対(むか)って坐す。
泣かず、歌わず、祈らず、
且つ自ら涙 数行(すうこう)下る。
嗚呼われこの孤屋の独坐の黙思を好む。


出典:http://www.h7.dion.ne.jp/~musashi/juunen-denen.htm



国木田独歩が住んだ116年ほどまえ、渋谷の夜は真っ暗闇だった。
彼はそんな一軒家で独座を愛したという。
« 悟りのシンク... 渡辺長男 »