529)臨床試験で示された医療大麻の抗がん作用

図:神経組織はニューロン(神経細胞)とそれを支えるグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア)から構成される。①脳腫瘍のグリオブラストーマ(膠芽腫)はアストロサイトが悪性化した腫瘍で、②標準治療として手術や放射線治療や抗がん剤治療が行われるが、予後は極めて悪い。③グリオブラストーマにはカンナビノイド受容体のCB1とCB2が発現しており、これらの受容体がリガンドで活性化されると、細胞増殖の抑制とアポトーシス誘導などによって抗腫瘍効果が得られる。④大麻草に含まれるΔ9テトラヒドロカンナビノール(THC)はCB1とCB2を介して抗腫瘍活性を示す。⑤カンナビジオール(CBD)はカンナビノイド受容体(CB1とCB2)を介さないメカニズムで抗腫瘍作用を示す。⑥膠芽腫の抗がん剤治療にTHCとCBDを含む大麻抽出エキスを併用すると生存期間を延長できることが報告されている。

529)臨床試験で示された医療大麻の抗がん作用

【約2500年前にがん治療に大麻が使用されていた】
アルタイ共和国はアジアの中央に位置するロシア連邦内の自治共和国です。アルタイ共和国のウコク高原(Ukok Plateau)は、ロシアのシベリア南西部、中華人民共和国、カザフスタン、モンゴル国との近くに位置するアルタイ山脈地方の草原で、大自然が保たれています。
大規模な考古学調査で、永久凍土から古来アルタイ山脈で暮らしていたパジリク人と見られる凍ったミイラが見つかっています。その一つに1993年に発掘された「シベリアの氷の女性(Siberian Ice Maiden)」があります。
ウコクの王女(Princess of Ukok)」や「アルタイの王女(Altai Princess)」などとも呼ばれています。
今から2500年くらい前に生きていた女性で、「王女(Princess)」となっていますが、実際は祈祷師か巫女のような職業で、病気の治療に関する知識を持っていたことが推測されています。 

図:中国とモンゴルとカザフスタンに接するアルタイ共和国のウコク高原で1993年に発掘された「ウコクの王女」(「アルタイの王女」、「シベリアの氷の女性」とも呼ばれる)と呼ばれるミイラは、入れ墨が鮮明に残っているほど保存状態が良く、乳がんに罹患していたことが判明している。さらに、大麻を痛め止めの目的で使用していたことが明らかになっている。

20歳代で死亡しています。永久凍土によって保存状態は非常に良く、その後の医学的検査(MRIなど)で、リンパ節転移を伴う乳がんにかかっていたことが判明しています。
さらに、このミイラが発掘された石室から大麻が見つかっています。これは痛み止めとして自らが使用したものと研究者は考えています。
ミイラの発見者である考古学者ナターリヤ・ポロスマク(Natalya Polosmak)教授は「この女性は、乳がんの痛みを鎮めるためにマリファナ吸引が欠かせなかったはず」と発表しています
つまり、2500年くらい前に既にがんの鎮痛目的で大麻が使われていたのです

【膠芽腫の標準治療に大麻製剤を併用すると生存期間が延長する】
SativexEpidiolexなど大麻製剤の研究開発を行っている英国の製薬会社のGW Pharmaceuticalsは多発性硬化症や癲癇(てんかん)や癌(がん)の治療における大麻製剤の臨床試験を行っています。
多発性硬化症に対するSativex(THCとCBDをほぼ1:1で含む大麻抽出エキス)の有効性や、薬剤抵抗性てんかん(Dravet症候群やLennox-Gastaut症候群)に対するEpidiolex(CBD主体の大麻抽出エキス)の有効性はすでに複数の臨床試験で確認され、Sativexは既に30以上の国で処方が認可されており、Epidiolexも近いうちに承認されると考えられています。
がん患者に対しては、大麻は症状の改善作用や緩和作用が証明されています。すなわち、食欲増進、体重増加、睡眠の改善、抗がん剤治療による吐き気や嘔吐の軽減、などの症状の緩和や改善の効果は多くの臨床試験で有効性が示されています。
がん細胞の増殖抑制やアポトーシス誘導などの抗がん作用が培養細胞や動物モデルを用いた研究で示されていました。
そこで、大麻製剤(医療大麻や大麻抽出エキス製剤など)の抗がん作用を検討する臨床試験が始まっています。
2月7日にGW社はTHCとCBDを含む大麻製剤が、脳腫瘍(膠芽腫)に対する臨床試験で有効性を認めたというプレスリリースを行っています。(原文のサイトはこちら
以下は、このプレスリリースの日本語訳です。

GW Pharmaceuticals Achieves Positive Results in Phase 2 Proof of Concept Study in Glioma(GWファーマシューティカル社は神経膠腫における第2相の概念実証研究において有効性を示す結果を得た)
2017年2月7日発表(ロンドン、UK)

特許取得の製法による大麻製剤の開発や商品化に特化した製薬会社のGWファーマシューティカル社(以下、GW社)は、再発した多形性膠芽腫(Glioblastoma Multiforme)の患者21人を対象にした探索的第2相プラセボ対照臨床試験によって、テトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)を含む大麻抽出エキスの有効性を検討し、有効性を示す結果を得たと本日発表した
多形性膠芽腫というのは特に浸潤性の高い脳腫瘍で、その予後は極めて悪い。
GW社は米国の食品医薬品局(the U.S. Food and Drug Administration :FDA)と欧州医薬品庁(the European Medicines Agency: EMA)から、THC:CBD製剤の神経膠腫に対する希少疾病用医薬品指定を受けている。
再発性神経膠芽腫患者の1年生存率は、対照群が53%、THC:CBD製剤で治療を受けた群が83%で、統計的に有意な差を認めた(p=0.042)
生存期間の中央値は対照群が369日で、THC:CBD群は550日であった
両群とも2例が緊急の有害事象によって試験を中断したが、THC:CBD治療は耐えうるものであった。
最も多い有害事象(3人以上に発生しプラセボ群より強い副作用)は嘔吐(75%)、めまい(67%)、吐き気(58%)、頭痛(33%)、便秘(33%)であった。他のいくつかのマーカーはまだ解析中である。

「この臨床試験の結果は、テモゾロマイド治療を受けている膠芽腫の患者にTHCとCBDを含む大麻抽出製剤を併用することによって治療効果を改善できることを示唆しています。大麻製剤の潜在的有効性を示しています。」と、この臨床試験の主任研究者のスーザン・ショート(Susan Short)教授(Clinical Oncology and Neuro-Oncology at Leeds Institute of Cancer and Pathology at St James’s University Hospital)は言っている。

「さらに、カンナビノイド治療の副作用は耐えられるレベルのものです。THC:CBD製剤の抗がん作用の機序は他の既存の抗がん剤とは異なると思われるので、このような有望な結果が得られてことは特に興味深い。したがって、神経膠腫の治療において、ユニークで、他の治療法と相乗効果が期待できる治療法を提供できるのです。」

「さらにこの研究において示された有効性は、腫瘍学の分野でのカンナビノイドの潜在的役割を高めており、神経膠腫の治療において新規なカンナビノイド製剤の開発のチャンスをGW社に与えると、我々は信じています」と、GW社の経営最高責任者のジャスティン・ゴーヴァー(Justin Gover)は述べている。

「これらのデータは、GW社の腫瘍領域の研究開発を加速することになります。そして、今後数ヶ月の間に我々は、神経膠腫に対するTHC:CBD製剤の臨床開発計画をさらに進めるために、外部の専門家や監督機関と協議することになると思われます。そしてさらに我々は、他の種類のがんの治療にも研究を広げる予定です。」

まず、安全性と有効性を評価することを目的とした臨床試験として、耐えられる量を投与する(dose-intense)テモゾロマイド(膠芽腫の最初の治療に使われる経口のアルキル化剤)治療にTHC:CBD製剤を併用する臨床試験が、3症例づつの2件の試験で実施された。
安全性に問題がないことが確認されたあと、ランダム化プラセボ対照試験が行われた。この臨床試験では、9例が標準治療+プラセボ(偽薬)群で、12例の患者が標準治療にTHC:CBD製剤が追加された。
この臨床試験を開始する前にGW社は2007年から、脳腫瘍、肺がん、乳がん、膵臓がん、悪性黒色腫、卵巣がん、胃がん、腎臓がん、前立腺がん、膀胱がんなど多くの種類のがん細胞を用いて、幾つかのカンビノイドの抗腫瘍効果を検討する前臨床試験を数多く実施した。
これらの研究結果は、15の論文として発表され、がん細胞の増殖や進展に関わる主要なシグナル経路にカンナビノイドが多彩な作用を示すことが明らかにされた。
カンビノイドが、Akt/mTOR経路(多くのがん細胞で過剰に活性化している細胞内シグナル伝達系の一つ)を含む様々なメカニズムでオートファジー(細胞成分の自己分解を制御する過程)を促進することが知られている。
神経膠腫細胞では、THCとCBDは異なるシグナル伝達系に作用することが知られている。
THCとCBDを組合せた製剤は、神経膠腫の様々は動物実験モデルで、特にテモゾロマイド治療と併用した場合に、極めて良い有効性を示している。
U87MG神経膠腫細胞を用いた培養細胞実験で、THCとCBDをそれぞれ投与した場合に比べて、THCとCBDを一緒に投与すると、相乗的に抗腫瘍効果が高まることが明らかにされた。
テモゾロマイドにTHC:CBD製剤を併用するとさらに相乗的な抗腫瘍効果が認められ、がん細胞の生存率の顕著な低下が認められた。
このような前臨床試験の結果が得られたので、第2相の臨床試験を実施する正当性が得られた。

がん治療におけるカンナビノイドの使用に関連した知的所有権のGW社の権利は、米国とヨーロッパに出された幾つかの特許とその応用を含みます。この権利(特許)は、がん治療における様々なカンナビノイド製剤の使用を保護すしています。

Proof of Concept Study(概念実証研究)は、本格的な臨床試験の前に少人数を対照に探索的に行う臨床研究です。初めから大規模な臨床試験を行って結果が悪ければ、大きな経済的損失を被るので、初めに小規模な臨床試験を行います。
この試験の場合は、「THC:CBD製剤が膠芽腫に効く」という概念(仮説)を実証するための試験です。その結果、この臨床試験で大麻製剤の有効性が確認されたというプレスリリースです。
小人数でも統計的に有意差が出ているので、医学的には有効性が認められたといえます。
ただ、プラセボ群9例、THC:CBD投与群11例で、有意差のp値が0.042なので、大規模な臨床試験で有意差が出ない可能性は無いわけではありません。しかし一応、「膠芽腫のテモゾロマイド治療と併用して、THC:CBD製剤が統計的有意に抗腫瘍効果を高めるという結果が得られた」ということです。
今まで、多くの基礎研究で、THCとCBDがグリオブラストーマ(膠芽腫)に効く可能性は示唆されていましたので、臨床試験で有効性が証明されたので、試してみる価値はあると言えます。(411話455話参照)
ただし、日本ではまだ、医療大麻は使えません。成熟した茎から抽出したCBDオイルであれば、食品扱いで販売されています。てんかんの治療にはCBDオイルで十分ですが、がん治療にはTHC+CBDの方が良いようです。
膠芽腫は極めて予後の悪い腫瘍なので、少しでも延命できる方法があって、それが使えないのは、生存権や幸福追求権を保証した日本国憲法に違反することになります。

【米国のがん専門医の8割以上は医療大麻の有効性を認めている】
世界最大の医学情報サイトのMedscapeが、医療大麻の使用に関して、米国の1544人の医師にアンケート調査を2014年4月に行っています。この時点で、米国では21州+ワシントンDCで医療大麻の使用が合法化され、他に10州以上で合法化の動きがある状況です。
この調査で、多くの医師が医療大麻が合法化され、病気の治療の選択肢の一つとして認められることに賛成すると言っています。
連邦法の規制物質法で大麻はスケジュールI(濫用の危険があり、医療用途が無い)に分類されているため、医学的研究が遅れており、大麻の医療効果に関しては、まだ十分なエビデンスは得られていない状況です。
しかし、医療大麻の合法化する州が増え、最初に合法化したカリフォルニア州(1996年に合法化)から20年が経過し、多くの医者が大麻の薬効を経験的に知るようになり、医療大麻の合法化や研究推進に関して多くの医師が賛成するようになっています。
この調査では以下のような結果が得られています。

69%が「医療大麻はある種の病気や症状の治療に役立つ」
67%が「医療大麻は患者の治療手段の選択肢の一つにするべき」
56%が「国として合法化すべき」
医療大麻がまだ非合法の州の医師の50%が「自分の州でも医療大麻を合法化すべき」
医療大麻の合法化を検討している州の医師の52%が「自分の州でも医療大麻を合法化すべき」と考えています。

がんの専門医と血液疾患の専門医では、82%の医師が「医療大麻は患者の役に立つ」と考えています。
これらの専門医では82%の医師が、治療の選択肢として認められるべきだという意見です。
医療大麻は、がん性疼痛や抗がん剤治療の副作用としての吐き気の軽減、食欲増進の目的で使用されています。
リュウマチ専門医は医療大麻が有用と考えている医師は54%で、最も低いレベルでした。
医療大麻は関節痛や炎症の軽減に有効ですが、あまり多くは使用されていません。
医療大麻が自分の病気の治療に有効かどうかを患者から質問される頻度が最も高いのは神経疾患専門医で、70%の神経疾患専門医はそのような質問を受けています。
医療大麻は多発性硬化症や重症のけいれん性疾患の治療に使われています。
神経疾患専門医についで患者からの相談は多いのは、がん専門医と血液疾患専門で、さらに眼科専門医が続きます。
医療大麻は緑内障の眼圧を低下させる効果がありますが、他の治療法と同様にそれほど効果はありません。
医療大麻が最も使われているのは疼痛です
鎮痛剤として大麻はオキシコドン(oxycodone)のようなモルヒネ系(オピオイド系)の鎮痛薬よりも有効で、しかも依存性になる可能性が低いというメリットがあります

一般住民に対する同様の調査が2960人を対象に行われています。以下のような結果になっています。
50%が「国として合法化することを支持」
まだ合法化されていない州に住む住人の49%が「自分の州でも合法化すべき」と言っています。
52%が「病気や症状の治療に役立つ」と考え、45%が「医療大麻の有用性(benefits)の方が有害性(risks)より大きい」と考えています。
しかし、医師や住民の多くは、娯楽用の大麻を国として合法化することには反対でした。
コロラド州では2014年1月に大麻は完全合法化されていますが、調査した人の半分近くが娯楽用大麻の合法化には反対しています。

【医療大麻が認可された州では犯罪が減り、モルヒネによる死亡数が減り、ヘロイン所持が減少する】
「医療大麻を解禁すると、大麻が病人以外にも渡って、嗜好用で大麻を使用する人が増え、社会に害を与える」という理由で、医療大麻の合法化に反対する意見があります。しかし、大麻自体の有害性が低いので、そのような心配は杞憂のようです。
医療大麻を合法化した米国の州からの報告では、医療大麻の合法化によって犯罪が増えたり、ハードドラッグ(コカインやヘロイン)の使用が増えることは無いことが報告されています。
むしろ、医療大麻の解禁で、殺人と傷害事件が減少し、モルヒネ過剰投与による死亡が25%減少し、ヘロイン中毒での医療受診が20%減少するという報告があります。

The Effect of Medical Marijuana Laws on Crime:  Evidence from State Panel Data, 1990-2006(犯罪に対する医療大麻法の影響:1990年から2006年までの州の統計からの証拠)PLoS One. 2014; 9(3): e92816.

この論文では、1990年から2006年までのアメリカ合衆国の50州全ての犯罪率を追跡調査し、医療用大麻を合法化した州での犯罪率の変化を検討しています。
研究の結果、医療大麻法の施行が、殺人や強盗や暴行などの暴力犯罪を増やすことはなく、むしろ、殺人と暴行の犯罪率の減少に関係している可能性がある(犯罪が統計的有意に減少している)というデータを出しています
この論文の結論には「医療大麻の合法化が、暴力事件や窃盗事件を増やすことによって公衆の危険を高めるという意見は間違いである。」となっています。
米国の2010年のデータでは1年間に38329人が医薬品の過剰投与で死亡しており、最も多い原因はオピオイド系鎮痛剤で、年間死亡数は16651人です。
オピオイド系鎮痛剤の過剰投与による死亡がこの10年以上にわたって年々増えています。これは、がん以外の慢性疼痛に対するオピオイド系鎮痛薬の投与が増えているためです。(JAMA. 309(7):657-659. 2013年)
医療大麻を合法化した州では、オピオイドの過剰投与による死亡が25%減少しているという報告があります。

Medical Cannabis Laws and Opioid Analgesic Overdose Mortality in the United States, 1999-2010(医療大麻法とアメリカ合衆国の1999年から2010年のオピオイド系鎮痛薬の過剰投与による死亡率)JAMA Intern Med. 2014年

この論文では、医療大麻法がない州に比べて、医療大麻法がある州では、年間の オピオイド鎮痛薬の過剰投与による死亡率が平均して24.8%少なかったと報告されています。
現在、米国では、処方薬あるいは違法薬物の過剰摂取による死亡が増えているのが、鎮痛薬として処方されたオピオイド系鎮痛剤(オキシコドンなど)と違法薬物のヘロインです。
処方されたオピオイド系鎮痛剤がヘロインのゲートウェイドラッグになっていることは、米国のCDC(アメリカ疾病管理予防センター:Centers for Disease Control and Prevention)も司法長官も認めています。 

図:米国では、処方薬のオピオイド系鎮痛薬の過剰服用による死亡者が年間16000人を超え、ヘロインの過剰服用による死亡も増えている。処方薬のオピオイド系鎮痛薬がヘロインのゲートウェイ・ドラッグ(入門薬物)になっていることが指摘されている。 

「医療大麻の合法化により大麻の使用が10〜20%増えるが、コカインやヘロインの使用が増えるという証拠はない」という報告もあります。
医療大麻が合法化された州では、ヘロインやコカインの所持や使用による逮捕者や、ヘロイン中毒で病院に運ばれる数が20%ほど減少しているというデータが報告されています。
つまり、医療大麻の合法化はコカインやヘロインなどのハードドラッグを減らしているという結果です。
米国では、大麻使用が増えてもコカインやヘロインの使用は増えていないというデータもあります。

図:マリファナ使用が増えてもヘロインやコカインの使用は増えていない。
Source: FBI, Uniform Crime Reports, Crime in the United States, annually. 

大麻使用が覚せい剤使用のゲートウェイ・ドラッグ(入門薬物)になっているから、大麻を規制すべきだという意見があります。その根拠は、覚せい剤使用の多くが大麻を使用しているからというものです。
ハードドラッグを使用している人の多くが大麻を使っているから大麻がゲートウェイというのはサイエンスとして間違った解釈です
現在では大麻が覚せい剤使用を誘導するというゲートウェイ仮説は否定されています。現在では、以下のように理解されています。

  • 薬物使用に興味を示す人は、アルコール→タバコ→大麻と入手しやすいものから経験していく。大麻→ハードドラッグも単に通過点に過ぎない。
  • 非合法的に大麻を入手している人は、他のハードドラッグにアクセスしやすい環境にある。
  • 大麻を習慣的に使用する人は、リスクを冒すことを好む性格(risk-taking behavior)を持っており、さらに他の薬物を探し求める行動を取りやすい。
    (賭け事の好きな人は多くのギャンブルに興味を持つのと同じ)
  • つまり、大麻使用がコカインやヘロインの使用を誘発するという直接的は因果関係はなく、より入手困難な薬物を使用している人は、より入手の簡単なアルコールやタバコや大麻をすでに経験済みなだけ

いまだに、THC(テトラヒドロカンナビノール)が幻覚剤であると主張する薬学者もいますが、これも否定されています。
覚せい剤のメタンフェタミン(ヒロポン錠、ヒロポン注)も医薬品として使用できます。(知事の事前の許可が必要)
米国ではアンフェタミン製剤(Adderall)が注意欠陥・多動性障害の治療に使われています。
幻覚剤に分類されるケタミンも麻酔薬として医療に使用されています。ケタミンの投与をうけた患者の15%前後に、幻覚や興奮や錯乱状態等の覚醒時反応が見られると添付文書に記述されています。
覚せい剤や幻覚剤でも医療使用が認められているのに、大麻の医療使用が認められないのは正当な根拠は無いと思います。

 

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