84)オウゴンの抗がん作用

図:シソ科のコガネバナの根はオウゴンという生薬名で漢方薬に使用される。含有するフラボノイドのバイカレインやオーゴニンの抗がん作用が注目されている。オウゴンの経験的薬効と、科学的に証明された成分の薬理作用は、がん治療への有用性を示している。


84)オウゴンの抗がん作用

オウゴンはシソ科のコガネバナの周皮を除いた根で、漢方薬の代表的な清熱薬(解熱・抗炎症作用)の一つです。呼吸器、消化器、泌尿器などの炎症や熱性疾患に幅広く使用されており、特に、肺炎や慢性気管支炎などの呼吸器感染症、感染性腸炎などによる下痢、ウイルス性肝炎などの慢性肝疾患、胆嚢炎、膀胱炎、にきびなどの皮膚化膿症などに使用されてきました
また、頭痛やのぼせ、不眠のような頭部に熱が上がっている状態(肝陽上亢)を落ち着かせる効果も知られています。
慢性肝疾患や呼吸器感染症や遷延した風邪には
柴胡(サイコ)と併用して用いられます。その代表的な方剤が、小柴胡湯(しょうさいことう)や柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)です。
下痢や消化不良の治療に使われる
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)には、人参、半夏,黄連などと併用して用いられます。これらの漢方薬は約2000年前の中国の漢の時代の医学書『傷寒論(しょうかんろん)』に記載されています。

オウゴンは
フラボノイド類(バイカリン・バイカレイン・オーゴニンなど)を多く含みます。オウゴンに含まれるフラボノイドには、抗炎症作用・抗アレルギー作用・プロスタグランジン生合成阻害作用・抗腫瘍作用・毛細血管強化作用・脂質代謝改善作用・肝障害予防作用などの多彩な薬理作用が報告されています。

オウゴンのフラボノイドによる、抗菌、抗ウイルス、抗炎症、抗がん作用といった薬効は、がん治療における有用性を示唆しています。2000年以上前から使用されてる経験的な薬効と、科学的に証明された薬理作用から、オウゴンを上手に使用すると、がんの治療や再発予防において有用であることが示唆されます。

1)培養細胞を使った実験や動物実験などで、乳がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がんなど多くのがんに対して抗腫瘍効果を示すことが報告されています。
がん細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導することが多くの研究者が報告しており、その分子メカニズムが研究されています。
がん細胞が抗がん剤に抵抗性を獲得するときに重要な働きをしている転写因子の
NF-kBを阻害する作用が報告されています。つまり、オウゴンはがん細胞を死ににくくしているNF-kBという転写因子の活性を阻害することによって、抗がん剤感受性を高める可能性が報告されています

2)
ヌードマウスを使った実験で、熱水抽出液を経口摂取で75mg/kgの投与で腫瘍の縮小が認められた実験結果が報告されています。この量は体重換算で人間では1日4~5gに相当するので、人間でも煎じ薬の経口摂取で、抗腫瘍効果が期待できることが示唆されます。(体表面積で換算すると人間では1g以下でも効果がある計算になります。)

3)オウゴンのフラボノイドには強い
抗酸化作用と、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)活性阻害作用などの抗炎症作用が報告されています。
このような抗酸化作用と抗炎症作用により、がんの再発や進展を抑える効果が期待できます。

4)
イリノテカンの副作用の下痢を緩和する作用が報告されています。
塩酸イリノテカン(CPT-11、商品名;トポテシンまたはカンプト)はDNAトポイソメラーゼを阻害して強い抗がん活性を示しますが、副作用として重篤な下痢があります。これは塩酸イリノテカンの活性体が肝臓でグルクロン酸抱合を受けて胆汁経由で腸管に排泄された後、腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによって脱抱合される結果、活性型代謝産物が再生成され、これが腸管粘膜を損傷して下痢が引き起こされると考えられています。
オウゴンに含まれるフラボノイド配糖体のバイカリンには、β-グルクロニダーゼを阻害する活性があるため、活性型の腸管での再生成を抑え、塩酸イリノテカンの下痢を抑制する効果が指摘されています

5)
抗菌作用や抗ウイルス作用によって、感染症を予防・治療します
抗がん剤治療などで抵抗力が低下すると、日和見感染症など、通常では発症しないような弱毒の細菌やウイルスによっても感染症が起こります。
免疫力を高める人参、黄耆、霊芝などの生薬と併用することによって、感染症の予防や治療に効果が期待できます。

以上のように、2000年以上前から漢方治療に使用されているオウゴンは、現在ではその抗がん作用が注目されて多くの研究が発表されています。
抗炎症作用、抗酸化作用、がん細胞のNF-kB阻害作用、アポトーシス誘導作用、抗菌・抗ウイルス作用、抗がん剤による下痢の緩和作用などから、オウゴンをがんの治療や再発予防に利用することは有用だと思います。

(文責:福田一典)
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