kenroのミニコミ

kenroが見た、読んだ、聞いた、感じた美術、映画、書籍、舞台、旅行先のことなどもろもろを書きなぐり。

ベネルクス美術紀行2 アントワープ

2006-02-05 | 美術
 日本人にとってアントワープと言えば「フランダースの犬」。結構観光客も訪れるらしい。ものの本によれば日本人があまりにもネロとパトラッシュのことを訊ねるので、現地の人にとっては何の関心もなかったのについには銅像ができたとか。「フランダースの犬」はカルピス劇場のおかげで有名になったが、アントワープは紛れもなくルーベンスの町である。
 ネロが事切れるノートルダム大寺院(聖母大聖堂)にはルーベンスの絵が「キリスト降架」「キリスト昇架」「聖母被昇天」など5メートルはあろうかと言うパネル画がいくつも堪能できる。ノートルダム大寺院はルーベンスの作品だけでなく、ステンドグラスの美しさ、細部にこだわった教会彫刻など見飽きない世界が広がる。ただ、現役の宗教施設であるから非信者には近づけない場所もある。礼拝中の信者の邪魔にならぬようじっくり見て回るのがよい。
 アントワープのお目当て一つはマイエル・ヴァン・デン・ベルグ美術館にあるピーター・ブリューゲル(父)の「狂女フリート」。悪女フリートが爆発せんばかりの勢いで地獄と相対する様には一瞬引きそうになる。単なる地獄絵とも違うブリューゲル初期の傑作を見に、ここまでやって来たのだ。この美術館は規模は小さいが他にも初期バロック彫刻の逸品「キリストにもたれて眠る聖ヨハネ像」もあり静謐な空間を演出している。
 王立美術館のルーベンス・コレクションはすばらしい。ルーベンスの時代には王侯貴族お抱えの画家が大きな工房を持ち、大作を共同作業で制作していたという。それだけ大きな作品が所狭しと一部屋に並ぶ姿は壮観だ。それにルーベンスのキリスト画は大きさに見合った迫力だけではもちろんない。聖者ら一人一人の表情が時に険しく、厳しく、あるいは悲哀に満ちているから見とれてしまうのだ。フランドルの画業ここにありである。
 アントワープ郊外のミデルハイム野外彫刻美術館もおすすめである。広大な公園の一角に400点以上の作品が展示され、ムーアをはじめ現代彫刻の数々をゆっくり鑑賞することができる。ただ冬に行くものではない。そこが残念。

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