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「均ちゃんの失踪」 中島京子

2018-08-18 | 読書

最近、中島氏の小説ばかり読んでるけど、これもなかなか面白かった。

フリーのイラストレーター(デザイナー?)の内田均の家に空き巣が入る。本人は留守で、捜査のために呼ばれた、家主で元妻の恵子、付き合いのある薫に空穂と三人の女性が、警察で一同に会する。

お互い、その存在を知らず、初対面。それぞれの立場から、いい加減で気弱で、心優しいダメ男の均ちゃんの姿が明らかになる。

三人は事件をきっかけに、自分の姿を見つめなおすこととなり、それぞれが新しい境遇へと旅立っていく。

初めは、女三人で温泉旅行する流れについて行けなかったが、不倫に悩む薫の、その不倫相手の男の狡さに私自身が腹を立てるうち、ぐいぐいと小説に引き込まれていった。

相手の男の今回の言い訳は「妻が病気になったので待って欲しい」というもの。病気とは卵巣の良性腫瘍、何も悪性じゃあるまいし、たまたま私も昔同じ病気になったけど、手術して、簡単に治ったので、この設定、めちゃくちゃリアリティがあった。

均ちゃん、女の私から見たら魅力がよくわからないし、女性にもだらしないし、でも昔ちょっとだけ付き合った女性の借金の心配をし、娘の心配までしている。

一体何がしたいのか、暮らしと心の軸足はしっかり一つの場所に置いておかないと、と昭和的思考をしてしまうけど、この寄る辺なさ、それぞれの女性との名付けようのない不安定な関係、これが今の時代なのだと思った。

恋愛だとか、結婚だとか、家族だとか、自分の見えているもの、自分が経験したことだけが正当と人は思いがちだけど、名付けようのない淡々しい、不思議な関係も世間にはあるのだと、本作を読んで考えさせられた。

均ちゃんだけが取り残されるのは女の私にもカタルシスがあった。最初は話がもたもたしてちょっと読みづらかったけど。


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