碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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若者は、いつだって”危うい”のだ

2009年01月07日 | 日々雑感
雑誌『週刊東洋経済』、最新号の特集は「若者危機」。

この中で、ネット調査による“今どきの若者像”というのが興味深い。

・働くなら「終身雇用希望」が半数。
・今の職場に「不満」が半数。
・将来生活するなら「地元希望」が過半数。
・20代後半の6割が「親と同居」等々。

また「若者市場はどこに」という記事では、「最近の20代はワンランク上を目指さなくなった」「節約・堅実が当然の消費行動」といった分析も語られている。

まあ、こういうふうに言われちゃうと、全体として「何だか覇気のない連中」「面白みのないヤツら」みたいな印象だ。

しかし、よく考えてみれば、上記のあれこれ、そんなに悪いことなんだろうか。

グローバル化とやらで破壊されたこの国の惨状を目の当たりにすれば、日本的経営の特色だった「終身雇用」のいい点も見えてくるだろうし、いい若い衆が自分の職場に「満足、満足」なんて言っていたら、そのほうが不気味だし、地域格差でさんざんな「地方」にとって、若者の「地元志向」は大歓迎のはずだ。

それに、「ワンランク上を目指す」生き方でやってきた今の大人たちが、若者にとっての理想モデルになっていないということだし、「節約・堅実」が身についているのは、これからの<苦境の時代><縮小の時代>に対する無意識の”耐性作り”かもしれない。

つまり、あんまり「若者危機」などとアオるのはどうかと思うのだ。

確かに、今の若い衆は、困ったところも、弱いところもたくさんある。だからといって、10年前、20年前、30年前の若者に比べて大きく劣っているとは思わない。

私たちの世代を含めた「かつての若い衆」も、十分困ったもんだったし、弱さもいっぱい持っていたはずだ。

今、時代(大人)のせいで「若者危機」という面は、もちろん、ある。でも、若者が「危機」じゃなかった時代って、いつのことなんだろう、と思う。

若者は、いつだって危ういし、いつだって綱渡りなのだ。

だからって、過保護にされても迷惑だし、逆にモノ扱いも困る。意外と、それなりに、自分で自分の落とし前をつけようと思っていたりするものだ。

彼らのホンネとしては、「若者危機」の前に、「大人危機」や「社会危機」を何とかしてくれい!と言いたいんじゃないかと思う。

週刊 東洋経済 2009年 1/10号 [雑誌]

東洋経済新報社

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