かばん屋の相続 (文春文庫) | |
池井戸 潤 | |
文藝春秋 |
今回は、池井戸潤『かばん屋の相続』を紹介します。銀行の融資担当者を主人公にした短編集です。sweet&bitter小説なのかな。すべての短編がハッピーエンドで終わっているわけではないですし、融資をする側と融資を受ける側の人間模様がきちんと描かれているという印象です。
一番よかったのはタイトルと同じ短編である「かばん屋の相続」でした。最後はスカッとしたね。終わり方がよかった。
十年目のクリスマス:十年前に火災事故で倒産した社長に偶然出会うことになる。この十年間で何が起こったのか。十年前のことと現在のことが行きかうような構成になっています。
セールストーク:印刷会社に対して融資見送りを行ったわけですが、その印刷会社の社長は別口から5000万円の融資を取り付けることに成功した。それを融資担当の北村目線で描いている。
手形の行方:部下の堀田が1000万円の手形をなくしてしまった。
芥のごとく:女社長の土屋の奮闘ぶりを融資担当者の山田目線で描く。
妻の元カレ:妻の元カレが会社を興すことになったというはがきの連絡を見つけることになる。私生活で妻に疑いの目でどうしても見てしまう。
かばん屋の相続:遺言状にかばん屋を兄に継がせるという風に記載がある。ずっとかばん屋を父とともに支えていた弟としては納得いかない。かばん屋のお家騒動を銀行員目線で描いている。