一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「週刊将棋」9月30日号・「マイナビ本戦ダブル自戦記」を読んで

2009-10-25 01:17:33 | 将棋雑考
やや旧い話になるが、「週刊将棋」9月30日号に掲載された、マイナビ女子オープン本戦1回戦の、石橋幸緒女流王位と熊倉紫野女流初段のダブル自戦記を読んだ感想を記してみる。まあ自分のブログだから、誰にことわる必要もないわけだが。
対局場は、LPSAが用意した、東京港区にあるセレスティンホテル。今期から、マイナビ本戦は対局上位者の指定した会場で指されることになったらしい。
ダブル自戦記は中面2頁に掲載されていたが、まず奇異に感じたのは、将棋盤が置かれてあるテーブルだ。LPSAの指定対局場はテーブルと椅子席で指すのだが、この幅が広すぎるのだ。これでは敵陣の☖1一香を取るときに、身を乗り出さなければならない。まあこれなら、盤上に頭がかぶさることもなく、「暗くしなさんな!」と一喝されることはないが、しかしこれではいかにも指しづらい。選定の際、このタイプのテーブルしかなかったのかと思う。
むろん対局の際には、日本将棋連盟と女流棋士会が事前に検分はしただろうし、いまから変更は利かないだろうが、来期は一考を要するのではないか。
石橋幸緒女流王位は、「NHK将棋講座」などの観戦記では、ユーモアを交えたり、固い文体に終始したりと変幻自在だが、今回の自戦記では媒体の性質も考慮してか、ややくだけた感じになった。
本文に出てくるA記者はおもに女流棋戦の担当で、3月に行われた第2期マイナビ挑戦者決定戦で、私が懸賞金スポンサーになったときに、とてもよくしていただいた。A記者こそ女流最高棋戦のスポンサーのおひとりで、一番大きな顔ができるわけだ。しかしA記者の腰はひたすら低く、とても好感を持ったことを覚えている。
そんなA記者を中心に、石橋自戦記は展開する。熊倉女流初段のことを、親しみをこめて「シノックマ」と記すなど、所属団体は異なっても、よそよそしさは感じない。全体的にエンターテイメント性があり、おもしろい文章だった。
なお最後、「本戦シードを獲得して、予選対局を運営だけに専念したい」は本音であろう。
対する熊倉女流初段は女流棋士会期待の星で、早稲田大学に通う現役女子大生でもある。学歴コンプレックスの私には、それだけで尊敬の対象になる。
本局は、控室に師匠の高橋道雄九段が見えていた。ホテルでの対局は、女流棋士会棋士が完全アウェーになるが、師匠の応援は心強かったのではないか。ちなみに、このおふたりは4月23日生まれである。蛇足ながら同じ誕生日はほかに、渡辺明竜王と船戸陽子女流二段がいる。なかなかいい感じである。
熊倉女流初段の自戦記は、「ですます調」で初々しかった。私は「ですます文体」は甘ったるい感じがして好まないが、女性のそれは、かわいらしくてよい。
冒頭では、ホテル対局室の良好な環境に感謝の意を示している。それでいて、例のテーブルの件にもさりげなく触れており、言うべきことはしっかり言うところは好感を持った。
石橋自戦記にも云えることだが、自戦記は、自分の好手より疑問手を大きく書く傾向があるようだ。なんでこんな手を指してしまったんだろう、と省みることが上達の近道になるのかもしれない。
ともかく熊倉女流初段はまだ21歳と若いのに、全体的にしっかりした文章で、大いに感心した。
本局では残念な結果となってしまったが、熊倉女流初段はこれからどんどん強くなる。ぜひタイトル戦に登場して、大暴れしてもらいたい。
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2 コメント

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自戦記 (洋志)
2009-10-25 21:26:27
 自戦記で特に面白いと感じたものは、これまでなかったように思います。
 これからも指していく当事者だから、本音で特にきついことも書けないでしょうし。
 ただ、観戦記者がとうてい探り出せない本音・視点と思われるものが書かれているものは、自戦記ならではだなと思います。
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一押し (一公)
2009-10-26 01:00:59
現在発売中の「将棋世界」に、中川大輔先生による王座戦の自戦記が掲載されていますが、これは対局時の心理状態が赤裸々に綴られていて、その文章力も含め、嫉妬するぐらい面白かったです。
これは来年の「将棋ペン倶楽部大賞」の最有力作品と思います。最低でも、「優秀賞」は獲ると断言します。
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