一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「LPSA Minerva ファンクラブイベント」(中編)・女子高生との一局と、ムーミン

2010-10-14 00:42:27 | LPSAイベント
準決勝の2局、石橋幸緒天河-中倉宏美女流二段戦、中井広恵女流六段-渡部愛ツアー女子プロ戦は、いずれも前者の勝ち。内容はともかく、勝敗は戦前の予想どおりとなった。しかしいつもこれではいけないのだ。
時刻は12時を過ぎたが、予定を前倒しして、今回の1dayトーナメント・ファンクラブカップの協賛者と、決勝に進出した中井女流六段と石橋天河との3ショット撮影タイムとなった。私も1口協賛しているので、その権利がある。しかしいまさら、中井・石橋両巨頭と3ショットというのもなあ…。
私は両巨頭を前にして、
「あのう、敗者の方と撮影したいんですけど」
と言うと、そばにいた藤森奈津子女流四段が、また憎まれ口を叩いて…という顔をした。
とりあえず3人並んで、パチリ。
昼食に出るが、食欲がない。ハナ水が止まらない。受付時にいただいたLPSAエコバッグを見ると、ファンクラブカップの優勝者予想クイズ投票用紙と、全20問からなるLPSAカルトクイズの用紙が入っていた。
通りにドトールコーヒーがあったので入り、カルトクイズを解いてみる。
Q.中井広恵六段の女流公式戦連勝記録は?
Q.芝浦サロンの最寄駅はどこ?
という簡単な問題から、
Q.多田佳子四段は女流アマ名人戦で何回優勝した?
Q.石橋幸緒天河は書道と将棋の段を足すといくつ?
など、文字どおりカルトな問題もある。分かった問題だけ記入し、会場へ戻った。
午後1時。実はこれからやっと開会式である。室内壇上に、寺下紀子女流四段をのぞくLPSA全女流棋士(渡部愛ツアー女子プロを含む)が勢揃いした。このあと1時30分から大庭美夏女流1級-大庭美樹女流初段の「トランプ将棋」があるのだが、そのとき来場者に抽選でプレゼントされる賞品の説明も兼ねて、全員が一言挨拶を述べた。
石橋天河は、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」のLPSA版で、「中井女流六段が歩を打ったあと、ため息をつくにもかかわらず、それが好手だったときの仕種」を披露し、大爆笑だった。
プレゼント賞品の目玉は、中倉宏美女流二段提供の「『ぬくもり入り』マフラー」と、中井女流六段提供の「北海道写真集」といったところか。
ところでこの日は神田真由美女流二段の誕生日。LPSAから記念品の贈呈があった。LPSA、なかなかイキなことをするではないか。
1時20分からは午後の部の指導対局である。準決勝での敗者、中倉女流二段と渡部ツアー女子プロが担当する。まだ対局に空きがあるとのことだったので、三たび申し込む。しかしこんなカネの使い方をして、バカじゃなかろうか。
スタッフ氏がトランプを数枚拡げ、
「赤を引いたら中倉さんとです」
と言う。私は祈るようにカードを引く。「クラブの5」。黒だ。ということは、渡部ツアー女子プロとの指導対局だ。
「やったあ!」
とガッツポーズをすると、駒を並べていた中倉女流二段に、キッ、と睨まれた気がした。
いや私だって中倉女流二段のファンだけれども、現役女子高生に将棋を教えていただく機会はなかなかない。今回ばかりは渡部ツアー女子プロが「当たり」なのだ。
渡部ツアー女子プロの前にすわると、渡部ツアー女子プロが「玉」を取ろうとする。勘弁してほしい。プロ相手に私が「王」を持つことはできない。
「ハメないでくださいね」
と渡部ツアー女子プロが言う。実は前回のサシの将棋で、私が定跡にない手を指し、渡部ツアー女子プロを困らせてしまったのだ。今回はお手やわらかにしてください、ということだろうが、現役女子高生に「ハメないでくださいね」と懇願されると、なんだかムラムラしてしまう。
指導対局開始。☗7六歩☖3四歩。ここで飛車先の歩を突きだすか角道を止めるか迷ったが、今回は☗6六歩としてみた。私は居飛車党だと思うが、相がかり系の将棋では負かされそうな気がした。つまり早くも3手目で、気合負けしたということである。
将棋は私の四間飛車に渡部ツアー女子プロの左美濃。私には珍しい、持久戦となった。
会場前方では「トランプ将棋」が始まっている。簡単にいえば、トランプを引いて、その番号に書かれている数字の筋にある駒を動かす、というものだ。
そのトランプを引く役目は会員(観客)が行うが、私たちは受付時に数字の入ったカードをいただいており、抽選係の女流棋士が引いた数字を持っている会員が「当たり」となって、先に書いた女流棋士提供のプレゼントをいただけるのだ。
ちなみに私は「51」。イチローと同じ番号で、縁起がよさそうだ。
中盤の入口で、その「51」が呼ばれた。将棋を考えているようでも、会場のアナウンスには注意を傾けていたので、私はすぐに手を挙げた。
島井咲緒里女流初段が飛んできて、トランプを差し出す。選んだ数字はどうでもよい。私はすぐに前方に出て、女流棋士提供のプレゼントを選ぶ。
お菓子などの食品類が残っていたが、ムーミンのスープカップがあったので、それを戴く。これは松尾香織女流初段提供の賞品である。やはり記念の品としては、「永遠に残る」ものがよい。ただし私が女流棋士にプレゼントをする場合は、原則的に「消え物」である。
「大沢さん、(こういうイベントでは)いつもなにかしら持って帰るよなあ」
と言う声が聞こえた気がした。
これで渡部ツアー女子プロとの指導対局に専念できる。
☖6四歩☗同歩☖6五歩の銀取りに、私は強く☗同銀と取る。☖6五同桂で銀がタダだが、ここで☗5七銀と引いては手順に☖6四角と出られ、下手勝てない。☖6五同桂に☗6三歩成とし、「2歩得+と金」と「銀」の交換でいい勝負、との大局観だ。
しかし数手後の☖8六歩を☗同歩と取ったのはヒドイ利かされだった。ここは一足先に☗6八飛と振り戻し、☖6五桂に当てるところ。上手が☖8七歩成~☖7八と~☖8九飛成とする間に、一仕事するべきだったのだ。
本譜もむずかしい展開となった。ここで終盤の一局面の符号を記す。

上手・渡部ツアー女子プロ:1一香、1二王、1四歩、2一桂、2三銀、2四歩、3二金、3三銀、5五銀、6四歩、7六歩、9四歩 持駒:飛、金、桂、歩2
下手・一公:1六歩、1九香、2六金、2八玉、4五歩、4八銀、4九金、8四歩、8九桂、9一馬、9六歩、9九香 持駒:飛、角、桂、香、歩7

☖4七歩と金頭に叩いた手に対し、私が☗2六金と角を取り、☖4八歩成☗同銀の局面。☖4七歩には黙って☗同金と取る方が勝ったが、もうここでは分がわるいと思っていた。しかし現局面で☖7九飛なら、☗5九歩で耐えていると思ったのだが…。
本譜は☖2五歩☗2七金☖3五桂まで、渡部ツアー女子プロの勝ち。
「自爆かもしれないけど…」
と渡部ツアー女子プロがつぶやきながら突きだした☖2五歩が好手だった。側面からではなく、上部から玉を目がける構想が素晴らしい。私はまったく気づかなかった。
☗2五同金は☖2七歩☗3七玉☖2九飛くらいでいけない。しかしこの歩を取れずに引くようでは、大勢決した。
☖3五桂と金取りに打たれ、あとは受けても一手一手。いくら女子高生とはいえ、相手にこれ以上気持ちいい手を指させたくはないので、私はここで投げた。
「ずーっとわるいと思ってました」
と渡部ツアー女子プロ。☖8六歩に☗同歩はマズかった、は共通の意見だったが、それ以前も以後も、渡部ツアープロが優位に進めていたと思う。どうも渡部ツアー女子プロは、局面を悲観的に見過ぎる傾向がある。LPSAの中では、中井女流六段、石橋天河に続く実力者なのだから、もっと自信を持っていい。
トランプ将棋も終わり、しばしのフリータイム。ここでカルトクイズの分からなかった問題を解きにかかる。正確には「取材」である。
多田佳子女流四段に
「先生が女流アマ名人を獲得されたのは、2回…ぐらいですよね」
と問うと、
「いえ…もう少し多い…もう少し多い。4回です。6回出場して4回優勝しましたのよ」
とのこと。これはおみそれしました。ここで聞き込みをしなかったら、間違えているところだった。
石橋天河に、
「高群佐知子先生は書道七段と聞きましたけど、石橋先生はそれより上ですよね…」
と話を向けると、
「…八段です」
とのこと。私は「書道十段、足して十四段」とフンでいたので、慌てて「十一段」?と書き直した。
松尾女流初段がいらっしゃる。
「私のプレゼントを選んでくれてありがとうございますー」
「ほかが食べ物ばかりだったんで、これしか戴くものがなかったんですよねー」
「ええっ、何それー」
「あっ、松尾先生のだから選ばせていただいたんですよ、もちろん」
「もうー。ねえ、ムーミンのカード見てよー」
中を覗くと、ムーミンの絵が描かれた、松尾女流初段自作のカードが入っていた。
「ああ、うまいですね。これは何というキャラですか?」
「リトルミイ」
「これは?」
「ニョロニョロ」
「ふうん。しかしこのムーミン、アゴのあたりが短くないですか?」
私はそう言うと、カルトクイズの問題用紙兼解答用紙の裏に、ムーミンのアゴを描いた。
「そんなに長かったかなあ」
松尾女流初段が首をタテに振らないので、私はムーミンのスープカップを箱から出してみた。
「あっ、ほら、これ、ここ見てくださいよ。こんなに長いでしょう?」
私はムーミンの載っている場所を見せる。
「グッ…たしかにそうかもー」
私が勝ち誇っていると、松尾女流初段は話題を変えてきた。
「ねえ、マッカランはー?」
い…意外と執念深いなこの女。
「ああ、残り4つの指導対局で私が2勝2敗ならセーフ、1勝以下ならマッカラン贈呈ですね」
「4局ね」
「でも先生、9月は金曜サロンの担当がなかったじゃないですか」
「うん、9月はなかったー」
「今月だって金曜日の担当はないし。これじゃ私、先生と指すためだけに、わざわざほかの曜日のサロンに行かなくちゃならなくなりますよ」
「来てよー」
「冗談じゃないですよ。先生との対局だけのために行ったら、中倉宏美先生とか怒りますよ。船戸先生だって…。だから私、どうせおカネを使うんだったら、いっそのこと松尾先生にマッカランを買って差し上げようとさえ思ってるんですよ」
「ホントー?」
「だけどマッカランだって安いのはありますからね。どうせ先生、マッカランの味なんか分からんのでしょう?」
そのときたまたま、船戸陽子女流二段が横にいた。しかし船戸女流二段は私の主張に同意するわけにもいかず、その場を離れてしまった。
「ま、まあそういうことで、何とか指すようにします」
私は言葉を濁すと、松尾女流初段との会話を打ち切ったのだった。
(つづく)
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「LPSA Minerva ファンクラブ... | トップ | 「LPSA Minerva ファンクラブ... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (赤い彗星)
2010-10-14 23:49:22
いつもROMに徹していますが、今回はひとことだけコメントさせて下さい!!

> 現役女子高生に「ハメないでくださいね」と懇願されると、なんだかムラムラしてしまう。

↑よくぞおっしゃいました(笑)
思ってはいても、ここまではっきりと言うのは
なかなか出来ないものです。
私も一公さんと同じ状況ならば間違いなくそう感じますが、私には到底言えません。(笑)
素晴らしいのひとことです。
表裏のない書きっぷりに男気を感じました。
返信する
松尾女流初段との会話 (さわやか風太郎)
2010-10-14 23:52:08
<他が食べ物ばかりだったんで、...。
なんですか、これは。
政治家にもいましたね、消去法で選んで下さい。
返信する
いいですね ()
2010-10-15 00:24:53
上の方に同意。ピンクサ○ンといい、踏み込む姿勢は素晴らしい。そういえば、ブログを読む限り、船戸先生はよく去ってしまいますね。
返信する
体張ってます (一公)
2010-10-15 03:17:18
>赤い彗星さん
赤い彗星さん、コメントありがとうございます!
私はオブラートに包んだ書き方が上手くないので、直截的な書き方が多くなってしまいます。
これからも表裏のない文章は目指しますが、だから男気があるかどうかはちょっと…というところです。

>さわやか風太郎さん
いやもうこれはですね、松尾先生の賞品がまだ残っていたなんて奇跡的なことで、よろこんで頂戴しました。私は本当に運がいいです。

>俊さん
この踏み込みが、裏目に出ることがあります。むしろそちらのほうが多いですね。
今回のイベントでは、船戸先生との、すれ違いが多かったです。
返信する

コメントを投稿