9月27日(日)は、東京・浜松町で、社会人団体リーグ戦(社団戦)があった。社団戦には7月26日(日)に、「LPSA星組」として初参戦したが、4局戦ってみて、ノミの心臓の私には、こうした真剣勝負は性に合っていないことを痛感した。来年はもうパスするとしても、今年の残る2回は、大将という立場上、出なければならない。そして出場する以上は、全勝を目指す。とはいうものの、27日は、家を出るのが憂鬱だった。
この日の社団戦は7人1組のチーム対抗ではなく、個人戦で争う。ほぼ同じ棋力の選手16人が同じテーブルにつき、各4局を消化する。1局目に勝った選手は、2局目はやはり緒戦に勝った選手と。1局目に負けた選手は、やはり負けた選手と戦う。このように、同じ星の選手との対戦を4回繰り返す。これなら順列組み合わせで、16通りの星の並びができ、最終的に4連勝はただ1人となる。そしてその選手の所属するチームに「勝ち点1」が与えられるらしい。
ということは、各選手が4局平等に指せても、緒戦を負けたら、あとは消化試合になる、というわけだ。
私は前回1勝3敗だったので、レーティングでは1480点台だった。ほかの15選手も似たような点数なのだが、みんな強そうに見える。金曜サロンで女流棋士に将棋を教わっているときとは比べものにならないプレッシャーを感じ、私は対局に臨んだ。
1局目は相手に駒を振ってもらい、こちらの先手番。序盤早々、後手は早くも△6四歩と変化してきた。腰掛け銀から右四間飛車の構想だろう。居飛車の私は、▲6七銀型で受ける。
後手は△8二飛~△6二飛の手待ちを繰り返すが、こちらもどう攻めていいか分からない。一回4五に出た銀を5六に引いたりする。
先手陣が7六歩、7八金、7九玉、8七歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香のとき、後手が飛車先の歩を交換してきた。ここで私は▲8七歩と打たず▲9七角と上がった。もし△8一飛なら▲6四角が、歩を取りながら△7三桂取りとなって幸便だ。
ところが後手はここで△9六飛ときた。まさかこの手は指さないだろう、という手を指され、私は焦る。捨て置けば△8五桂が飛んでくるので、私は泣く泣く▲8七金。そこで△9七飛成とされ、これでは私の金が上擦って、苦戦を覚悟せざるを得なかった。しかしいま冷静な目で見ると、△8五桂跳ねには▲8八角で、後手の飛車が死んでいる。慌てて▲8七金と上がる必要はなかったのだ。
とするならば、▲8七金ではじっと▲8七歩と打っておくべきだった。
このチャンスを逃してからは、後手の指し手が冴え、徐々に私の劣勢となった。相手はすでに30秒将棋だったが、もう時間のいらない将棋である。ところが、ここが社団戦の恐ろしさというか、どう指されても負けという局面で、後手が何度も寄せを逃がし、気がつけば私が優勢になっていた。しかし私も焦っていた。対局時計が「11」を指しているから、こちらも残り11秒しかないのか…と思いよく見ると、11分なのだった。
ここで最終盤のハイライトの局面を記してみよう。
先手 一公:1五歩、2五歩、3六歩、3七桂、4一銀、4五歩、6六金、7六歩、7七桂、8一飛、8八歩、9六玉 持駒:角、金、香、歩3
後手:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二金、3四歩、4三歩、5一銀、5三王、5四銀、6三桂、6四歩、6八金、7一歩、8九竜、9一香、9四歩、9五角 持駒:銀、香、歩2
私が▲4一銀と掛けた手に対し、後手が△7一歩と意味深な歩を打った局面。最初はこんな歩、むしり取るつもりだった。しかし△6二銀打と粘られると、後手王を寄せるのが面倒だと思った。
そこで私は▲3二銀成と金を取る、やはり現ナマは大きい。ところが後手に強い手つきで△7七角成と指され、これで自玉が受けなしになっているのに愕然とした。ここで残り5分になるくらいまで考えたが、もう遅い。私は▲2六角△4四香を利かし、泣く泣く▲8六香と受けたが、以下は後手に鋸引きの寄せを指され、私の悔しい悔しい敗戦となってしまった。
投了後、まっさきに口を衝いて出たのが、上の局面である。
「やっぱりふつうに(▲8一の飛車で△7一歩を)取るべきでしたか」
「え? それは△8八竜で…」
「え? それは▲5一竜で…」
「え? それは角が利いてます(△同角)」
「えっ?! それは▲5二金で…」
「あっ…」
な、なんてこった!! ▲4一銀はこっそり詰めろだったのに、後手はそれに気づいていなかったのだ!! △7一歩は、単に先手の飛車を8筋からどかしたかっただけらしい。私はヘンに読みすぎたのだ。いや、読みが足りなかったというべきか。まだ時間はあったのに、何を焦っていたのか!
敗勢の将棋がいったんはひっくり返ったのに、その将棋を再び負けにした。地獄から天国を一瞬見たが、また地獄に突き落とされた気分だった。自チームに勝ち点をもたらすチャンスを早くも潰し、私は激しく落胆した。
ちなみにこの日、「星組」は金曜サロンセミレギュラーのY氏が参加しているのみだった。もう、彼に合わせる顔がない。
ああ、女流棋士に慰めてもらいてぇ…。
私は悄然として、ふらふらとLPSAブースに向かう。と、ブースにはスタッフのI氏と、藤田麻衣子女流1級がいた。
「……」
私はブースには寄らず、そのままエレベーターで1階へ降りる。
ビルの向かいにある、前回入った立ち食いそば屋は、今日は満員である。もとより、胃が受けつけない。私はコンビニに入ってジュースを買うと、それを無理矢理流し込んだ。液体を体内に入れることが、こんなに難儀だとは思わなかった。
(つづく)
この日の社団戦は7人1組のチーム対抗ではなく、個人戦で争う。ほぼ同じ棋力の選手16人が同じテーブルにつき、各4局を消化する。1局目に勝った選手は、2局目はやはり緒戦に勝った選手と。1局目に負けた選手は、やはり負けた選手と戦う。このように、同じ星の選手との対戦を4回繰り返す。これなら順列組み合わせで、16通りの星の並びができ、最終的に4連勝はただ1人となる。そしてその選手の所属するチームに「勝ち点1」が与えられるらしい。
ということは、各選手が4局平等に指せても、緒戦を負けたら、あとは消化試合になる、というわけだ。
私は前回1勝3敗だったので、レーティングでは1480点台だった。ほかの15選手も似たような点数なのだが、みんな強そうに見える。金曜サロンで女流棋士に将棋を教わっているときとは比べものにならないプレッシャーを感じ、私は対局に臨んだ。
1局目は相手に駒を振ってもらい、こちらの先手番。序盤早々、後手は早くも△6四歩と変化してきた。腰掛け銀から右四間飛車の構想だろう。居飛車の私は、▲6七銀型で受ける。
後手は△8二飛~△6二飛の手待ちを繰り返すが、こちらもどう攻めていいか分からない。一回4五に出た銀を5六に引いたりする。
先手陣が7六歩、7八金、7九玉、8七歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香のとき、後手が飛車先の歩を交換してきた。ここで私は▲8七歩と打たず▲9七角と上がった。もし△8一飛なら▲6四角が、歩を取りながら△7三桂取りとなって幸便だ。
ところが後手はここで△9六飛ときた。まさかこの手は指さないだろう、という手を指され、私は焦る。捨て置けば△8五桂が飛んでくるので、私は泣く泣く▲8七金。そこで△9七飛成とされ、これでは私の金が上擦って、苦戦を覚悟せざるを得なかった。しかしいま冷静な目で見ると、△8五桂跳ねには▲8八角で、後手の飛車が死んでいる。慌てて▲8七金と上がる必要はなかったのだ。
とするならば、▲8七金ではじっと▲8七歩と打っておくべきだった。
このチャンスを逃してからは、後手の指し手が冴え、徐々に私の劣勢となった。相手はすでに30秒将棋だったが、もう時間のいらない将棋である。ところが、ここが社団戦の恐ろしさというか、どう指されても負けという局面で、後手が何度も寄せを逃がし、気がつけば私が優勢になっていた。しかし私も焦っていた。対局時計が「11」を指しているから、こちらも残り11秒しかないのか…と思いよく見ると、11分なのだった。
ここで最終盤のハイライトの局面を記してみよう。
先手 一公:1五歩、2五歩、3六歩、3七桂、4一銀、4五歩、6六金、7六歩、7七桂、8一飛、8八歩、9六玉 持駒:角、金、香、歩3
後手:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二金、3四歩、4三歩、5一銀、5三王、5四銀、6三桂、6四歩、6八金、7一歩、8九竜、9一香、9四歩、9五角 持駒:銀、香、歩2
私が▲4一銀と掛けた手に対し、後手が△7一歩と意味深な歩を打った局面。最初はこんな歩、むしり取るつもりだった。しかし△6二銀打と粘られると、後手王を寄せるのが面倒だと思った。
そこで私は▲3二銀成と金を取る、やはり現ナマは大きい。ところが後手に強い手つきで△7七角成と指され、これで自玉が受けなしになっているのに愕然とした。ここで残り5分になるくらいまで考えたが、もう遅い。私は▲2六角△4四香を利かし、泣く泣く▲8六香と受けたが、以下は後手に鋸引きの寄せを指され、私の悔しい悔しい敗戦となってしまった。
投了後、まっさきに口を衝いて出たのが、上の局面である。
「やっぱりふつうに(▲8一の飛車で△7一歩を)取るべきでしたか」
「え? それは△8八竜で…」
「え? それは▲5一竜で…」
「え? それは角が利いてます(△同角)」
「えっ?! それは▲5二金で…」
「あっ…」
な、なんてこった!! ▲4一銀はこっそり詰めろだったのに、後手はそれに気づいていなかったのだ!! △7一歩は、単に先手の飛車を8筋からどかしたかっただけらしい。私はヘンに読みすぎたのだ。いや、読みが足りなかったというべきか。まだ時間はあったのに、何を焦っていたのか!
敗勢の将棋がいったんはひっくり返ったのに、その将棋を再び負けにした。地獄から天国を一瞬見たが、また地獄に突き落とされた気分だった。自チームに勝ち点をもたらすチャンスを早くも潰し、私は激しく落胆した。
ちなみにこの日、「星組」は金曜サロンセミレギュラーのY氏が参加しているのみだった。もう、彼に合わせる顔がない。
ああ、女流棋士に慰めてもらいてぇ…。
私は悄然として、ふらふらとLPSAブースに向かう。と、ブースにはスタッフのI氏と、藤田麻衣子女流1級がいた。
「……」
私はブースには寄らず、そのままエレベーターで1階へ降りる。
ビルの向かいにある、前回入った立ち食いそば屋は、今日は満員である。もとより、胃が受けつけない。私はコンビニに入ってジュースを買うと、それを無理矢理流し込んだ。液体を体内に入れることが、こんなに難儀だとは思わなかった。
(つづく)
詳しいお方に確認しておいたら如何でしょう。
最初に負けてしまうと、個人的には消化試合なのですが、チームとしては、それでも頑張って3勝を挙げて欲しいものです。
そうすれば、ケーキセットもおいしく食べられます(笑)。
それから。。。I氏によろしく!。
社団戦は、つらいです。
負けると、チームのほかの選手に迷惑がかかる。でもそうやって鍛えられて、上達するんでしょうね。
さわやか風太郎さん
勝ち点の件、ご教示ありがとうございます。
次回の社団戦のときに、関係者に聞いてみます。
Yっ氏ーさん
これからアップする記事を、タイムマシンで先に読まれたのかと思った(笑)。
25日は、当然4勝します。そうしたら、今度はケーキセットです(笑)。
瀬戸のひしお。さん
石橋先生の敗戦、私は前局の後遺症はなかったと思います。ただ、時間に追われていたようですね。LPSA駒込サロンの解説会では、「石橋必勝」の結論が出ていたのですが…。
I氏には、よろしく言っておきます。なんだか知らないけど。