一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「NIS×Tefu CUP」はファッショナブル③・さかもと未明は大暴走

2010-06-24 01:20:13 | LPSAイベント
きょう6月24日は中井広恵先生のお誕生日。おめでとうございます。
中井先生は代表理事を退かれましたが、LPSAの顔であることに変わりはありません。これからも対局と普及に全精力を注いでください。応援しております。

(前日のつづき)
準決勝第2局・石橋幸緒天河-中倉宏美女流二段戦が始まる。解説は佐藤天彦五段、聞き手は蛸島彰子女流五段である。
先番中倉女流二段の三間飛車に、石橋天河の採った作戦は飯島流引き角戦法。プロとして当然とはいえ、石橋天河は本当にいろいろな戦法を指しこなす。見ていておもしろい将棋である。
「ベストドレッサー賞」の配点に悩むが、前方に島井咲緒里女流初段の姿が見える。いまはブルーのジャケットを脱いで、ノースリーブのワンピースになっている。この艶姿を見せられると弱い。
「許せ、イシバシ」
私は石橋天河への1点を島井女流初段へ移して3点とし、船戸陽子女流二段、中倉女流二段へ各1点を付けて、入口付近の投票箱へ向かった。
たまたまいらした島井女流初段に、
「3点を付けました」
と強調し、箱に投入した。
そのまま石橋-中倉戦を一瞥したあと、席に戻る。
聞き手が渡部愛ツアー女子プロに変わった。やはり女子高生はいい。本局も大盤の前から動けなくなりそうだ。
佐藤五段が、
「渡部さんは振り飛車党なの?」
と訊く。それを受けて渡部ツアー女子プロが、
「いま『振り飛車禁止令』が出てるんです」
と言う。振り飛車党の渡部ツアー女子プロが居飛車党に転向して、どのくらい経つだろうか。まだぎごちない手はあるものの、だいぶ板についてきた感がある。ただし私は、渡部ツアー女子プロの「居飛車」には反対の立場で、もし本人が振り飛車を指したいのなら、そうさせればいいと思っている。
盤上――。中倉女流二段が成銀で飛車取りに当てる。これに石橋天河が飛車を浮き、両方の駒の上下運動が続けば千日手となってしまうところだったが、中倉女流二段が別の手を指して、緊急事態は回避された。
さて形勢はどうなのだろう。石橋天河への絶対的な信頼から、私は石橋天河有利と見ていたのだが、実際はいい勝負だったようだ。いやむしろ、中倉女流二段がおもしろい形勢だ。
女流漫画家の、さかもと未明さんの顔が見える。今回のイベントは盛りだくさんで、このあと午後3時30分から、トークショーに出演するのだ。
再び盤上に戻る。中倉女流二段、竜を作って、優位を拡大している。「女流二段」が「天河」に勝っても金星とは言わないが、LPSAの現状を見ると、そう言いたい雰囲気になっている。つまりそれほど、実力に差がついてしまっているのだ。もう勝敗予想はふたつ外しているし、ここは中倉女流二段を応援したいところだった。
時刻はそろそろ3時30分だが、石橋天河も容易に土俵を割らず、踏ん張る。しかし中倉女流二段は大駒4枚を手にし、不敗の態勢になった。それどころか、石橋玉に即詰みの手順が生じているようだ。ここは踏み込みたいところだが、中倉女流二段がグズり、石橋天河もあやしく粘る。今回のトーナメントは、持ち時間15分・30秒の秒読みである。この条件では、何が起こるか分からない。
佐藤五段も先ほどまで中倉女流二段の勝ちを宣言していたが、それは撤回されている。
数手進み、石橋玉が敵陣に侵入した。これは逆転模様か? 中倉女流二段、非勢になってきた。流れがわるいのだ。追いつかれたほうは、追いつめられた気分になる。
いつの間にか、石橋天河に飛車角が渡っている。これはもう、石橋ペースである。
結局最後は、石橋天河が根性で中倉玉を詰まし、中倉女流二段、無念の投了となった。その手数、1dayトーナメント史上最長の、234手。終了時刻は、予定を大幅に上回る、3時45分ごろだった。
激闘を終えた両雄が、対局室から大盤に現れる。やれやれ…とホッとした顔の石橋天河に対し、中倉女流二段は大魚を逸して、悔しさを隠しきれない様子だ。
彼女のこんな表情を、私はいままで何度も見てきた。中倉女流二段がファンにそういう顔を見せたくないのなら、渡部ツアー女子プロ同様、やはり将棋の勉強をするしかない。
かなり遅れたが、いよいよさかもと未明さんのトークショーだ。前述のとおり、未明さんは女流漫画家だが、モデルや舞台、エッセイなどさまざまな分野で活躍する、マルチタレントでもある。第2期マイナビ女子オープン5番勝負では懸賞金スポンサーにもなり、「週刊将棋」にマンガ入りのレポートを書(描)いたこともある。
参加者は向かって左から、中倉女流二段、中井女流六段、未明さん、佐藤五段の4名。中井女流六段がいくつか設問を読み上げ、それに未明さんが答える、という形式である。予定を30分以上遅れて、4時すぎに開始となった。
席の最前列には、同じ漫画家の加賀さやかさんがいる。当然面識はあるに違いないが、同業者のコアな将棋ファンとして、両者の間に「バチバチッ」と火花が散ったように見えた。
未明さんへの設問は6つほどあったが、最初は、「将棋を始めたキッカケは?」だったと思う。
回答の内容は忘れたが、確かにひょんなキッカケだったと思う。将棋を教えてくれた棋士、というか師匠は、当時日本将棋連盟理事だった島朗九段らしい。
未明さんは、深浦康市王位のマネをしたり、羽生善治名人や丸山忠久九段などのプロ棋士を「浮世離れした人」と称するなど、それなりに健康的な笑いを取っていた。そう…このあたりまでは。
ところが、佐藤五段の髪型がおもしろかったのか、ガッ!! と佐藤五段の髪を掴んだあたりから、おかしくなった。
「私、島先生に訊いたのー。………は、対局の前ですか、それともあとですか、って」
はあああああああー!? い、い、いまなんとおっしゃいました!?
およそこの空間に相応しくない単語が出てきたので、会場内は一瞬の沈黙のあと、戸惑い気味の笑いが起こった。
「そしたらねー、島さんはこう答えたの。………って!」
ここで今度こそ本当に、会場内に大爆笑が渦巻いた。だ、大丈夫か!? こ、こんなこと言って、大丈夫なのか!? 中井女流六段は愛想笑いをしながらも、その顔はひきつっている。しかも未明さんが同じ質問を、佐藤五段に向けたから堪らない。
「ボクはそういうこと、しません…」
まあそうだろう、そう答えるしかないだろう。今度は中倉女流二段に同じ質問が向けられる。バカな! そんなこと、中倉女流二段が答えるわけがないじゃないか!! とは言うものの、ヒロミファンとしては、ちょっと答えを聞いてみたいところである。
しかし中倉女流二段は必勝の将棋を落とし疲労困憊のうえ、まったく予期していなかった質問を浴び、困惑を隠せない。そんな表情がまた、マニアには堪らなく映る。しかしやはり、中倉女流二段は、無回答であった。ま、当然であろう。
早く話題を変えようと、中井女流六段が冷静に次の質問を読み上げる。この対比がまたまた可笑しい。しかし未明節はもう、バリバリ全開である。
「あの人誰だっけ? …クニオ!!」
うおーっ!! あの人をあんな呼び方していいのか!? もう、さかもと未明にコワイものなし。とどまるところを知らない超特急だ。
私はあまりの可笑しさに笑い転げ、涙が出た。こんなに笑ったのは、久しぶりである。さすがにLPSA、呼ぶゲストがスゴすぎる。加賀さやかさんを天才とするならば、未明さんは鬼才、というべきか。女流漫画家は個性的だ。
こうして4時26分、トーク時間の15分を5分ほどオーバーし、掟破りのトークショーは、惜しまれつつ終了したのだった。
引き続き、決勝戦の開始である。対局者は、石橋天河-松尾香織女流初段。ほかにもあったかもしれないが、松尾女流初段は2年前の「とちのきカップ」で、決勝に進出している。このときも公開対局で、私は和室の廊下に座り、北尾まどか女流初段との決勝戦を、間近で観戦したものだった。2年前同様、今回も松尾女流初段を応援したいが、大豪相手にどこまで迫れるか。
解説は中倉女流二段に、ええっ!? 未明さん!? だ、大丈夫なのか?このふたりで!?
(つづく)
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8 コメント

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みめい (洋志)
2010-06-24 13:45:33
 笑えましたね。こういう描写はイッコーさんの得意形?(笑い)
さかもと未明さん (LPSAファン)
2010-06-24 14:29:20
また、イベントでトークしてほしいですね^^
即詰み (佐々)
2010-06-24 20:19:47
文中の、中倉さんが見逃した即詰みって、何手詰めだったか覚えておられますか?

一公さんは、解説ナシにその詰み筋に気づかれました?^^
未明さんに乾杯!! (一公)
2010-06-25 00:55:45
>洋志さん
これはですね、洋志さんがその場にいらしたかどうか分かりませんが、ライブで聞いたほうが、数百倍おもしろかったです。
「抱腹絶倒」という言葉はこの時のためにあったのだと思いました。

>LPSAファンさん
未明さん、恐れを知らぬトークは最高でした。本当に、またトークを聞きたいですね。
未明さんには、LPSAの宣伝部長になってほしいです。

>佐々さん
解説では、具体的な詰み手順は示されませんでしたね。こう指していれば難しい手もなく、あらかた詰みだろう、という感じでした。
私には詰み筋は分かりませんでしたが、ふだんの中倉先生なら指せたと思います。
聞きたかった ()
2010-06-25 01:05:38
現地にいた特権ですね。USTRREAMの中継では、偶然?その時は無音状態だったようです。何て言ったか予想はつきますが(私の中で2択)、ここに書くわけにはいきません実はさかもと未明さんが誰かよく分かっていませんでしたが、プロフィールを読んで納得。素敵な方ですね。
Unknown (佐々)
2010-06-25 07:45:10
ニッポン、勝ったーー!!!!

ナカクラヒロミさんは、三間飛車より、居飛車やってた時の方が強い気がしますか?>一公さんからみて


  どうして、女流は振り党が多いのか?
明確な理由って分かりますか?^^
生未明さんを見たかった (M)
2010-06-25 21:30:57
当日はイベントに参加はできませんでした・・・が「生 未明さん」は見たかったしトークも楽しかったようなので行きたかったなあ。
未明の勝利に乾杯!! (一公)
2010-06-26 01:59:37
>俊さん
未明さんが何を言ったかは、各自で想像されるのが、味がいいでしょう。
中継の不備で音声が聴けなかったのは、神のご加護でした。
もちろん私も、未明さんのファンになりました。

>佐々さん
W杯サッカーは、「未明」の大勝利でしたね。もっともその時間、私は寝ていましたが。
宏美先生が居飛車で強い理由は、穴熊に囲っているからではないでしょうか。やはり穴熊は優秀なんでしょうね。
女流に振り飛車党が多い理由は、将棋を覚えたときに、「飛車を振って、美濃囲いに構える」ことを教えられるからだと思います。
これは手順が簡単なうえに、囲いも固い。振り飛車を指しなれてから、居飛車で「▲5七銀左」などは、薄くて指しきれないでしょう。

>Mさん
生未明さんを見られなかったのは残念でしたが、次の機会は必ずやってきます。あれだけのキャラを、LPSAが放っておくはずがありません。未明さんの再登場まで、楽しみに待ちましょう。

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