一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

上野裕和五段著「将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編」

2012-12-25 00:06:21 | 男性棋士
2日の大野教室で購入した、上野裕和五段著「将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編」(マイナビ刊・税込1,470円)の内容紹介と感想を書く。

全3部構成で、第1部は「序盤の基礎知識」。序盤の基礎を解説する。
第2部は「歴史を振り返る」。3つの視点から、序盤の戦術を振り返る。
第3部は「現代振り飛車の主流戦法の紹介」。現在流行している4つの戦法を解説する。

第1部「序盤の基礎知識」。第1章は「序盤初めて講座」。序盤の大切さを説く。初心者にはむずかしいが、プロは序盤を重視している。むかし私が読んだ中原誠名人の本には、序盤の1歩損が勝敗に響くこともある、と書かれてあり、俄かには信じがたかった。しかしそれも棋力が上がるにつれ、理解できるようになった。それはとにかく、序盤の大切さが分かれば有段者であろう。
第2章は、「振り飛車の戦い方、囲い方一覧」。振り飛車の名称と、それぞれの囲いを紹介する。この形をしっかり覚えることが大切である。
第3章は、「居飛車の戦い方」。急戦と持久戦の戦い方を説く。居飛車はどちらを選んでもよし。囲いのバリエーションも豊富で、指していて楽しい。これが居飛車の醍醐味である。

第2部「歴史を振り返る」。第1章は「振り飛車対居飛車の歴史」。大山康晴十五世名人や森安秀光九段が用い大流行した振り飛車戦法。やがて居飛車穴熊が登場して猛威をふるい、それに藤井猛九段が「藤井システム」で対抗。さらに居飛車側が対抗策を編み出して…と、戦法の変遷を分かりやすく説いている。
第2章は、「棋士の意識の変化」。本書のいちばんの見どころがこれである。古くから言われていた格言、常識を見直し、新しい考え方を提唱する。棋歴の長い愛棋家ほど、「目からウロコ」であろう。
第3章は、「外部環境の変化」。棋譜や研究内容の、流布の変化を解説する。これを読むと、現在の私たちがいかに恵まれているかが分かる。プロ顔負けの若手強豪が現れるのもむべなるかな、である。

第3部は「現代振り飛車の主流戦法の紹介」。第1章「ゴキゲン中飛車」、第2章「石田流」、第3章「先手中飛車」、第4章「角交換四間飛車」と、それぞれの戦法を詳解している。おのおのさらに何節かに分かれており、さすがにここは著者の腕が鳴っているところである。執筆時現在の最新形まで紹介されており、好感が持てた。

以上だが、各章に挟まれている、1頁コラムの「ブレイクタイム」もおもしろい。1の「勝った直後の棋士はなぜ笑わないのか」の理由は、なるほどと唸らされた。6の「クリスマスイブの惨事」も大笑いした。

本書は上野五段の人柄がにじみ出ている、誠実な編集だった。再三書くが、ここ数十年の序盤の変遷が系統だてて説かれており、戦術書とは別に、一家に一冊置いておきたいところである。将棋教室のテキストに最適だと思う。

では、メリークリスマス。
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