一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

美の競演・9「名手△6二金上」

2017-05-10 00:47:27 | 将棋イベント
(8日のつづき)
室谷由紀女流二段は温泉にも入ったそう。天童を満喫しているようである。
12時30分からはプロ棋士のトークショー。人間将棋盤上の左から藤井猛九段、中村桃子女流初段、三浦弘行九段、阿部健治郎七段、室谷女流二段が着座した。三浦九段と阿部七段はこのあと人間将棋を行うので、武者姿。藤井九段、室谷女流二段、中村女流初段は裃の肩衣姿で、両女流に至っては、昨日からコスプレ三昧の趣すらある。マニアにはたまらない絵であろう。
司会は藤井九段が務める。私はさっきと同じ位置から見たが、5人がやや遠い。
藤井九段が
「三浦君、久しぶりだねえ」
とジャブを飛ばす。会場から苦笑がもれたが、さすがに事情通が多い。「今年ちょっと見かけただけで会ってなかったけど」
こんな軽口が飛ばせるのも、藤井九段、三浦九段、阿部七段が同じ一門(西村一義九段)だからだ。三浦九段は苦笑するしかないが、元気そうだ。
阿部七段は人間将棋2回目。今年の5月から、出身地である山形県酒田市に活動拠点を移すという。「でも地方にいるデメリットは感じません。ネットもありますし」
室谷女流二段は、山形は5回目だが、天童桜まつりは初めてとのこと。それはそうだろう、もし以前に来童していたら、私が赴いていたはずだから。
中村女流初段も2回目の天童だそう。前回は阿部七段と一緒だったらしいが、それは阿部七段のほうが忘れていた。
三浦九段は18年ぶりだが、前回は雨。高名な棋士に「落武者のよう」と言われたらしい。
藤井九段は4回目。棋士が順番に天童に招ばれるなら、1回招ばれれば御役御免、という計算だ。それが4回も招ばれるということは、それだけ地元の評判がよかったということだ。
しかしどうも、私の居場所がわるい。ここで聞き続けてもいいのだが、私は通路を横切って、向こう側に移る。こちらのほうが室谷女流二段を近くで撮れるからだ。









話題は「3月のライオン」になる。なにしろ今回の桜まつりは、これとのコラボなのだ。
驚いたのは、参加棋士全員が同マンガを読みこんでいたこと。各自好きなキャラもいるらしい。
ちなみに私は、将棋マンガは読む気がしない。しょせんフィクションだからである。
さてこの後の人間将棋であるが、藤井九段は
「対抗形じゃないと解説しないからね」
と恐ろしいことを言う。「角換わりの将棋にしたら、オレ一言もしゃべんないよ。横歩取りもしゃべんないと思うよ」
それで、どちらかが飛車を振ることになったようだった。

13時から、人間将棋の開幕である。私は向かって左側にある大盤付近に戻ったが、観戦者が多すぎて入れない。入場制限になってしまったのだ。
解説は藤井九段、聞き手はまず室谷女流二段が務める。こうなることが分かっていたのだから、さっきは移動せずに、その場所を確保しておくべきだった。
昨日と同じ、織田信長と東西の戦武将が登場し、チャンチャンバラバラとやる。だが私の場所からはほとんど見えない。
合戦はまた決着がつかず、将棋で決着をつけようぞ、となった。松明がたかれ、織田信長の呼び出しにより、三浦九段、阿部七段が登場した。
阿部七段「三浦殿、いろいろ大変だったであろう」
三浦九段は再び苦笑するばかりである。
藤井九段「すべての駒が効率よく、イキイキと動くことを期待しております」
これは慣例どおりにすべての駒を動かせよ、という兄弟子の命令でもある。
ここで神木隆之介と大友啓史監督が再び登場し、振り駒を行う。「貴重な経験で、緊張しています」と神木隆之介。粋なサプライズで、先に帰ってしまったファンは残念なことだった。
阿部七段の先手となった。阿部七段は偶然にも「先手カラー」の青の甲冑だった。双方が櫓に乗り、対局開始。
「序盤は早く飛ばしたいぞ」と▲1六歩。以下△1四歩▲9六歩△9四歩と、前日と同じ腹の探り合いとなった。前日は振り飛車党同士の戦い、本日は居飛車党同士の戦いだが、注目は前日と同様、「どちらが得意戦法を放棄するか」だ。
数手進んで三浦九段「うーん、やりたくないけど」と△4二飛。「何とかシステムだな」。
創案者の藤井九段は満足気で、これで解説をやってくれそうだ。
私の位置からでは藤井九段の背中と室谷女流二段の正面が見える。しかしその手前の台が障害物になって、室谷女流二段が見えにくい。大盤はもっと見えない。返すがえすも、さっきの移動は大失敗だった。
阿部七段はミレニアムに組んだ。これは三浦九段得意の囲いで、これで升田幸三賞を受賞したこともある。局面だけを見れば、▲三浦九段VS△藤井九段のようだ。
神木クンらが帰ってしまったので一部の観覧者も引け、大盤手前の通路にやや余裕ができた。やや迷ったが、私はそこに潜り込む。これで室谷女流二段の全身を視野に入れることができたが、あらためて、すさまじい美しさである。
だが、邪魔なのがその手前に鎮座するニコ生のビデオカメラだ。室谷女流二段のみを鑑賞するぶんには構わないが、写真に収めるとき、カメラが邪魔になるのだ。なんで視聴者が満足して、私に不満が残るのだ。









三浦九段は左銀を△6三に引きつける。「ダイヤモンド美濃は室谷さんのように美しい。△5四歩」。
しかし言われた室谷女流二段は、ピンときていないふうだ。
美人に美人と言っても意味がないのだろう。実際私もサラリーマン時代、応募すればミス日本グランプリ確実、という同期に「美人」を連呼したが、ちっともいい顔をされなかった。よって室谷女流二段をよろこばせる言葉は、
「最近将棋が強くなりましたネ」
これだと思う。
そろそろ不動駒が少なくなってきた。先手は▲1九香・▲2八飛・▲4七歩、後手は△2一桂・△2三歩・△6一金が残っている。

そこで三浦九段は△6二金上。これに藤井九段が唸った。
「これはネ、次に△6一金と引こうということなんです。後手はこの形が最善で、もう動かしたくない。だけどこれなら金を動かしたことになりますから」
案の定、三浦九段は△6一金と引く。藤井九段、心底感心のテイであった。
(つづく)
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2 コメント

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サービス精神 (ブルーベリー)
2017-05-18 18:47:58
藤井九段はギャラリーを楽しませようという気持ちが表情や言葉にあふれています。
実力があるので解説も的を得ています。
背後からいきなり切りつけられたような不幸な出来事のあった三浦九段を
イジって笑いに変えてくれる兄弟弟子の存在は有難いことです。
この場面の会話は心温まるレポートでした。
大沢さんも女流棋士を追っかける、ただの変態写真マニアだけではないようです。(笑)
重要な役どころ (一公)
2017-05-19 20:16:37
>ブルーベリーさん
藤井先生はおもしろいですよね。
勝負の世界に生きていながらひょうきんなところもあって、好きな棋士の一人です。
今回は、藤井先生が重要な役どころでしたが、難なくこなした感じです。
大いに楽しませてもらいました。

私が変態写真マニア?
ハハ…。

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