一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

田中女流2級の初陣

2021-10-26 00:38:56 | 女流棋士
20日に指された第2期女流順位戦D級・山口恵梨子女流二段VS田中沙紀女流2級の一戦を振り返ってみたい。
この将棋、当ブログの読者なら先刻承知だろうが、田中女流2級の再デビュー戦である。大昔に順位戦C級2組から陥落し、予備クラス(いまの奨励会三段リーグ)に戻って再び勝ち抜き、再度棋士デビューを果たした例はあるが、今回の例も相当珍しい。もう少し話題になってもいいと思ったが、田中女流2級がLPSA所属というのが、障害になったかもしれない。
将棋は田中女流2級の先手で、▲4八銀△8四歩▲7八金(第1図)で始まった。

初手▲4八銀が田中流である。田中女流2級の実質的師匠である鈴木英春アマが後手番で愛用していた指し方だが、私はこの手が本筋とは思えない。著しく作戦の幅を狭めて損だからで、このあたりは大野八一雄七段が矯正したと思っていたから、この初手は意外だった。
対して山口女流二段の△8四歩がこれまた意外。むろん山口女流二段が振り飛車党だからだが、近年は居飛車も勉強しているようだ。しかしそれを女流順位戦で採用するだろうか。いや、田中女流2級相手なら不慣れな居飛車でも指せる、と読んだのかもしれない。
そして田中女流2級▲7八金。まあ、そうであろう。本譜は以下△3四歩▲5六歩に△8五歩となったが、私なら△8五歩で△3二飛と振ったかもしれない。実際こう指したら、先手はどういう囲いにしたのだろう。
ともあれ将棋は相居飛車となり、角交換から相銀冠になり、お互い角を打ち合うじっくりした戦いになった。ただ、田中女流2級はこうした進行が好きなはずで、持ち味が発揮しやすい展開になったとはいえる。
果たして以後は田中女流2級ペースで進み、終盤は必勝形となった。
第2図は山口女流二段がとりあえず△2六歩と打ったところ。

第2図でA▲2六同玉は△2八飛成で生きた心地がしない。といってB▲1七玉も△3七飛成▲同銀△2五桂で、以下イ▲2六玉は△3五銀▲2五玉△2四金、ロ▲1八玉は△2七歩成▲同玉△3七金……で詰んでしまう。
よって田中女流2級はC▲3六玉と躱したが、これも△4六金▲同玉△4八飛成で、先手玉は即詰み。以下▲4七金△5七銀まで、田中女流2級が投了した。
まったく痛恨の逆転負けで、もったいない。戻って第2図では、堂々と▲2六同玉と取るのがよかった。以下△2八飛成が恐いが、▲2七歩(参考図)と打った局面を見よ。

このとき田中女流2級は1分将棋だったが、参考図は有効な王手がないのが一目瞭然だ。だから▲2六同玉は指さなければいけない手だった。指運が悪かった、で片づけてはいけないと思う。

かくして田中女流2級のデビュー戦はほろ苦いものとなった。ただ内容はよかったので、ほかの女流棋士にもいいアピールになったと思う。
あと私が望むのは、序盤作戦の改良である。ハッキリ書くが、初手▲4八銀と指しているようでは未来がない。もっと上を望むなら、本筋の手を追求するべきである。
きょう26日は、第4期清麗戦・飯野愛女流初段との一戦。田中女流2級の初手を楽しみにしている。
コメント (4)
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