一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

竜王戦のツキ

2019-07-08 00:22:31 | 将棋雑記
5日に指された第32期竜王戦本戦トーナメント・久保利明九段(1組5位)と藤井聡太七段(4組優勝)の一戦は、180手まで藤井七段の勝ち。挑戦権獲得まであと4勝とした。
この将棋、久保九段の中飛車で始まったが期待に違わぬ熱戦となり、最後は藤井玉が詰むや詰まざるやの状況になった。久保九段は▲2一銀不成~▲3三金(A図)と追い駆けたが、わずかに詰まなかった。

ところが局後の検討によると、A図の▲3三金に代えて▲6二竜(B図)なら、合駒の関係で藤井玉が詰んでいたという。

この順が難しいのだが、実戦心理としては▲5三竜、と香を取りながら王手したいところで、久保九段が秒読みの中、▲3三金から詰ましに行ったのは責められない。
もっとも藤井七段は▲6二竜を知っていたが、開き直って詰めろを掛けたようだ。
とするならば、藤井七段も16歳にして相当な勝負師だ。
ところで今期竜王戦の藤井七段はここまで、平坦な道のりではなかった。
1回戦の村田智弘六段戦は快勝だったが、2回戦の畠山成幸八段との一戦は、藤井七段が苦戦気味の難しい戦い。96手目藤井七段の△6九角(C図)に畠山八段は▲3五馬と銀を取ったが、これがとんだ毒まんじゅう。△8九銀が痛打で、一遍に後手勝勢となってしまった。

戻って▲3五馬では▲9七玉(D図)が正解で、屋根裏に逃げ越せば、先手にも勝機が十分あった。

また3回戦の中田宏樹八段戦は、中田八段が会心の指し回しを見せ、藤井七段が敗勢になった。が、そこで藤井七段の△6二銀(E図)が、強烈な勝負手だった。

中田八段は魅入られたように▲6二同竜と取ったが、藤井七段は△6八竜!!! 見事に先手玉を詰ました。
準決勝の高見泰地叡王(当時)戦も苦戦。高見叡王の△2六角に藤井七段は▲3七桂(F図)と受けたが、ここで高見叡王が△9九香成としたのが逸機。強く△3七同角成としていれば、高見叡王が有利を持続できた。高見叡王もむろんこの順は読んでいたが、指し切れなかったようだ。

決勝の菅井竜也七段戦も、藤井七段が駒損で苦しい戦い。終盤、△3七角(G図)▲2七飛△5九角成と進んだがここで▲2八飛がいい辛抱で、最後は千日手に持ち込んだ。
戻って△5九角成では△4六角成(H図)とし、後手が優位を持続できたらしい。


指し直し局は藤井七段が快勝し、ランキング戦16連勝。3期連続の本戦トーナメント出場としたのだった。

こうしてみると、藤井七段にも負け将棋はある。しかし何やかやと勝負手を繰り出し、最後は相手を間違えさせてしまう。勝ち将棋はむろんスンナリ勝つので、結果、いつも勝っているイメージとなる。
ともあれここまで竜王戦に勝ち運があると、挑戦権をかっさらうような気がしてならない。
とはいえ藤井七段の次の相手は豊島将之名人(1組4位)。勝っても渡辺明二冠(1組優勝)が控えている。このツートップを倒しても、まだ反対の山にひとりいるのだ。
まるで毎回が一番勝負のタイトル戦だ。凄まじいトーナメントである。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする