感染症診療の原則

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おにぎり と その周辺

2012-08-21 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
おにぎり・・・といえば一般的には「お弁当」とか「遠足」ですがー(え?コンビニ?)

感染症ワールドでは「ブ菌」ですね。正式名は「ブドウ球菌」(ぶどうきゅうきん)です。
もやしもんの図鑑をみたら、紫色でブツブツぶどうのように並んでいました。さすが。

食品安全委員会作成 平成23年『ブドウ球菌食中毒ファクトシート』

『ブドウ球菌とエントロトキシン研究の最近の進展』

「ごはん中での黄色ブドウ球菌の増殖と毒素エンテロトキシンの産生を温度、時間毎に調べました」


手にはたくさんの細菌がついていますので、握った直後はよいとしても(よくない菌もありますが)、その後時間をおいて食べると「お腹イテー」な状態になることがあるわけです。

症状としては、激しい吐き気・嘔吐、腹痛、下痢などですが、ポイントとして「発症するまでの時間」が比較的短い0.5~6時間(平均3時間)ということがあります。

菌は熱によわいのですが、菌が作る毒素は100℃30分間の加熱しても無毒化されません。
つまり捨てるしかない、です。見た目やにおいでわからないのが怖い。

塩や梅干し・・・・・程度ではどうにもなりません。

こんな暑い日がつづくときは、無理せずお弁当ではなく現地でつくりたてのものを食べるようにしましょう。


集団での行事はけっこうこわい。1月のもちつきイベントでのノロ大ブレイク事件も「素手」が原因。
こちらはお月見団子での事例。
「月見だんごによる黄色ブドウ球菌食中毒事例-兵庫県」 IASR 2002年

最近は、家庭用でつくるときもラップをつかって直接ごはんに手の菌をくっつけないで握る方が増えています。


日本の食品安全管理の皆様のレベルはとても高く、動きも迅速。
日々、安全な食生活をおくることができるのも、農水省や厚労省はじめ、自治体の食品安全管理者の皆さんのおかげだと感謝しています。厳しい基準のコンプライアンスを守る食品産業の皆さんの努力もすばらしいです。

臨床との関係では、症状(特に時間的経過が重要)や食材、周囲の同じ症状の人がいるかというような状況証拠から迅速な情報共有をすることがだいじです。

こちらは新潟での事例
「症状から嘔吐型食中毒を疑って、黄色ブドウ球菌、セレウス菌の培養を優先的に行った。さけおにぎりとおにぎりの具のさけから翌日にマンニット食塩培地一面に黄色ブドウ球菌特有のコロニーの発育がみられたため、直ちにエンテロトキシンの検査を開始した。また、おにぎり、おにぎりの具(さけ,たらこ)、みそ漬(おにぎりと同一パック)の直接塗抹染色を行ったところ、おにぎりからはグラム陽性球菌、グラム陰性桿菌が多数観察された」

救命、2次感染3次感染防止のために、おかしいとおもったら保健所に電話、です。

<食品安全を学ぶリソース>
日本食品衛生協会のホームページ
「食品衛生管理者」
英国 レベル別に学習プロセスをふんでもらい、総合的な知識や技術を高める仕組み Food safety and hygiene e-learning course for schools
米国ペンシルバニア州立大学の通信コース certificateプログラム TAP Food Safety Certification e-Learning Program
英国の大学院 食の安全マネジメント 通信コース Food Safety Management e-Learning up to MSc
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