医学部でも看護学部でもワクチンにつて学習するのは、在学中に1時間程度だそうです。
なので「勉強しないと街角のオバサンとかわらないレベルよ」というと、表情がかわります(気合ですね)。
ワクチンについて調べた学生たちは、「日本だと足りないものがいっぱいある!」ということにショックを受けますが、「他の国はやっていないのになぜ日本は?」と気づくワクチンもあります。
河北総合病院小児科の上山先生が担当されています。
※読みやすいように改行を適当にいれています
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IDATEN 予防接種制度の見直しについて(パブリックコメント)
日本で中止を検討すべきワクチン
一昨年に米国より20 年以上遅れてHib ワクチンが,今年になってようやく肺炎球菌ワクチンが接種開始された.日本では承認すべきワクチンの議論が昨年度の新型インフルエンザの流行を契機に,盛んに議論されるようになった。
しかしロタウイルスワクチンや不活化ポリオワクチンの導入もいまだ目処がついていない.日本以外の国では当然のように行われている予防接種を,日本でも行えるようにするのはもちろん大事だが,一方で,日本以外の国では中止されつつある予防接種があることは,実はあまり知られていない.
BCG である.結核非流行国では,実はハイリスク群に対してしかBCG は接種されていない.今日本でBCG が必要なのかどうか,その必要性を考える際のポイントはBCG の有効性と結核罹患率の2 つにある.
BCG の有効性
BCG で何が,どの程度予防できるのか,については意外に知られていない.
BCG 接種によって,肺結核については50%程度,小児の粟粒結核と結核性髄膜炎については80%程度の予防効果があるとされているが、いずれも論文の質に問題があり,確固たるエビデンスがあるわけではない.Hib ワクチンや肺炎球菌ワクチンのように,ほぼ確実に予防できる,という予防接種ではない.
結核罹患率
WHO ではBCG を摂取するべきかどうかは,その地域の結核罹患率で決定するべきとコメントを出している.具体的には以下の3 つを満たす場合には,ルーチンのBCG 接種は不要とされる.
・毎年の喀痰塗抹陽性肺結核の平均罹患率(人口10 万対)が5 以下
・毎年の5 歳以下の小児結核性髄膜炎の平均罹患率(人口1000 万人)が1 以下
・毎年の平均結核罹患率が0.1%以下
米国ではBCG 接種がルーチンに行われていないが,これは罹患率が低いためである.米国ではむしろ結核のコントロールのために,結核の発見と潜在性結核の治療に重きが置かれる(予防接種だけで予防接種を議論してはいけない).BCG を行っているとツベルクリ
ン反応によって結核に感染しているかどうかの判断が難しくなるため,むしろBCG を行わないことで,結核の診断をシンプルにしよう,という戦略である.
英国でも2005 年までハイリスク群の13 歳と新生児にBCG 接種が行われていたが,結核の発症率が減少したため,中止された.つまり,結核の発症率が低ければ,ルーチンのBCG 接種は不要,というのが,現在の世界の予防接種の流れである.米国と英国の結核の罹患率は2007 年度でそれぞれ4.3,13.9,日本のそれは19.8 であり,上記のWHO の基準からすると,ルーチンのBCG 接種は不要ということになる.
また喀痰塗抹陽性肺結核患者は年々減少しており,2008 年度は7.7 であった.このように年々低下している結核の罹患率を考慮すると,日本でもルーチンでのBCG 接種をそろそろ見直す時期に来ている.具体的には日本は中等度蔓延国のため,結核への暴露のリスクが高い小児のみ,BCG 接種を行う,というのが現実的な対応と考える.
具体的に何を持ってハイリスク群と考えて,どのような小児に選択的にBCG を行うべきかは,以下の米国の2 つの基準が参考になるであろう.
・肺結核が無治療あるいはまだ十分に治療されていない患者と継続的に接触し,かつ予防治療ができない場合
・イソニアジドとリファンピシンに耐性の肺結核患者と継続的に接触する場合
文責 上山伸也 河北総合病院小児科
参考
1.Wilson ME, Fineberg HV, Colditz GA. Geographic latitude and the efficacy of bacillus Calmette-Guerin vaccine. Clin Infect Dis 1995;20:982-91.
2.Black GF, Weir RE, Floyd S, et al. BCG-induced increase in interferon-gamma response to mycobacterial antigens and efficacy of BCG vaccination in Malawi and the UK: two randomised controlled studies. Lancet 2002;359:1393-401.
3.Colditz GA, Brewer TF, Berkey CS, et al. Efficacy of BCG vaccine in the prevention of tuberculosis. Meta-analysis of the published literature. JAMA 1994;271:698-702.
4.Rodrigues LC, Diwan VK, Wheeler JG. Protective effect of BCG against
tuberculous meningitis and miliary tuberculosis: a meta-analysis. Int J Epidemiol 1993;22:1154-8.
5. WHO Weekly epidemiological Record 23 January 2004; 79: 27. http://www.who.int/wer
6.厚生労働省.平成20 年度結核登録者情報調査年報集計結果(概況).
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkakukansenshou03/08.html
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ちなみに青木編集長は、お子さんにBCGをしていないそうです。
(え、君、お子さんにやっちゃったの?といわれ・・・ブツブツ)
しかし、他のワクチンについては知らないそうです(母親任せの父親は多い)。
なので「勉強しないと街角のオバサンとかわらないレベルよ」というと、表情がかわります(気合ですね)。
ワクチンについて調べた学生たちは、「日本だと足りないものがいっぱいある!」ということにショックを受けますが、「他の国はやっていないのになぜ日本は?」と気づくワクチンもあります。
河北総合病院小児科の上山先生が担当されています。
※読みやすいように改行を適当にいれています
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IDATEN 予防接種制度の見直しについて(パブリックコメント)
日本で中止を検討すべきワクチン
一昨年に米国より20 年以上遅れてHib ワクチンが,今年になってようやく肺炎球菌ワクチンが接種開始された.日本では承認すべきワクチンの議論が昨年度の新型インフルエンザの流行を契機に,盛んに議論されるようになった。
しかしロタウイルスワクチンや不活化ポリオワクチンの導入もいまだ目処がついていない.日本以外の国では当然のように行われている予防接種を,日本でも行えるようにするのはもちろん大事だが,一方で,日本以外の国では中止されつつある予防接種があることは,実はあまり知られていない.
BCG である.結核非流行国では,実はハイリスク群に対してしかBCG は接種されていない.今日本でBCG が必要なのかどうか,その必要性を考える際のポイントはBCG の有効性と結核罹患率の2 つにある.
BCG の有効性
BCG で何が,どの程度予防できるのか,については意外に知られていない.
BCG 接種によって,肺結核については50%程度,小児の粟粒結核と結核性髄膜炎については80%程度の予防効果があるとされているが、いずれも論文の質に問題があり,確固たるエビデンスがあるわけではない.Hib ワクチンや肺炎球菌ワクチンのように,ほぼ確実に予防できる,という予防接種ではない.
結核罹患率
WHO ではBCG を摂取するべきかどうかは,その地域の結核罹患率で決定するべきとコメントを出している.具体的には以下の3 つを満たす場合には,ルーチンのBCG 接種は不要とされる.
・毎年の喀痰塗抹陽性肺結核の平均罹患率(人口10 万対)が5 以下
・毎年の5 歳以下の小児結核性髄膜炎の平均罹患率(人口1000 万人)が1 以下
・毎年の平均結核罹患率が0.1%以下
米国ではBCG 接種がルーチンに行われていないが,これは罹患率が低いためである.米国ではむしろ結核のコントロールのために,結核の発見と潜在性結核の治療に重きが置かれる(予防接種だけで予防接種を議論してはいけない).BCG を行っているとツベルクリ
ン反応によって結核に感染しているかどうかの判断が難しくなるため,むしろBCG を行わないことで,結核の診断をシンプルにしよう,という戦略である.
英国でも2005 年までハイリスク群の13 歳と新生児にBCG 接種が行われていたが,結核の発症率が減少したため,中止された.つまり,結核の発症率が低ければ,ルーチンのBCG 接種は不要,というのが,現在の世界の予防接種の流れである.米国と英国の結核の罹患率は2007 年度でそれぞれ4.3,13.9,日本のそれは19.8 であり,上記のWHO の基準からすると,ルーチンのBCG 接種は不要ということになる.
また喀痰塗抹陽性肺結核患者は年々減少しており,2008 年度は7.7 であった.このように年々低下している結核の罹患率を考慮すると,日本でもルーチンでのBCG 接種をそろそろ見直す時期に来ている.具体的には日本は中等度蔓延国のため,結核への暴露のリスクが高い小児のみ,BCG 接種を行う,というのが現実的な対応と考える.
具体的に何を持ってハイリスク群と考えて,どのような小児に選択的にBCG を行うべきかは,以下の米国の2 つの基準が参考になるであろう.
・肺結核が無治療あるいはまだ十分に治療されていない患者と継続的に接触し,かつ予防治療ができない場合
・イソニアジドとリファンピシンに耐性の肺結核患者と継続的に接触する場合
文責 上山伸也 河北総合病院小児科
参考
1.Wilson ME, Fineberg HV, Colditz GA. Geographic latitude and the efficacy of bacillus Calmette-Guerin vaccine. Clin Infect Dis 1995;20:982-91.
2.Black GF, Weir RE, Floyd S, et al. BCG-induced increase in interferon-gamma response to mycobacterial antigens and efficacy of BCG vaccination in Malawi and the UK: two randomised controlled studies. Lancet 2002;359:1393-401.
3.Colditz GA, Brewer TF, Berkey CS, et al. Efficacy of BCG vaccine in the prevention of tuberculosis. Meta-analysis of the published literature. JAMA 1994;271:698-702.
4.Rodrigues LC, Diwan VK, Wheeler JG. Protective effect of BCG against
tuberculous meningitis and miliary tuberculosis: a meta-analysis. Int J Epidemiol 1993;22:1154-8.
5. WHO Weekly epidemiological Record 23 January 2004; 79: 27. http://www.who.int/wer
6.厚生労働省.平成20 年度結核登録者情報調査年報集計結果(概況).
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkakukansenshou03/08.html
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ちなみに青木編集長は、お子さんにBCGをしていないそうです。
(え、君、お子さんにやっちゃったの?といわれ・・・ブツブツ)
しかし、他のワクチンについては知らないそうです(母親任せの父親は多い)。
日本に事情で約1年帰国する予定ですが、今後はずっと子供たちもアメリカ在住の予定です。
日本で暮らすにあたり、BCGの接種を勧められる可能性があり、今回の記事のごとく、アメリカの方針と異なるため、不安を抱いております。
今後、アメリカで暮らす予定ですので、やっぱり、日本で暮らす間はBCGなしで乗り切るべきでしょうか?
こんな場で質問させていただいて、申し訳ございませんが、ご回答いただけると大変ありがたく思います。どうぞよろしくお願いいたします。