感染症診療の原則

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お寺と麻疹

2012-02-05 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
お寺には歴史資料があって、感染症疫学の勉強にもなるという話。

亡くなった人の原因が記録されている台帳(過去帳)があるそうです。

例えば、麻疹が大流行したことが有名な1862年(文久2年)、江戸だけで約76000人が死亡したそうですが(江戸洛中麻疹疫病死亡人調書)、
しかし、これをお寺のデータでみると、実際は24万人規模なのだそうで。(『病が語る日本史』 (講談社学術文庫)
この年はコレラも大流行し、73000人近くが死亡。


ひー。怖い。今はワクチンがあってヨカッタ。

でも、2011年には各国で麻疹が再び増加に転じていて、日本でも2012年1月から報告が増えています。
余談ですが、、2011年10月のヨーロッパの麻疹レポートでは、30000例を超える症例報告、SSPEで2例死亡、その他にも23例が脳炎になり、このうち8例死亡
ということです。



麻疹は江戸時代だけで13回も大流行したそうです(「モダンメディア」2010年)

この資料に詳しいことがありそう~「江戸時代の麻疹と医療 : 文久二年麻疹騒動の背景を考える」日本医史学雑誌 50(4), 501-546, 2004-12-20・・・・

おー読みたい!と思っていたら3月12日に書籍化されて発売です。著者の先生はこの論文で、学会で表彰されています。

江戸の流行り病: 麻疹騒動はなぜ起こったのか (近世史)



文化系の人たちのお仕事の中に感染症関係の様々な情報が・・ですね。

「幕末の麻疹と食」
麻疹によい食べ物が検討されていた話・・・であります。


寺院の資料(過去帳)をもとに死亡構造の研究された方の論文によりますと、ある村では

■何年かの間隔で死亡者数の急増が繰り返されている
■これは全国各地の事例にみられ、江戸期の死亡動向に関する共通的傾向と同じ
■明治に入ったからといって、死亡者が減少していく傾向は現れていない。
■死亡実態を特徴づける「死亡数の鋸歯状の大きな変動」に関連して、その主要な要因が明確となる。何年かの間隔で繰り返される死亡者数の急増は、多くの場合、もっぱら15歳未満の死亡者数の増加によって引き起こされていた。
子供の死亡者が多かったことは、先行研究でもしばしば指摘されており、いわば死亡構造の江戸期的特質として広く認められている。

といったことがわかるそうです。
統一したサベイランスのない時代の病気の全体像を知るのに役立つのですね。


病が語る日本史 (講談社学術文庫)
講談社



カリフォルニア大学サンフランシスコ校には興味深い感染症関係の絵が所蔵されているそうです。今度でかけたらのぞいてきましょう(^^)
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