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再び増加の10代妊娠と性感染症

2009-07-20 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
日本の場合、妊娠・中絶のデータは比較的正確だろうといわれていますが、性感染症のデータの信憑性は疑問だといわれています。

米国はお金をかけて専門家を配置して様々なデータを扱っています。

1991年から2005年にかけて減少を続けていた米国の10代の妊娠と性感染症が再び増加に転じたことをメディアがこぞって伝えています。
http://www.presstv.ir/detail.aspx?id=101109§ionid=3510212
米国は中絶が大統領選挙の重大トピックになる国です。

問題の大きい10代前半(10-14歳)の女子の妊娠は16000件です。
学校をドロップアウトする率が高くなり、その後の就職や生活の困難を抱えるリスクが高くなります。

自立できていない時期の妊娠出産はその後の福祉予算に影響を与えるためあの手この手で対策を講じていますがそれでも効果はそんなかんたんにはあがらないようです。

今年初めのニュースでは、ミシシッピー、ニューメキシコ、テキサスが若年妊娠の多い州と報じられていました(少ないのはニューハンプシャー、バーモント、マサチューセッツ)。
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-35775820090108

ビジネス誌では、「無料で避妊ピルを渡したらどうだ」という議論もあります。
http://www.businessweek.com/debateroom/archives/2008/07/schools_should.html

実際に、フランスやドイツでは妊娠をしたら困る時期の若者には無料あるいは低額でピルが入手可能になっています。

日本は学割価格をもうけているクリニックもありますが、たいていは大人と同じ金額を支払うようになっています。
子どもや女性の健康に冷たい国だなとしみじみおもいます。

たとえば都内ですと低用量ピルは開業医でもらうと3000円/月~します。
若い患者の多い病院で1000~2000円というところもなくはないですが、とても限られています(いくらにするかはその病院の自由)。

「禁欲」だけを語っていては生命を守ることはできません。安全で確実な避妊の手段を若年層に伝える必要があります。
それは今すぐでなくても、今後必要になる知識と手段だからです。

同じニュースは15-19歳男子のHIV感染症が10年間で100%増加になっていることも警告しています。コンドームの使用率の低さがうかがえます。

現在、日本は中学3年生女子の10人に1人に性交経験があります。高3女子で40数パーセントです。

40代過ぎの女性の中絶もとても多く、大人の男女ともに避妊をちゃんとできていない現状があります。

臓器移植や脳死での生命の議論の姿勢と同じくらいの真摯な態度で、望まない妊娠をどうしたらいいのか?ということはどうして語られないのでしょう。

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