感染症診療の原則

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公的なワクチンの情報をさがしてみた (長文注意)

2010-08-12 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
HPVワクチンについて現場ヒアリングで見えてきたことの中間報告。

地域の公衆衛生や医療関係者への相談や打診なく、議員や首長が政治パフォーマンスとして公費にしたがっている、という問題が各地で指摘されています。

その結果、十分な情報提供がないまま、とにかく接種してしまえ的にあつかわれている今年の中学1年(地域によっては小6)の女子とその親御さんがいます。
かわいそうな状況だと気づいていないかもしれませんが。

県でいっせいに公費だぜい!とか盛り上がっている某県はホントにお気の毒です。
(予算がないから今年はしないよ・・・といっている自治体の人は実は結果的にラッキーかも)

製薬会社の作ったスライドそのままで教育講演をしてまわっている医師もいるそうです(怖い・・・)。

いずれにしても、接種すべきか?と考え悩む保護者は、ネットで情報を探し始めます。
そうすると、ホメオパシーはじめ、否定的な情報があふれています。
予防接種全体がよくないものに思えてきます。

これではいけません。

多くの保護者や保健所・学校関係者はHPVワクチンについては、「メディアの報道と製薬会社のパンフレットしかない」ことに戸惑っています。

そこで、HPVワクチンについて、本来あるべき情報とは何かを考えてみました。

「青木編集長だったら予防接種情報をどこでみますか?」
編集長「そうだねえ。UpToDateだね」
「(むっ)日本語だったら?」
編集長「厚労のHPかな?(探したことないけど)」

国のNational Immunization Programへの位置づけ、そして公的な保護者と本人向けの資料はどこにあるのか?です。

まず国立感染症研究所をみてみましょう。

「感染研」→「感染症情報センター」→「予防接種情報」 ここまでで3クリック

一番上には麻疹だけ別格の扱い。2012年までに排除ですから、特別扱いは妥当でしょう。本気でやっていることが伝わりそうです。
  
日本の接種スケジュールをクリックすると任意接種の一番下にHPVワクチンがあります。
(ここでさらに2クリック)

うーん、ここには3回接種としか書いていない・・・振り出しにもどります。

「予防接種情報」のページには「ワクチンで予防可能な疾患」コーナーがありました。

しかし! なんと!ここにはHPVワクチンの記載がありません。

よくみるとHibワクチンの説明もないですが (--;)  コレラや天然痘はあるのに・・・
肺炎球菌感染症をクリックしたら「現在該当記事はありません」(--#) ないの? 
・・・いいんですか? 

何クリックしたか忘れました・・・スルーされているのか無視されているのか。ワクチン情報の統括者はいないのか。

次に本丸の厚労のHPです(しかし保護者はここに探しにくるだろうか?)。

Topページには予防接種をにおわせるアイコンがありません。下の方にいくと行政分野別コーナーがあるので、坊主めくり的にまず「こども・子育て」をあけましたが、ハズレ。

次に「健康」をクリック。ずらーっと会議の開催情報などがならんでいます。一般の人にありがたみはありません。

とりあえずここだろうと「結核感染症課」をクリック。次に「感染症情報」をクリック。

ありました・・・・・!が、なんと!「定期の予防接種」しかありません。
任意接種について、何も情報発信が無いように見えます(パブコメでは国が軽視しているように見えるという指摘が複数ありました)。

少なくともトップページから探しに行けないという事実があります。(カラーコンタクトレンズ関連のバナーはあるのに)

・・・ここがdead endなんでしょうか?何クリックもしたうえでこれかよ?です。
国民の皆様の健康情報、感染症予防にしちゃあプアすぎませんか?

次に厚労のHPサイト内検索で「HPVワクチン」を調べたところ、上から6つめに資料をみつけました。(一般の人には探せませんよ)

じゃーん! その名も「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン ファクトシート」

そうです!一般の保護者が読めるようなファクトシートが必要なんです・・・・と見たところ、がーん(-_-;) 22ページもあります。

「シート」ですから、通常はA4裏表ですよ(別名をつけて、ホンモノのファクトシートをつくってください)

しかも「国立感染症研究所」がつくった資料ですよ。なぜ感染研の情報センターの予防接種情報コーナーにないんでしょうね。

・・・とりあえず、オーストラリアのニューサウスウェールズ州の日本語パンフレットが親切かもしれません。

国が感染症情報の提供や還元に熱心ではない(不作為?)ないっぽう、熱心に予防接種情報を流しているひとたちもいます。

下のチラシは世田谷の高級住宅街から千葉のマンションまで同じものがポストに直接配られているそうです。
誰がつくったか、問い合わせ先はどこかは書いていないのですが、言いたいことを短く、レイアウトも効果的で、チラシとしての完成度・アピール度はたいしたものです。
何より印刷代や紙代を自前で準備してまで一般市民に届けたいというその熱意。国民の健康を守りたいというミッションからのボランティア活動だとしたらうなります。

書かれている内容は医療関係者がみると、アチャーな内容ですが、こういった情報で不安になったり信じてしまう人も一定数います、これが間違いだときづけるような情報を流していない厚生労働省・感染研や専門家団体がmoreアチャーですね。



黄色に黒ってけっこうびびっときます。
(これじたいはデマですが、もしも注射で不妊効果が得られるとしたら、確実な避妊のためにぜひほしいという層もきっといるので儲かりますね・・・開発できたらの話ですが)



子宮頸がんにならない方法
1)結婚までセックスしない    →結婚したあとなるかも、ですよ。
2)日教組の性教育に染まらない  →って具体的にはどんな教育ナンダロウ?
3)不特定多数の人と性交渉しない →これは危険因子のひとつ。避けるがベター。
                          
コンドームや健診の大切さを伝えていない点において、この団体とGSKは似ています。

どこか自治体レベルでイケてる情報発信をしていたら教えてくださいませ。
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1 コメント

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優れたレポートありがとうございます (関根 奉允)
2010-08-12 14:23:45
まともなサイトに遭遇したことは、これまでありませんが、今後も探し続けます。HPVでは、他のワクチンと比較して、むしろ詳細が記されているほうである、と考えております(メーカのパンフレットそのものですが)。なぜ、Hib単独接種を認定するのかなどの説明もありません。先進・中進国では混合ワクチンが普通です。

ポリオワクチンでは、日本の情報はほとんど全て信頼できない(これまで事実が隠されてきましたので)という雰囲気がありますので、米欧の情報を使います。不活化ポリオワクチン接種(単独)では、米国CDCに日本語化されたIPVのVISがありそれが使われます。

http://www.immunize.org/vis/jp_pol00.pdf

米国が全てIPVを採用した2000年のVISですが、英文版も2000年で改定はありません。

ただ、この2000年版に記された「OPVでは約240万人に一人にポリオを発症」という数字は、米欧とも現在は使っていません。2004年にWHOが公開した百万人に2-4人を使います。その理由は、米欧とも、IPVとOPVが1961年以来、幼児に対し一緒に(国、地域差があります)接種されてきており、統計学的に有意な研究が殆どないからです。

付け加えれば、OPVだけを50年近く使い続ける日本に、OPVの統計学的に有意な研究が皆無なのは何故でしょうか? 怠惰か、談合か、どなた様かの言う「闇」か。
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