感染症診療の原則

研修医&指導医、感染症loveコメディカルのための感染症情報交差点
(リンクはご自由にどうぞ)

「冷静な対応」の例:東京都

2009-05-06 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
思考停止にならないとはこういうこと・・の例ともいえる東京都の対応を紹介します。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/hodo/presskansen090506_1/index.html

産経新聞が伝えているところに寄ると、東京都は疑いの時点で厚生労働省に伝えず、都内で6時間程度(これは最速ですね!)可能な検査の結果を踏まえて届け出るようにしているとのことです。

都心から東京の武蔵村山市にある感染研究のラボは遙か彼方。
(モノレールが通る前は「陸の孤島」などともいわれていました)
用事があってでかけるときはかなり気合いがいります。

都のラボはど真ん中の新宿区にあります。

簡易キットの精度がよくない(全部をひろえない)、潜伏期間がある、など水際スクリーニングには落とし穴がたくさんあります(空港での厳戒体制強化が気の毒なくらいに)。

現在わかっているウイルスの特徴をふまえて考えれば、疑いをここまで騒ぐのは害しかなく不確定情報を急いで公開する実益はみあたりません。
冷静に対応を・・という姿は滑稽でもあります。

日本にだけ流行しないなんてこともインフルエンザという感染症の特徴を考えればありえません。

疑い段階で個人情報の危うくなる情報まで公開されたり布をかけて車に乗り込む様子がうつされてシロクロなど犯罪に使うような言葉で報道されてしまう今、現実的な対応ではないでしょうか。

臨床医の皆さんの作業もシンプルになり、病院でのメディア対応におわれずにすみます。
各種報道に寄りますと各県の検査体制が整い始めているので、同じようにする自治体も増えるのではないかと思います。

厚生労働省の今の対応も「暫定」となっているのですから(アタマいいですね)、
体制をかえる、あるいは現実に即した対応・柔軟にすべきは厚生労働省でしょうね。

米国もかなり対応の早いCDCの先を行き、公衆衛生に強い州から新しい提案がどんどん出ています。

----------------------------------------------------------------------
【新型インフル】都が「疑い例」を届け出ず すでに数人 (2009.5.6 01:29)

新型インフルエンザへの対応で東京都が、検疫後に感染の疑い」症状がある人を把握しているにもかかわらず、感染症法で定められた国への届け出をしていないことが5日、分かった。一般への情報公開もしていない。

都では「実害が出ない体制を整えている」としている。「疑い」段階で積極的な情報公開をしている厚生労働省の対応と異なる対応で、届け出や情報公開のあり在り方をめぐって波紋を呼びそうだ。

(中略)

都では
▽人口が多く「疑い例」段階で公表すると対象が多すぎて無用な混乱を招く
▽都の施設で6時間程度で感染の有無が確認でき、国への届け出は感染が確認されてからでも時間に大差はない
▽該当者と行動をともにした人に注意を促すなどの初期行動は進めており実害はない-といった理由から、国への届け出と情報公開を見送っている。すでに「数人」が対象になったという。
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090506/bdy0905060132002-n1.htm
-------------------------------------------------------------

念のため解説を加えておきますと、通常、東京都の感染症の情報公開はとても早く、集団感染が確認されたらすぐにホームページで公開されています(関係者はオロオロするまもなく対策にせまられる)。

地方衛生研究所にあたる東京都健康安全研究センターにはラボのほかに独立の疫学部があり国とは別枠の情報収集も日々行われています。

公衆衛生医師が不足し、今年は1名しか採用できなかった(募集は30名)そうですが、それでも他の自治体よりも医師の数は多いときいています。

こういう自治体で公衆衛生をしたらやりがいがあるかと、、、、(^^)。
研修医の皆さん、地域医療の研修ではぜひ保健所にも出かけましょう。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« S教授のいうことには | トップ | 懐かしのKentucky »
最新の画像もっと見る

毎日いんふぇくしょん(編集部)」カテゴリの最新記事