感染症診療の原則

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活動や発言に責任をもつこと

2010-10-17 | (ちょっと休憩)ほんとに休憩
ある授業でB型肝炎の話をたまたましたら、授業のあとに学生が「訴訟の応援をしている学生グループに参加しているんですが」と話しかけてきました。

で?

「お話を聞いていたら、よくわからないで活動をしているのかもと不安に・・・」

一般論として、「B型肝炎は針等の使い回しで感染するかもしれない」は正しいが、
同様に一般論として、「保育園や学校での集団生活、濃厚接触のある家庭内での水平感染リスクがある」ということも正しい。科学的な事実。

実態理解のためには疫学調査が必要。予防接種で、ということならば同じ地域の同じ学年の人達にたくさんの感染者がいるのか?ということがひとつの検討事項。

予防接種が原因だったということを証明することは難しい。その時点でとるべき対策は、安心して治療や検査が受けられるようにすることであり、今もリスクが発生しているので、その人達が感染しなくていいようにケアをすること、と説明。

熱く活動しているようだけど、活動している学生グループはこどもたちに予防接種を公費枠で接種できるようにしよう、と言ってますか?

「いいえ」

他の世代でも原因不明の肝炎患者はおり、原因不明な部分があるほど感染対策が難しいウイルスだからこそ、WHOは赤ちゃんにユニバーサルに接種しようといっているわけです。

新宿区や港区のように人口の1割が外国人という地域があったり、B型肝炎が大流行しているアジアからの観光客を受け入れている社会では、急ぎ検討しないといけないことです。

せめて、保育園に入る子の保護者には肝炎ワクチンの選択肢を伝える工夫があってもいいとおもいます。肝炎について発言する責任をよく考えましょう。

メディアのチープな正義感、一般市民のヒステリーは常にスケープゴートを求めるので、自分で調べて考えた方がいいよといいます。

かわいそうな患者さんとそれ以外をわけてしまうリスクもあります。
(エイズ問題で学んだことを生かしましょう)

安部英医師「薬害エイズ」事件の真実
武藤 春光,弘中 惇一郎
現代人文社

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と、オススメの一冊。amazonの書評もよく読んでみて。
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2 コメント

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Genotypeの心配は・・・ (千葉県 N)
2010-10-17 16:21:50
先進7カ国で幼少期にHBワクチンを打ってないのは日本と英国だけのようですので早急に検討する必要があるのではないかと思います。そこで
国産ワクチンで今後も良いのかということが懸念されますが、今使っている日本のHBワクチンはgenotypeが調べられるようになる前から造られているもので、あとで調べたらgenotypeCだったようです。いま都市部やMSMの間で流行中のgenotypeAに効くかどうかの検討は動物実験レベルでしかないようです。ただ、genotypeAの多い海外へ過去に輸出した国産ワクチンで失敗例がほとんどないことからおそらくは効くだろうとされているようですがこうした検討も本来は必要なのでしょうね。
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Unknown (編集部)
2010-10-18 00:48:08
たいへん参考になるご指摘ありがとうございます。

実は、この1年ほどですが、都内の性風俗産業で働いている若い女性たちでのHBV増加の話を現場の先生からきいています。
中国はじめ海外からのお客さんが増えたためと分析している人もいます。
(働く前に接種してほしいんですが、推奨されていること自体を知りません)

日本の女性で広がるということは、日本の男性にも広がり、母子感染も問題に、ということになりますね。公衆衛生系の人達とも共有が必要な情報です。
予防接種改善の話の中でHBVはあまり関心をもたれていないので注意が必要かもしれません。
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