感染症診療の原則

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病気や障害をイベントのネタにすることに疑問はないのか、という指摘

2009-12-17 | 非・悲・否・避「常識」
ある時期から「当事者ブーム」といわれる動きがあります。考え決めるプロセスに当事者が参加するきっかけになりましたし、関係者がその人たちの意見やニーズを聞いてみようと思う動機付けも生まれました。

そのような中、当事者から疑問視されるものも出ています。

エイズ関係でいうと「イベント化」です。

ある患者さんはこう指摘しました。長くなりますが紹介します。

「感染した自分にとっては健康や生命の話です。イベントのネタにされるのはたいへん悲しい。そこでは感染していない(と思っている)人たちが、楽しそうなイベントをまじえて活動をしているようです。他人事ではだめだといいながらそのイベント扱いそのものが“他人事”じゃないですか?」

「幸い治療の進歩のおかげで健康管理ができ、会社にも今までどおり通えています。よい病院・医師のもとでがんばっています。それ以上でもそれ以下でもないと思います。しかし、エイズをネタにした“イベント”や“活動”をみていると、とてもかわいそうな人、支援が必要な人、という前提でつくられています。感染したらたしかにたいへんです。イベントで音楽やダンス、ポスター展をすることで、その深刻さは伝わらないと思います。エイズとはそういう扱いの話なのだと誤解されませんか」

具体的な例として、今朝のニュースに北海道の高校生たちの取り組みがあります。
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町内の高校生が同世代の若者たちにHIVの感染予防を呼びかける初のイベントが11日夜、中央公民館で開かれ、バンド演奏やパラパラダンスなどを楽しみながら理解を深めた。
生徒たちが実行委員会を組織して取り組んだ「Live Act Against Aids(ライブ・アクト・アゲンスト・エイズ)」。
100人余が詰めかけたステージ発表では、生徒たちが性交渉をテーマにした劇を演じたほか、ホールロビーにポスターを展示した。
 実行委員長は「知識がないばかりに病気にかかり、将来の夢や希望を失ってほしくない」と切々と訴えた。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki/205350.html
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北海道はSexual healthの問題が数字としていくつもあがっていますが、HIV以前にもっと重視され、あるいはそれとあわせて取り組む必要があります。

各地に「エイズ文化フォーラム」という催しがありますが、イベント化問題を患者さんたちが早くから指摘していました。「クラミジア文化フォーラム、梅毒文化フォーラム、結核文化フォーラムはなぜないんですか?」

このようなイベントは1980年代や1990年代初期、つまり20年以上前にはたしかにあったのですが、現在のニーズとはずれていますし、誰に何を伝えるのが目的かがもはやとても曖昧です。

“エイズだけ独特”というような偏見をつくるリスクもあります。

多くの関係者は偏見差別を問題視しているものの、その語りや扱いがそもそも偏見をつくってしまわないか?を考えないといけない時代になっています。

知識がなくて感染したという人はほとんどいません。知識があっても感染予防は難しく、他の感染症予防とちがい、自分以外の他人との関係性も因子、という前提にたったうえで何ができるのかです。

あえて「エイズは特別に扱うべきだ」という言い方があるとしたら、それは「治療がある現在も、発見が遅れれば、治療がなかったら、死亡する」感染症であるということです。世界が別格扱いにする根拠はここにあります。
高額な医療費は社会全体にとって負荷になります。

特別対応が必要ならば、そこに切り込む緊急性の高いものに取り組むべきであり、行政や専門家が重要視して必要な対策をとってはじめて「ああ、この病気は自分や社会にとっても真剣に考えないといけないのだ」というメッセージになるのです。

3日寝ていれば治るインフルエンザにこれだけ多くの人が騒ぐのは(リスクコミュニケーションの理屈でいうと)、「自分や周囲も影響を受けるかも」感があることです。

イベントの風景も、ドラマチックな体験の語りも(手記を読むなど)は人をそこから遠ざけることを重視すべきです。

エイズをつかって脅し教育をすれば人は危険な行為をやめるだろうというような教育側の安易な下心は捨てましょう。(心理学の理屈によれば)恐怖による緊張はずっと続きません。怖いので考えないようにする、友達にはおきても自分にはおこらない話だろうという認知に切り替わります。

現在は中学校で避妊を教えていませんし、小学校や中学でエイズを教えてもクラミジアや梅毒・ヘルペスになるリスクは教えていません。地道に必要なことを教えれば、結果的にHIVそのものは予防されます。イベントやドラマな語りをしなくても。
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