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1月31日、朝9時。参議院議員会館の会議室に続々と衆参両院の野党議員を中心に、一部与党議員も参加して日本弁護士連合会から「共謀罪」「密告義務法=ゲートキーパー法」の問題点の説明を受け、熱気ある議論を交わしていた。有名になった共謀罪と違って、密告義務法=ゲートキーパー法・犯罪収益移転防止法は、国会議員の間でもほとんど知られていない。説明が進むにつれて、「こんな問題のある法案を『日切れ扱い』というのはひどい」「弁護士だけではなくて、他の業界団体がどのように『疑わしい取引の届け出義務』を受け止めているのか聞いてみるべきではないか」などの意見が相次いだ。野党4党の有志議員で連絡を取り「共謀罪・密告義務法対策チーム」を早急に立ち上げ、「日切れ法案扱い阻止」「関係業界からのヒアリング」などを中心とした活動を準備することで合意した。ところが、次の日の夕方になって、突然ニュースが流れた。政府側の方針転換が行われ、弁護士などに課した「届け出義務」を外して国会提出する予定なのだという。新聞記事はこう伝えている。

「犯罪組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐため、「疑わしい取引」の国への届け出を法律・会計専門家らにも義務づける「犯罪収益移転防止法」(通称・ゲートキーパー〈門番〉法)案の今国会への提出を目指している警察庁は1日、弁護士など「士業」と呼ばれる5業種を届け出義務の対象から外す方針を固めた。義務づけには、日本弁護士連合会が「依頼者の秘密を『密告』することは信頼関係に根ざす弁護士制度の根幹を揺るがす」と反発していた。

 欧米でも同種法案を巡り弁護士の守秘義務との衝突が問題になっているが、今回の案で、対象事業者が拡大し、資金洗浄の監視などに効果が期待できる。一方で、弁護士や司法書士、行政書士、公認会計士、税理士の5業種も義務づけの対象とすることを求めた国際標準との「落差」も論議になりそうだ」(2007年02月02日09時59分asahi.com)

記事中にもあるように、社会的に強い発言力を持っている日本弁護士会をはじめとした「5業種」に限定して「届け出義務」を外して、宅建業界をはじめとしたファイナンスリース業者、クレジットカード業者、貴金属等取引業者、郵便物受け取り・電話受け付けサービス業者などの「その他の業界」には課すという「例外措置」である。弁護士会の要求を「丸飲み」する形だから、参議院選挙前の不安定要因を一度棚上げにしておいて、朝日新聞の記事にあるように「国際的な資金洗浄対策を勧告し、対策を監視・審査する政府間機関「金融活動作業部会」(FATF)の審査を今秋、受ける予定だが、5業種を対象外とすることによって、勧告を一部履行していないと判断される可能性が高い」として、秋の「FATA勧告」を予定して「5業種棚上げ」を行って、来年になって「解凍」される可能性もある。

構図としては札年の通常国会で共謀罪で「民主答案丸飲み」をしようとした政府・与党の「小さく産んで大きく育てる」(とりあえず成立させて、厳しい内容は時間が経過してから法改正で対応する)という発想と重なるものがあるのではないだろうか。野党4党の間で、しっかり議論を重ねて監視していきたい。


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