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年末の日野自動車に続いて、格差社会・非正規雇用の実態調査のためにキャノン宇都宮工場に社民党調査団が出かけてきた。私も当日までメンバーとして登録していたが、国会日程で参加がかなわなくなり保坂事務所スタッフの大久保青志の報告をお届けする。(少しタイミングが遅れてしまいましたがお許しください)

キャノン宇都宮工場「偽装請負」調査団報告(大久保青志)

 2月28日、社民党としてこの間問題となっている「偽装請負」の実態調査を、キャノン宇都宮工場と栃木労働局について行った。調査団は保坂展人議員も参加予定であったが、予算委員会分科会の質疑と重なり不参加となった。

 参加者は、福島みずほ党首、渕上貞雄参議院議員、近藤正道参議院議員、菅野哲雄衆議院議員、党職員3名、他私たち秘書団の計10名の調査団となった。調査団はまず栃木労働局を訪れ、今回のキャノン宇都宮工場の「偽装請負」についての見解と、結成された労働組合キャノンユニオンの組合員の「申し立て」への対応について見解を聞いた。

昨年10月に結成されたキャノンユニオン宇都宮支部は、栃木労働局に対して「偽装請負・労働者派遣法違反」の申告をしたにもかかわらず、4カ月以上何らの返答もない状態が続いていた。

(労働局職業安定部長)「偽装請負」という事実が発生した時期はいつか、どのような経過なのか、現在調査を進めている段階です。法令違反かどうかの判断や事業者に対してどのように指導するのが適正かを含め、厚生労働省にも照会しながら進めている。調査は継続中であり、現段階で結論は出せない。
 また、「申し立て」から4ヶ月たっているのに、何の判断もできないのはなぜかとのお話だが、「申し立て」人も多数であり、事業者側の話も含め事実認定の確認に困難な部分も出てきている。「偽装請負」だという明確な判断は今できない。

調査団―なぜ、栃木局で判断できないのか、厚労省に伺いを立てなければ何も進まないというのはおかしい。宇都宮工場の職場の労働実態は「派遣」だったというのは明確でしょ。直接、工場での指揮命令系統があったのは事実ですよ。しっかり指導監督してください。要望します。

(職業安定部長)指導内容の中身については現在検討中ですのでお時間をください。

このようなやりとりだった。なにやらはっきりしない、キャノンに対して腰の引けた答弁であった。各方面からの圧力でもあるのかと疑りたくなってしまった。

調査団は、労働局よりキャノン宇都宮工場へ向った。新聞やTV局が工場正門前で調査団一行が工場内に入るところを待ち受けていた。工場内の会議室にてキャノン本社常務取締役ほか4名の管理職が対応。

調査団より以下の3点をキャノンに問い質した。

1、請負で禁止されている行為についての認識・見解について。
2、請負会社は、キャノンが混在して業務を行っていたと認めているが、会社の見解は。
3、請負会社は、キャノン宇都宮光学器機事業所で働く請負従業員の方々の業務内容は請負では限界があり、派遣での契約を求めていたと思いますが、見解は。4、雇用形態が、請負から派遣、そして派遣から請負に変わったのはなぜか。5、世界で三社しか製造することのできないといわれている、ステッパーの核となっている特殊なレンズは世界最高レベルの精度。この生産に携わっている、皆さんの働きぶりをどう評価しているのか。また、「派遣社員などは現在キャノンに勤務中の方はご遠慮ください」とのコメントがある社員募集チラシの配布について問題があると考えるがどうか。

(常務)「偽装請負」という認識に会社は立っていない。ただ法令違反として労働局より指導受けた事例は存在する。キャノンの関係事業所では2003年より05年までで7件ある。06年度は指導受けていない。
そもそも今日のような雇用形態になったのは、私たちの側の問題ではなく、バブル時代社員を集めようと思っても製造業の3Kといわれた現場では人は集まらなかった。会社は、北は北海道から南は九州まで人材募集しました。でもだめだった。
結果として請負・派遣会社に人材を求めるしかなくなった。基本的に請負でやってきたが、労働者派遣法の施行後に、ご指摘のような話が出てきており、会社として今のようにQ&Aがあれば法順守できたが、なかったので請負から派遣(1年間)、また請負という形態でやってきた。

 雇用形態が変わってしまうのはなぜかとの話だが、製造業の場合派遣は1年しか認められない。1年間現場でしっかり仕事を習得してもらい、その後請負にしている。派遣だから請負だからとキャノンでは低賃金で労働者を働かせているつもりはない。大分県では時給1050円を超えている。今後の雇用形態についてはすべて請負という形態にする予定。

 ユニオンの方が公聴会でステッパーのお話をしていたが、特殊レンズは現在機械で磨き上げているのであり個々の技術者の技量が特に評価基準となるようなものではない。正社員募集のチラシについては労働局より不適切との指摘を受け配布は取りやめた。宇都宮工場の従業員数の正社員・非正社員数の内訳だが、ほかに1工場ありそちら加えた内訳は、正社員1508名非正社員1316名(派遣530名請負733名グループ社員53名)です。

 調査団―会社側の認識としては、まったく問題ないとの認識ですか。「申し立て」のユニオンの皆さんの労働実態について問題ないとは言えませんよ。形はどうあれ実態は「偽装請負」という認識もないのか。今日は調査ですのであまり多くは申し上げられませんが、真摯な話し合いをお願いしたいと要望してこの日の調査を終えた。

以上だが、「会社は悪くない、悪いのは人材が集まらない社会の現状だ」といった認識と、「一流企業として法令順守で健全に労働者派遣法にのっとり雇用します。現在は違法な雇用実態がないので問題ない」という立場に終始する答えだった。また、「低賃金で働かせていない」とのことであったが、正社員と非正社員の賃金格差は、年間200万以上も違い、昇給もボーナスもない。
 調査終了後、市内にて記者会見を行い、福島みずほ党首は、「(ユニオンの)本人たちの雇用を守り、直接雇用への道を国会質疑を通して頑張っていく。社民党として、働くものの立場に立った派遣法の規制強化を今後求めていく」と述べた。
                       (キャノン調査団 大久保青志)


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