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 明日の衆議院法務委員会で「児童買春・児童ポルノ禁止法改定案」が審議入りする。私は、「子どもの権利条約」の批准前にジャーナリストとして衆議院外務委員会で参考人として意見を述べたり、「いじめ」についての取材も続け、子どもの人権侵害に対して警鐘を鳴らす本を何冊も書いてきた。国会議員になってからも、児童虐待防止法を提案する中心となり、二度の見直しの議論でも役割を果たしてきた。また、超党派の議員集団「チャイルドライン支援議員連盟」の事務局長をしていることは、政治の世界で「子ども」「児童」に関わる人たちには少しは知られている。だから、当然のこと「児童ポルノ」の被写体となって人権侵害されている子どもたちを放置出来ないという立場だ。

 ただ、1999年の「児童買春・児童ポルノ禁止法案」の立法当時から、すっきりしない思いを持ってきた。同じ時期、衆議院法務委員会を揺るがしていたのは盗聴法(通信傍受法案)であり、私は強くこれに反対してきた。また、2005年以来与野党対決の大きなテーマとなった「共謀罪」にも徹底的に立法の必要がないと主張してきた立場である。「児童ポルノ規制は当然でしょ」とした時に、「表現の自由」「内心の自由」を封じていく「蟻の一穴」にならないかという危惧が率直に言ってある。戦前の思想統制は、まず「エロ・グロ・ナンセンス」に対しての規制から始まったことを思い起こしたい。

 明日の主に与党の提案者に聞いておきたい論点をここにあげておく。

 与党案には、「何人も、みだりに、児童ポルノを所持し、又はこれに係わる電磁的記録を保管してはならない」と、児童ポルノの単純所持を禁止する規定がある。ところで「何人もみだりに」の「みだりに」とは、どのような意味なのか。

 辞書を引いてみると、

(1)分別なく行うさま。
(2)正当な理由や資格もなく行うさま。

 とある。「正当な理由」があって児童ポルノを所持しているというのも一般には考えにくいので、「分別なく」という形態をイメージしてのことだろうか。質問とりに来た法務省・警察庁に「みだりにってなんだろう」と聞いてみると、「うーん」と黙り込んでしまった。

 もうひとつ与党案には、「自己の性的好奇心を満たす目的で①児童ポルノを所持した者②児童ポルノに係る電磁的記録を保管した者」について「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という罰則が盛りこまれている。さて、「自己の性的好奇心を満たす目的で」という主観的要素をどのように立証するのか。これは、「心の中」を覗いてみなければならない。捜査は、密室での「自白」を求めることにならないだろうか。そもそも、外形的に表出しない内心の嗜好・嗜癖を処罰条件とすることは適当かという点も聞いてみたいところだ。

 今回の与党案では、漫画、アニメに対しての規制は見送られたが、検討事項とされた。そもそも、児童ポルノの被写体とされる被害児童の権利回復のために立法されたこの法律が、いつの間にやら「性的好奇心の有無」と「主観的な利用意志」により、犯罪化の拡張がされていないだろうか。処罰し、規制すべき対象は、被害児童の人権侵害を現に行う者たちであって、この規制・処罰によって被害児童を救出することが法の目的であることを忘れてはならない。

 今の空気は、「児童ポルノ」を論じる時に憲法上は保証されているはずの「表現の自由」や「内心の自由」を持ち出すのは、筋違いだという決めつけが横行しているように感じる。「規制論」に異論をさしはさめば、「児童ポルノ規制に反対なのか」と叩かれることを覚悟しなければならないので、政治の場で私とまったく同じ危惧を感じている人も、堂々と意見が言えなくなってきている。

 明日は、民主党案も同時に審議される。民主党案には、共有出来る問題意識もあるが、もっと聞いてみたいことがある。冷静で精緻な議論を展開することが、たとえ選挙前であっても求められるのが、刑罰法規の審議だということを忘れないようにしたい。

 明日の質問は、午後1時30分から30分間の予定。午後2時からの参考人質疑でも15時45分から15分間と、2回登板することになる。とっても重要な一日になりそうだ。


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