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 「たちあがれ日本」だそうだ。いったい、どこへ向けて立ち上がるのか。拍子抜けの党名を聞いて、「戦う政治家」を標榜した安倍元総理の硬直した構えを思い起こした。「憲法9条改正」「集団的自衛権容認」「国体護持」など、古色蒼然とした半世紀以上前の「自民党的復古主義」のカラーで、偏狭なナショナリズムに陥ることのないようにしてもらいたい。私の知る限り与謝野馨氏は、平沼氏とは色あいの違う「保守リベラル」的な政治家だったように思う。

 かつて新進党の時代に、羽田元総理らがつくった新党は「太陽党」と名乗った。また新進党の解党後は、「新党平和」(公明党系)や「民政党」「フロムファイブ」など次々と新党も次々と出来て、離合集散を繰り返した時期がある。政党の命名は、なかなか難しいものだ。
「新党さきがけ」(1993年)などは細川政権以降、大きな役割を果たしたし、自民党を飛び出した気概が党名にこもっていた。だが、「みんなの党」になると、NHKの『みんなの歌』ではないが党名自体は日常語の続きで、特段の主張はない。

「たちあがる日本」「たちあがろう日本」ではなくて、「たちあがれ日本」というあたりが自民党政治で重要閣僚を歴任し「今日の日本社会」に対して責任のある老政治家の目線の高さを表しているように思える。略称で「新党日本」と言ったら田中康夫氏に迷惑だろうし、「新党たち日」も語呂が悪い。「たちあがれ」は省略するわけにいかないから、「ただ今のは、『たちあがれ日本』の政見放送でした」という具合いになるのだろう。

 ただ、自民党の瓦解・液状化は、今回の新党騒動にとどまらないだろうと予想する。「みんなの党」は、「自民でもない」「民主でもない」という隙間で、支持を伸長させた。「ぼくらの党」「新党われら」「あきらめるな日本」などと、似たような政党が後発で名乗りをあげ、いくつかが合併して「新・自民党」として、自民党から逃げた票の受け皿をめざすことも十分にありえると思う。「たちあがれ日本」の政策発表を見なければこれ以上は言えないが、誰のどの様な思惑が状況を引っ張っているのかにも注目していきたい。

名張毒ブドウ酒事件、最高裁が高裁差し戻し

 最高裁は「名張毒ブドウ酒事件」を高裁に差し戻した。死刑囚としてとらわれている奥西勝さんは84才と高齢である。人間の寿命が永遠でない以上は、奥西さんを即、仮釈放すべきだ。こうして、無限に時間がある裁判官の手によって誤判が続き、その犠牲となった確定死刑囚は物理的な生命の限界まで追い詰められていく。波崎事件の富山常喜さん。人工透析をしながら、「身の潔白を晴らしたい」と言いながら獄死された。また袴田巌さんも、精神的に追い詰められながら40年以上投獄をされたままだ。

 名古屋高裁の「再審開始取り消し」を取り消したとはいえ、また「差し戻し」では忸怩たる思いが残る。「疑わしきは被告人の利益に」という原則はどこかに消え、「推定有罪」の空気が刑事裁判に濃厚だからこそ、再審の扉が開かない。わが死刑廃止議員連盟の同志だった千葉景子法務大臣は、今こそ人道的措置を取るべきではないか。国家の手で冤罪の罠に落ちて、獄死したり、処刑を受けたりすることを政権交代後には起こさないためには、再審無罪を訴えても何度も却下されてきた「名張毒ブドウ酒事件」のようなケースは、司法の構造的な劣化を示している。

 先の「新党」に戻ろう。新党を立ち上げた与謝野さんは、法務委員会で長い間一緒だったが、「死刑冤罪事件」などについては、積極的な問題意識はなく、どちらかと言えば、法務官僚に同調的だった。「保坂君、死刑廃止問題を広げたいなら亀井静香に会いに行けばいい。彼は筋金入りの死刑廃止論者だ」などと教えてくれたのは与謝野氏だったが、彼自身が「確定死刑囚の人権問題」などに興味を示したことはほとんどなかった。


「国家の権威」のためには、たとえ個人の尊厳が踏みにじられても絶対に捜査の過ちを認めず、受刑者の訴えは牢獄の中に閉じ込める。そんな「日本の官僚統治」に未来はない。たちあがる前に、「日本という木」が大地にのばしている「根の病状」を掘り下げて診断することが重要だと思う。「愛国心」と言う時に、「冤罪死刑囚を平然と獄死させる国家権力の過ち」にどう対処するかが試金石になる。

 小泉純一郎氏にも、この種の問題を問うたが、真剣に考えたことがないようで、法務官僚の作文を棒読みするだけだった。昨日書いた「中国での邦人処刑問題」や「冤罪の可能性のある高齢の死刑囚の人道的処遇」などが、大きな議論にならない政治は「幅」「質量」ともに品質が落ちている。

 今日は「新党」と「毒ブドウ」と結びつけて考えてみた。

  


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