大騒ぎになった年金記録問題だが、国会審議によって徐々に明かされつつある事実は驚くべきものだ。昨日の10分間の厚生労働委員会での質疑で、この3カ月間、執念をかけて調べてきた社会保険庁・社会保険業務センターがワンビシ・アーカイブに預けている旧台帳の行方について決定的な証言が社会保険庁長官から飛び出した。さっそく、記者会見をひらいた結果、サンケイ新聞と日経新聞が報道してくれた。
年金紙台帳 社保庁、保管状態把握せず 1365万件、一部は紛失か
(11月22日8時1分配信 産経新聞)
年金記録紛失問題で、「旧台帳」と呼ばれる手書きの紙台帳のうち、磁気テープ化された1365万件について、平成18年4月からの1年半の間に社会保険事務所が照会した2746件のうち、記録を管理する倉庫会社からの回答が半数しかなかったことが21日、社会保険庁の資料で分かった。社保庁は「社保事務所が、保管されていない記録まで照会した可能性が高い」と説明するが、1365万件が本当に保管されているかすら把握しておらず、「一部を紛失した可能性もある」との指摘も出ている。21日の衆院厚生労働委員会で社民党の保坂展人氏が指摘した。
(中略) 紙台帳は、加入者や受給者の勤務先を特定するのに必要。1365万件の一部が紛失していたとすれば、「手書き台帳はすべて保管されており、基礎年金番号に未統合の約5000万件の照合に問題はない」としてきた社保庁のこれまでの説明が根底から覆り、記録の照合作業に支障が出る恐れもある。
(引用終わり)
これまで、磁気テープ化された「1365万件」は調査の対象外だった。私たちは、当初から保管状態を問題とし、「門前払い」をされた倉庫視察まで行おうとした。社会保険庁は、私たちの質問になかなか答えようとせず、いたずらに歳月は流れた。日々、事件やニュースは数多く6月から7月にかけて噴出した「年金記録問題」への関心も薄れ、社会保険事務所にも平穏が戻り始めた。そして、頃合いを見はかるようにして、舛添厚生労働大臣は白旗をあげ始めた。これまで「最後の1円までやる」と大向こうを切って言ってきた「宙に浮いた5000万件」の年金記録の照合だが、「参議院選挙のスローガンで意気込みを示しただけ」と従来の方針を転換したのだ。
該当者不明の年金記録、「名寄せ」完全実施は困難…厚労相11月22日1時56分配信 読売新聞
舛添厚生労働相は21日夕、厚生労働省で記者会見し、該当者不明の約5000万件の年金記録について「最後の1円までやるというのは、ある意味で(参院)選挙のスローガン。そういう意気込みでやるということだ。あらゆる手を尽くしても2%残ったというのは国民に報告し理解をいただくほかはない」と述べ、すべて記録の持ち主を特定することは困難であるとの見方を示した。
(引用終わり)
登山で言えば、ようやく登山道をみつけたという段階に立った。さっそく今日は質問主意書を出して、論議を深めていくことにしたい。
1365万件の年金記録の真相解明に関する質問主意書
昨日、衆議院厚生労働委員会において、社民党年金対策プロジェクトで調査を進めている「厚生年金被保険者記録・旧台帳」の保管状況について重大な疑義があると舛添厚生労働大臣・坂野社会保険庁長官に対して、質疑を行った。この問題については、10月11日の予算委員会において舛添大臣は、「誠心誠意、一生懸命、今これは確認作業中ですので、こういうことを全部全容を明らかに政府をあげてやります」と決意を語ったが、調査は遅々として進まない。年金記録への信頼回復のために重大課題をこれ以上、先送りすることは出来ないので、ここに緊急に質問しすみやかな解決を求めたい。
1、社会保険庁(社会保険業務センター)が「年金記録(旧台帳分)を」ワンビシ・アーカイブに預けいれたのはいつか。契約締結日と契約金額を明らかにされたい。
2、社会保険庁が契約締結以降、ワンビシ・アーカイブに支払った保管料・手数料を各年度毎に明らかにされたい。
3、契約締結時に、社会保険庁とワンビシ・アーカイブとの間に「寄託書」や「物品預かり書」など年金記録(旧台帳)の数量を明示する文書を交換していないのか。
4、平成15年の契約書の4条「受け渡し」の部分には、社会保険庁とワンビシ・アーカイブとの間に「寄託申込書」を介して保管状況の確認をすることになっている。初年度の契約締結時には「何をいくつ預けたのか」という基本的な事項の確認はなかったのか。あるいは、あったかどうかも廃棄処分をしているから判らないのか。
5、10月11日の予算委員会、11月21日の厚生労働委員会の場で社会保険庁は「1365万件」の年金記録(旧台帳)の存在について「基本的には倉庫にあると考えているが、本当にすべてを保管しているかどうか確認・作業中」「精査中」と答弁している。この調査は、年内に終了するのか。
6、10月11日の予算委員会において、舛添大臣に問い質した「83万件の旧台帳」の保管状況(「裁定台帳20万」「農林共済移行分27万」「廃棄51万「その他12万」=社会保険被保険者記録等事務処理要領・社会保険業務センター」の行方について聞きたい。舛添大臣は、「『廃棄51万件』これがポイントですね。探してみたけれどありません。保管されていることが確認できていないし、今後とも見つかる可能性は極めて少ない」とあっさりと述べた。これまで、数カ月にわたって「確認中」「調査中」と聞いていたが、どのような手順と人員、時間を費やして調査したのか明確にされたい。
7、10月11日予算委員会で舛添厚生労働大臣は、年金記録(旧台帳)の記録について、「これらの記録は、昭和32年10月1日現在において70歳を超える者で、同年10月1日までに資格喪失し、その後取得をしていな者云々ということで、簡単に申し上げますと、年金受給に結びつく人はほとんどないだろう」と答弁している。昭和32年当時、「喪失台帳」に区分けされていた人は70歳以上だと理解されているようだが、間違いではないか。
8、11月21日の厚生労働委員会で、社会保険庁がワンビシ・アーカイブに照会した年金記録(旧台帳)について平成18年度から19年度9月までに2746件策出依頼をし、策出されたのがぴったり半数の1373件だったと答弁した。事実か。
9、策出された1375件の旧台帳には、記録の不備・記載事項の判読不能などの台帳はいくつあったか。また旧台帳を照会した理由で、「記録確認」「事業所確認」「脱退手当」などの項目はそれぞれいくつだったか。「その他」に分類された記載には、どのような特徴があったのか。
10、政府はこれまで、磁気テープ化された「年金記録」(旧台帳)は、紙台帳も全件保管してあり問題はないという立場で調査を進めてきた。しかし、今回明らかになったように、そもそも「保管件数」が判然としない状態が続き、また旧台帳(紙台帳)確認のために、社会保険業務センターから照会しても半数は探し出せないという状況では「1365件」の実態解明は欠かせない作業となる。
倉庫や社会保険業務センターへの議員視察の受け入れと、共同の検証・調査が必要との認識はないか。
11、政府は、私たちの「年金記録」(旧台帳)の保管状況への質問をどのように受け止めているのか。その意義と意味に理解はあるか。
右、質問する。
(質問主意書終了)
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