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八ッ場ダム・フォト紀行記
公共事業チェック
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2009年10月03日
すっかり有名になったT字型の橋桁の下を走るJR吾妻線特急列車
9月29日から30日にかけて八ッ場ダム建設予定地を訪れた。一昨年の12月に訪問した時とは様変わりしている。いつも閑散としていた八ッ場館は、信じられないほど多くの車が駐車し、視察団・観光客でにぎわっている。政権交代後に「八ッ場ダム」がにわかに政治焦点化したことの現れだろう。観光バスのフロントには「都議会公明党」とあり、前の日には「自民党千葉県議団」が視察したそうだ。10月2日には、自民党谷垣新総裁の視察団が現地を訪れるなど、旧与党勢力が張り切っているようだ。
「首都圏の治水と利水のために八ッ場ダムは必要だ」とこぶしを振り上げる自民・公明という旧与党勢力だが、8月30日総選挙での「政権交代」は、まるでなかったかのような発想だ。頭の先から爪先まで「ダム建設の大義」をふりかざす国土交通省河川局のダム官僚たちと一心同体で騒ぎ立てる「八ッ場ダム」だが、徹頭徹尾、住民の政治利用なのではないかと感じる。
JR吾妻線の大鉄橋工事。手前はサイのツノにも似て、昔子どもたちが熱中したゾイドという組み立て機械獣のイメージだ。吾妻線は、今でも雨が強くなると運休する路線で、ダム計画が中止されてもより安全で安定した線路の付け替えは必要だった。
八ッ場ダムのダム湖の始まる上流側に、東京電力長野原取水口がある。ここには、小さな堰があり吾妻川の水を蓄え相当量を発電用水として取水口に吸い取らせていく。この水質は、そのまま完成すれば八ッ場ダムのものとなる。
あまりきれいではないことに気づく。右が吾妻川の下流にあたり、奥が東京電力長野原取水口である。上流の嬬恋村には大規模なキャベツ畑があり、また酪農も盛んだ。また、草津温泉などの多くの観光地もある。川には、大量の栄養塩類が流入することになる。藻が増殖し、悪臭が漂うということになる。この水質問題は、ダム観光の大きな障害となる。
これは吾妻川下流側から撮影した東京電力長野原取水口だ。ほとんどの水が取水口で止められていることが判る。小さなダムだと考えると、この水質が問題となる構図が判る。総貯水量1億7500万トンの八ッ場ダムは、夏場は洪水調整のために水位をぐんと下げて2500万トンにする。藻の異常繁殖がしやすい夏に水量が減ることから水質悪化も心配される。
水質で言えば、かつて吾妻川が「死の川」と呼ばれていた強酸性水質の問題がある。そこで、1952年に旧建設省が発案した八ッ場ダムは、住民の激しい抵抗で頓挫した当初、この強酸性水質問題があった。ここを突破したのが1963年(昭和38年)に完成した中和工場だった。そして、石灰生成物の受け皿として品木ダムだ。国土交通省のhpから見てみよう。
[引用開始]
品木ダム水質管理所では、吾妻川の自然公害に対処するため、365日24時間休むことなく水質改善事業(中和事業)を実施しています。
草津白根山に起因する酸性河川(湯川、谷沢川、大沢川)によって吾妻川は魚も棲まない「死の川」と呼ばれてきましたが、品木ダム水質管理所が行っている中和事業によって、現在では、魚類が生息する川に生まれ変わっています。
→続きは
品木ダム水質管理所「中和事業について」
[引用終了]
草津中和工場から湯川に石灰ミルクを投下している現場。一日50トンという量の石灰にも驚くが、説明されなければ一目見ても判らない。
浚渫船「草津」がパワーシャベルですくい取っているのはコールタールのような色をしたヘドロである。このヘドロはポンプで湖面をパイプを通って抽送されて、待ち受けるダンプの荷台の上に吐き出される。このダンプの荷台に乗ったヘドロは近くの工場で「脱水・圧縮」して近くの捨て場に移動する。「山から削った石灰を山に返す。究極のリサイクルです」と8年前、水質管理所の官僚は胸を張った。
(つづく)
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