今日から3連休、天気に恵まれて行楽に出かける人や、ゆっくり過ごしている人も、相変わらず仕事の人もいるだろう。私は、やや減速しながら地域の福祉作業所のお祭りに顔を出したり、普段は出来ない雑誌からのインタビューを受けたり、打ち合わせを重ねている。昨日に続いて、国会で明らかになった内閣府の「やらせ」文書について考えてみたい。いったい、どんな文書だったのだろうか。じっくり読んでみてほしい。問題となったFAX文書は2通ある。今年の9月2日(土)に八戸プラザホテルで開催された『教育改革タウンミーティング 八戸』には、小坂憲次文部科学大臣、梶田叡一兵庫大学学長・中央教育審議会委員、ジャーナリストの細川珠生さんが登壇しそれぞれ発言をした後で、会場から意見を求めてディスカッションする形で準備されていた。この会場で、政府が推進する教育基本法改正案に賛成し、期待する意見が飛び出すように「官製やらせ」が仕組まれていたというわけだ。
[文書1]
ファクシミリ送信票 三八教育事務所
送信先 ■■■■■中学校 ■■■■校長殿
発信者 三八教育事務所
発信内容 タウンミーティングの質問のお願い
連絡事項
いつも大変お世話になっています。
多忙の所、誠に申し訳ありませんが、御協力をお願いします。
当日に、②の質問をお願いします。
質問者のお名前をお知らせくださいますよう、よろしくお願いいたします。
タウンミーティング八戸質問項目案
① 現在の教育基本法もすばらしいものだと思いますが、情報化、核家族化、価値観の多様化など、これだけ社会情勢が目まぐるしく変化している中で、やはり、時代に対応すべく、教育の根本となる教育基本法は見直すべきだと思います。まずは、早く教育基本法を改正して、それから、しっかりと腰を据えて教育改革に取り組むべきだと思います。大臣のご説明では、教育基本法を改正した後、教育振興基本計画を策定するということでありました。子どもたちは日々、成長しています。子どもたちの未来のために、我々大人の責任として、子どもたちに最善の教育が与えられるよう、社会全体で取り組んでいかなければないけないと強く感じています。
② 教育基本法の改正案について、「人格の完成」を目指すのはもちろんですが、「公共の精神」や「社会の形成者」など社会の一員としてという視点が重視されていることに強く共感しています。個の尊重が「わがまま勝手」と誤って考えられているのではないかという気がしてなりません。教育基本法の改正を一つのきっかけとして、もう一度教育のあり方を見直し、みんなで支えあって生きていく社会、思いやりのある社会の実現を目指していくべきだと思います。
③ 教育の原点はやはり家庭教育だと思います。残念なことに、親が親になりきれていない状況も目に付きます。教育をめぐる現在の様々な問題は、その多くが家庭教育に原因があるのではないかと思います。先ほどの大臣のご説明にあったように、新しい教育基本法に「家庭教育」の規定が追加されることは本当に大事なことだと思います。まずは、親がその責任をしっかりと自覚すべきだと思います。また、学校、家庭、地域が連携・協力することも重要です。教育は学校だけではできません。学校ばかりに責任を押し付けたり、人任せにしたりせず、みんながしっかりと自分の役割を果たして、みんなで子どもを育てていくという認識を共有することが必要だと思います。
[文書2]
FAX送信票
平成18年9月1日
受信者 ■■■■中学校■■■■殿
発信者 青森県教育庁教育政策課
情報広報グループ
通信欄
いつもお世話になっております。
「タウンミーティング」に係る依頼発言について
別紙のとおりお願いがありますので、御協力くださるようお願いします。
■■■■中学校■■■■校長殿
いつも大変お世話になっております。
このたびは、タウンミーティング開催にあたって発言者を選んでいただき誠にありがとうございます。
さて、文部科学省(内閣府経由)での依頼発言者について、内閣府から以下のとおり発言の仕方について注意がありましたので、発言を引き受けてくださったPTA会長さんにお伝えいただきたいと思います。
○依頼発言についての注意事項について
・できるだけ趣旨を踏まえて、自分の言葉で。(せりふの棒読みは避けてください)
・(発言していただく内容は別紙のとおりで、②についてです)
・「お願いされて・・・」とか「依頼されて・・・」というのは言わないで下さい。(あくまで自分の意見を言っている、という感じで)
また、当日の受付で本人を確認し、文科省依頼の発言者については文科省の担当者が後を追っていき、座席の位置を確認します。
なお、■■■■さんは『文科省依頼』に該当していますので、よろしくお願いいたします。
担当:青森県教育庁教育政策課
情報広報グループ
(衆議院教育基本法特別委員会 共産党 石井郁子議員提出の資料)
国民の声は、なんと文部科学省・内閣府が作っていたという舞台裏が分かる。発言原稿を確定して発言者も決めたが、あわてて「やらせ」がバレないように「棒読み」をやめて「自分の言葉で話すように」と注意し、また「頼まれて」などと言い出すのではないかと危惧した様子が見て取れる。当日の内閣府HPに記録されている発言要旨を見ると、③に近い発言が記載されている。
「教育の原点は家庭教育だと思うが、家庭の教育力は低下している。教育を安心と温もりある場にすることを国民全員が願い、知恵を出し合っていくべきだが、国の体制はどのようになっているのか。教育基本法案には、家庭教育の規定が追加されており、大変期待している。教育は、学校、家庭、地域がその役割を明確にし、いろいろな取り組みをしていかなければいけないが、詳しい政策があればお伺いしたい」(主婦)
②の発言が実際にどのようにされたのかまではわからないが、「隣組」体制が出来つつあると書いてきたのも、あながちオーバーではないということが分かるだろう。戦前の「軍事統制型社会」と違うのは、小泉劇場下のメディアを活用した「疑似参加型社会」だということだ。疑似要旨を読むと、おそらく圧縮されたのではないかと思える「教育基本法は変える必要はないと思います」という発言も記載されている。しかし、少数意見として記載されているのみで、次のような会場からの発言が全体の議論と絡み合っていく。
教育基本法案を読み、これを実行するのは自分たちだと思った。地域の教育については、自分たちで決めていかなければ責任は持てない。預ける親として、預かる社会の一員としての住民の意思が、地域の教育の組織に反映されるために、国はどう考えているのか。また、社会教育、生涯教育が軽んじられているようだが、大切な分野だと思う。(主婦・児童館館長・市社会教育委員)
教育基本法案の教育目標の中に「我が国と郷土を愛し」とあるが、愛するのは当然であり、さらに「我が国、そして故郷を誇る」ような心を育てる施策を講じてほしい。幼児期の教育は大切であるが、幼稚園の教育はどのように変わるのだろうか。また、幼稚園の先生や保育園の保育士の力量を向上させるため、どのような研修が検討されているのか。(主婦)
当然ながら、これまで全国で「教育改革」をテーマに行われてきたタウンミーティングに同様の「やらせ仕込み」があったのではないかと、私たち野党は内閣府に徹底調査を要求している。どのような背景があったのか、来週には幾分は分かってくるだろう。官僚が作文を書いて、学校長がPTAの役員に依頼して、内閣府から発言内容と態度について指導がある。これって、全体主義国家とどう違うのか。自由民主党と公明党の3年間70回の合作作品である「教育基本法案」を税金でほめたたえる自主性を装ったタウンミーティングの「やらせ」を許してはならない。
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