久しぶりの「共謀罪」に反対する野党共闘が動き出した。野党4党の有志議員で、明日11時より議員会館で、共謀罪の問題点を共有し議論を深める勉強会を行う。この共謀罪については、05年秋の法務委員会から1年半にわたって「国民的な関心事」にまでなり、何度かの強行採決の危機を経て現在に至っているが、この通常国会も「参議院選挙後に先送り」するかどうかは定かでない。これまでも、関心のある読者はすでに十分御存知のように、「共謀罪、今国会断念へ」という新聞記事は裏返せば「野党と反対運動を鎮静化させて、奇襲的に成立させよう」という作戦だった。たしかに、参議院選挙が近づいているという状況の中で無理なことはしづらいが、国民の不安を増長するようなテロ事件が起きれば論戦の焦点はスッ飛ばして、政府原案だって通す危険性がある。加えて、自民党小委員会で「対象犯罪の削減」という案がまとまりつつあるようで、「テロに甘い国として、国際社会で恥をかいている」などの正確ではない論調も起きてくるかもしれない。
共謀罪の対象としているのは、金銭的利益を対価として求める「国際組織犯罪」の防止であって、爆発物・核・生物化学兵器などの無差別殺戮や大量殺戮に対抗する法律は別に存在する。現実に、通常国会での文部科学委員会には「核テロ」を防止する法案が提出される予定である。金銭的利益を対価とする「国際組織犯罪」というのは、宗教上・政治上の信条から準備されるテロ行為とは区別されている。にもかかわらず、自民党の議論は、「共謀罪という名前が悪かった。これからは、『テロ組織犯罪謀議罪』と呼ぼう。もう共謀罪という言葉は使わない」というスリカエを狙っている。たしかに、「共謀罪に反対する」とは言いやすいけれど、「テロ・組織犯罪謀議罪反対」とは言いにくい。けれども、日本の法体系では「共謀罪」及び共謀罪と同義の「陰謀罪」が存在する以上、やはり「共謀罪」と呼ばなければならない。
1999年の盗聴法をめぐって与野党が激突した時に、法務省が新聞社をまわって「盗聴法ではなく、通信傍受法という正確な呼称を使ってほしい」と言い回ったことがあった。効果は如実に現れて、新聞の見出しは「通信傍受法」に変わった。その時お成功体験に味をしめているのか、要警戒である。また、明日の議論では、アメリカ政府が留保をした理由となったアラスカ・オハイオ・バーモントの3州において共謀罪が限定的にしか存在しないことについて、外務省が「連邦法が全犯罪を網羅しているので共謀罪が適用されない犯罪は理論的には存在するが、実際にはほとんどない」という「奇説」について、アメリカの事情に精通する論者にも証言をしてもらいたいと思っている。
以下のように、新聞報道もされている。
反「共謀罪」で勉強会-野党4党、共闘復活視野?(3/4 15:41更新)
「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法などの改正案に反対する民主、共産、社民、国民新の野党4党の有志議員が勉強会を立ち上げ、6日に初会合を開く。民主党の平岡秀夫、共産党の仁比聡平、社民党の保坂展人各氏ら約20人が参加する予定。今国会の野党共闘は共産党を除く3党が中心で、共産党は独自路線を強めている。参加予定の民主党議員は「私的な会合だが、与党が共謀罪成立に向けごり押しする事態になれば、4党共闘を復活させる中核になる」と期待を寄せる。
勉強会は、学者や弁護士会などからヒアリングを行うほか、国会対策などについても協議する予定。継続審議になっている政府案とともに、対象犯罪を絞り込み「テロ等謀議罪」と改名した自民党修正案の問題点を探る考えだ。(富山新聞)

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