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12日付の北海道新聞が、『そもそも必要だったのか』という社説を掲げた。ことにこの社説を読んで「そもそもこの国会は何だったのか」と思った人も多いと思う。社説に『国連の立法ガイドに書いてあること』も紹介されていて、ブログから「社説」に紹介されるのも、この法案に対しての世間の関心の高さを反映していることと思われる。政府案の廃案、継続を議決する最終日が近づいてくる国会で、もう一度、議論を戦わすべき時が来ている。まずは、社説を紹介しよう。

「国会審議でさまざまの問題が明らかになり、国民の不安が高まった。与党は再修正案にも野党が応じないのをみて、民主党案を丸のみする奇策に出たが、実現しなかった。これほど、ぼろぼろになった法案は廃案にするのが筋だが、新しい立法が不要だとの見解もでてきた。そもそも立法が必要かどうか、原点に戻って検討するべきだ。
 最近、野党議員が条約の法制化にあたって国連が2004年に作った立法ガイドを翻訳公表した。それによると「国内の法的な伝統、原則と一致するようにしなければならない」とある。「適切な法的な概念を持たない国」では、共謀罪制度を導入せずに、組織犯罪に対して効果的な措置を講ずる選択肢が許されている、という。
 日本には、殺人などの予備罪や爆発物使用共謀罪、実行犯以外の共謀者も摘発できる共謀共同正犯という判例理論などがある。これらで処罰すれば、共謀罪を設けなくても良いという見解が専門家から示されている。
 政府は、国連の立法ガイドを十分に吟味、検討しないまま、昨年10月に法案を再提出し、新規立法を自明のように推進してきたのではないか。各国が国内法で処罰対象とする重大犯罪の詳しい内容も明らかにしてはいない」

『立法ガイド』については先に紹介したが、アメリカNY州の弁護士資格も持っている喜田村洋一さんは、51パラグラフの問題部分を「この選択肢は、共謀または犯罪結社に関する法的概念を有しない国においても、これらの概念を導入を強制することなく、組織的犯罪集団に対する実効的な措置を可能とする」と翻訳する。とすれば、私たちはこの数カ月、寝ても覚めても「共謀罪」騒動にふりまわされた日々は何だったのかと自問したくなる。外務省は、この『立法ガイド』について外務省の見解はどうなのだろうか。

外務省の51パラグラフの仮訳は次の通りである。「これらのオプションは、関連する法的概念を有していない国において、共謀又は犯罪の結社の概念のいずれかについてはその概念の導入を求めなくても、組織的な犯罪集団に対する効果的な措置を取ることを可能とするものである」

何度か読まないと意味がつかめない訳文だが、「いずれかについては」とあるので、「共謀」又は「犯罪の結社」のどちらかは導入しなくていいということになる。自慢じゃないが、英語力はほぼゼロに近い私としては、喜田村さんをはじめとして何人かの専門家に「読解」してもらって検証する作業をお願いした。海外立法研究の専門家、翻訳家など誰もが「これらの概念を導入することなく」「いずれの制度も導入することなしに」と喜多村さんの訳とほぼ同一だった。つまり「共謀」も「結社」も導入せずに、ということだ。

外務省に先週、問い合わせた。電話をすると「ハイ、人道人権課です」と返事があった。「国際組織犯罪室にかけたんですけど、間違えたかな」と言うと、「いえ間違いではありません。対策室はここにあります」というからびっくり。外務省の人道人権課がなぜ組織犯罪対策室を従えているのか、国連人権理事会理事国となる国がそもそもあるのかと思いながら、仮訳が正しいのかどうかを訊ねて文書で回答をもらった。

国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)が作成した「国際組織犯罪防止条約を実施するための立法ガイド」のパラグラフ51のうち、ご指摘の部分(The options allow for effective action organized criminal groups,without requiring the intruduction of either notion-conspiracy or criminal association-in States that do not have the relevant legal concept.)は、The optionsを主語とする文章である。ここにいうThe optionsとは、すなわち、第五条1(a)(i)にいう、いわゆる共謀罪と第5条1(a)()にいう、いわゆる参加罪という二つの選択肢を指している。したがって、共謀罪または参加罪のいずれかを選択して定めなくてはならないとした上で、ご指摘の文章は、共謀罪に関連する法的概念を有していない国が参加罪を選択した場合に、他のオプションである共謀罪を導入する必要はなく、また参加罪に関連する法的概念を有していない国が共謀罪を選択した場合に、他のオプションである参加罪を導入する必要はないことを意味するものである。(平成18年6月8日外務省国際組織犯罪室)

つまり、従前の「仮訳」の正当性を説いているわけだ。実は『立法ガイド』問題は、この51パラグラフの翻訳に端的に現れてはいるが、この箇所だけの問題ではない。政治的な大テーマとなり、この国会最大の与野党対決法案となった共謀罪の概念が、どのような前提で導入されたのか。そろそろ、議論を絞りこんで決着をつけていくべき時ではないか。

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