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 昨日5月27日の区長定例記者会見は、熱気のこもるものとなった。午後2時から1時間の会見が終わった後でも、午後5時過ぎまで何社かの記者が残って追加取材をしていた。それは、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長を訪ねて、懸案の「待機児童問題」について意見交換をした内容に大きな関心が集まったからだ。「株式会社」の保育事業の参入について、どのような制度設計をしているのかを明確に知ることが目標だった。厚労省には先週末に送付していた疑問点に従って話を聞いた。以下、27日の記者会見の発言メモを掲載することにする。

[5月27日 世田谷区長定例記者会見]

  5月15日に厚生労働省より送付された「新制度を見据えた保育所の設置認可等について」という文書に関連して、本日の午前中に、厚生労働省に行き、意見交換をしてまいりました。
 

① まず、保育施設整備のための補助制度である「安心こども基金」の今後について、考えを聞きました。

 <回答>厚生労働省としては、基本的には社会福祉法人に対する現行制度は維持しつつも、株式会社に対しては、開設時の一時的な補助ではなく、減価償却費として給付を設定する手法など施設整備費を支援していく制度を整備するとのことです。これにより、株式会社に対しても一定の財政支援が行われることが確認できました。

② 次に、株式会社の場合は、倒産などによる閉園のリスクがあることへの対策について、考えを聞きました。

 <回答>これについては、立入検査や帳簿書類を提出させるなど自治体のチェック機能を強化することにより対応していきたいとのことでした。株式会社に対しては、各自治体が十分なチェックを行うということになります。

③ 3つ目に、質の高い保育を確保し維持していくために、区独自に、株式会社などに対して、設置・運営に際しての義務・基準などを課していく仕組みをつくることについて、考えを聞きました。

 <回答> 保育の質を確保するため、積極的に取り組んでもらいたいとのことでした。

④ 保育待機児童の定義の解釈が自治体によって異なっていることについて、定義の明確化について考えを聞きました。

 <回答> 潜在的な保育ニーズを含め、的確にニーズが把握できるようにしていきたいとのことでした。

 区としては、今回確認した厚生労働省の考え方などを踏まえて、株式会社の取扱いなどについて、早急に検討をしてまいりたいと考えております。

[以上]

  すでに、ウェブ連載「太陽のまちから」の「株式会社参入で保育の質は保たれるのか」で明らかにしているように、世田谷区で100名規模の認可保育園を整備するためには、区が土地を提供しても建物等施設建設費が2億4千万円ほどかかる。社会福祉法人の場合は、国の「安心・子ども基金」から半分、都から4分の1、区から8分の1の公的補助が出るので、事業者負担は8分の1の3000万円ということになる。この施設整備費は株式会社には支出されず、公的補助はゼロとなる。事業規模の大きな株式会社以外に、もっぱら保育事業に専念して運営していこうとする株式会社にとってはスタート時点で大きなハンディを負うことになる。

 一方、平成27年以降に始まる新制度の下では、従来までの「施設整備費」が全面廃止でゼロになるという見解を専門家や保育問題ウオッチャーから聞いていた。すると、資金調達力のない社会福祉法人の多くは保育事業に参入出来ないなる状態も想像出来る。こうなると「株式会社が参入するかどうか」という話題は反転する。

 石井淳子局長によると、平成27年以降も「施設整備費への公的支援は全廃しない。従来の社会福祉法人が施設整備に関して受けてきた公的支援を交付金によって受けるか、建設時に交付金による支援を受けない場合は、減価償却費の公費負担分相当額を給付に上乗せするどちらかの方式を選択してもらいます」とのことだった。社会福祉法人等は前者、株式会社等は後者の扱いになることが予想される。

 もうひとつのポイントは、世田谷区で事業運営を希望する保育事業者に行ってきた厳しい審査を、平成27年以降も株式会社も含めて継続していくことが出来るかどうかだった。これについて厚労省は、法改正でこれまで以上に基礎自治体(市町村)の権限が強化されたので、これまで以上にしっかり審査してもらいたいといの回答だった。たとえは「職員の勤続年数」を指標とすることなども考えられる。あまりにも勤続年数が短い場合は、保育士の勤務条件等に問題があり、保育に影響が出てくる心配があるからだ。

 主にこの2点について、厚労省の見解を確認したことは「待機児童対策」を効果的に進めていくために大きな成果となった。

  世田谷区の待機児童数が過去最大の884名(4月1日時点)となることを4月30日に発表した。また同時に来年4月までに1550人分の定員枠の拡大を目指すことも打ち出して準備を進めている。 ただし、最後の項目にあげたように、待機児童のカウントの仕方は各自治体がバラバラで、もし他の自治体に習うと簡単に400人と発表することも出来る。これでは、待機児童の需要を正確に把握することも出来ないので、基準を統一してほしいという点に対しては十分な回答が得られていない。



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