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「郵政不動産事業会社」と「チーム西川」の謎
かんぽの宿・郵政民営化
/
2010年05月18日
すでに報道されているように総務省は「郵政ガバナンス検証委員会」を開催し、調査報告をまとめた。私は昨年から原口一博総務大臣の委嘱を受けて総務省顧問に就任して、亀井久興顧問(国民新党前幹事長)と共に「郵政民営化の検証作業」に着手した。私が興味を持ったのは、日本郵政背グループがどのような不動産戦略を持って「東京中央郵便局」の建て替え工事をはじめとした大型不動産開発に着手したかであった。「かんぽの宿等一括売却問題」で明らかになってきたずさんで不透明な不動産取引が、巨大開発を前にどのような体制と見通しの上で行なわれたのかを国民の前に明らかにすることは緊急を要すると判断したからである。総務省のhpには昨日の委員会で提出された全資料が公開されている。この中から、亀井久興顧問の助言を受けながらまとめた「意見書」について、転載をさせてもらうことにする。(私はこの調査を終えて、総務省顧問は3月17日に辞職している)
〔引用開始〕
日本郵政・不動産戦略への意見書
平成22 年5 月
亀井 久興
保坂 展人
郵政民営化を振り返る時、日本郵政公社から承継した膨大な「不動産資産の利活用」は、郵政事業の長期的な減退をカバーするためのいわば「目玉商品」であったはずである。ところが、2009 年の国会で議論となった「かんぽの宿等一括売却問題」や、公社時代の郵政資産の「バルク売却」が明らかになるにつれて、疑問が脹らむ。これらの資産売却にあたり、日本郵政グループには「売却譲渡価格の最大価値」を追求する姿勢が見られず、むしろ「早期決着」を急ぐあまり契約手続きは透明性に欠けて、公平な競争を排除している杜撰な点が幾多あり、官庁でも民間会社でもありえない経緯をたどっていることも明らかになった。
しかし、これら「バルク売却」された資産や「かんぽの宿」の郵政不動産資産は「早期売却」のグループに仕分けされたものである。今後の郵政事業の未来をかけて最も重点化する不動産事業とは、「郵政不動産」の中で「A級」に分類される大規模開発事業である。これこそが、収益性の高い「目玉事業」という位置づけであった。ここでは、「A級」「目玉事業」とされて大きな期待を集めてきた東京中央郵便局・名古屋中央郵便局駅前分室(以下、「名古屋中央郵便局」という)・大阪中央郵便局と総額3000 億円を超える大規模開発事業について検証してみたい。
さらには、民営化当初の「日本郵政グループの不動産戦略」を読み解き、現在の経営に当たっての問題点を考えてみたい。
〔時期的に偏在する関連資料〕
ここでは、調査・ヒアリングの中で今年の3 月になって提出された『グループCRE戦略 資産効率の最大化・キャッシュフロー経営の実現をめざして』(2007 年10 月24 日・日本郵政株式会社・CRE部門・資産ソリューション部)と『不動産事業戦略・日本郵政における不動産事業の基本的考え方』(2007 年10 月24 日 日本郵政株式会社・CRE部門・不動産企画部)の二つの文書を分析することとしたい。
これらの文書は、日本郵政グループの「不動産戦略」を策定するための重要な方針の叩き台であるが、社内の扱いは「社長説明資料」に留まっている。後に触れるが、総額3000 億円に及ぶ大規模開発に着手しながら、未だに「不動産戦略」は策定されておらず、同時に多くの不動産資産の売却・譲渡及び開発事業が動き出しているにもかかわらず、2 年半にわたって「不動産戦略」が変更・上書きされた形跡がない。
何度社内を探しても、日本郵政株式会社に残っている不動産戦略にかかる「最新の文書」はこの二つだけであるとの説明を受けた。文書に書き込まれている不動産事業は、すでに自社開発に着手したり、売却・譲渡したりしているものもあれば、凍結されてまったく動いていないものもある。さらに、細かく見ていくと、この文書に書かれている事業の一つ一つは「自社開発」から「売却・譲渡」に変更されたり、あるいは事業が中止されていたりするなどバラバラである。
こうした経営判断がいかなる原則に基づいてなされていったのかは不明であり、失敗が許されないはずの不動産事業が、すでに日本郵政グループを去った民間企業出身者を中心にブラックボックス化していた疑いが拭えない。
郵政民営化がスタートした時点に「社長説明資料」として提示された文書以外に最新の「不動産戦略」に関するものがないというのは、不可解なことだ。現に事業は行なわれ、経営判断は下されてきた。事業は進捗したが、「不動産戦略」は策定されなかったという日本郵政グループの説明はにわかに信じられないが、もし事実であれば、戦略も指針もなく、巨額の契約や取引が始まったことになる。個々の事業の推進を決めた判断は「場当たり的」ということになり、肝心要の経営判断・意思決定の原則となる土台が存在していないということとなる。
〔2・8 兆円郵政不動産資産の利活用戦略と不動産事業会社構想〕
日本郵政グループが保有する不動産は、約2・8 兆円(土地1・4 兆円・建物1・4 兆円)であり、その規模は大手不動産業者を上回り、JR東海、JR東日本に次ぐ規模であるとしている。『グループCRE戦略』には、次のような記載がある。
「重要なソリューションである不動産開発事業を効率的に進めるため、同事業部門を不動産事業会社として独立させ、日本郵政(株)のFM部(将来、一部機能を分社化予定)とも連携しながら、不動産事業収益を日本郵政グループ全体に還元する仕組みをつくる」
不動産事業会社は明示的に構想されながら実現していない。ただし、ヒアリングによれば現在も「不動産事業会社の分社化」は日本郵政グループの課題として抱えているとのことである。また、不動産収益事業に「不動産開発」(賃貸ビルを中心とした不動産開発)「余裕スペースの活用」(余裕スペースのグループ内外利用の促進・提案を実施)「新規ビジネス」(資産属性に応じ、不動産ファンド等の新規ビジネスを展開)をあげている。
民営化当初、当面は日本郵政グループの不動産事業は、持株会社のCRE部門が統括し、事業会社同士の競争を排して、効率的な投資・開発・運用をしていく司令塔の役割を果たすために「事業子会社の不動産取引を持株会社承認制とする」としている。当面は、「不動産開発事業は『郵便局株式会社』の事業として実施」することでスタートした。そして、持株会社CRE部門は、やがて設立予定の不動産事業会社に移行していく計画であったようだ。 このような表記しか出来ないのは、この文書の計画・立案にあたった民間からのCRE部門への出向者は、ほぼ全員が退社して元いた会社に戻ってしまっていて、日本郵政株式会社経営陣も当時の正確な事業計画を知ることも困難な状況にさらされているからである。大規模開発事業は続いているが、枢要な不動産戦略を計画・立案した者が一斉に退社したというのも異常な事態と言わなければならない。
なお、日本郵政グループから本調査への報告によれば、「不動産戦略の資料の作成に当たっては、民間出身者のみならず郵政の社員も参画・作成してきたことから、趣旨等は十分に理解しているものであり、民間出身者が退社したことをもって、戦略構築・実施ができないというものではない」とのことである。
さらに、実施事業として次のような記載がある。「賃貸不動産アセットマネジメント〔取得・運用・売却を通じたフィーの獲得〕――アセットマネジメント会社の設立」や、「郵政自ら一部匿名組合出資により運用利益を享受――原則としてオフバランス化を前提」とあるが、「一部匿名組合出資」の対象や規模は不明である。さらに、「不動産ファンド」の組成についての記述もある。これについては「メルパルク」、「すでに収益事業化している資産(三田所在の土地信託ビル)」、「所有関係が輻輳している事業資産」、「開発事業リスクが比較的高い(地方等)資産」が対象であり、「都心優良不動産はファンド化しない」とある。
こうした事業展開のメニューが、それぞれ具体的にどのように構想されたのか、企画・立案当事者が退社したとのことで不明だが、不動産事業が堅実な収益を確保する可能性と、投資の失敗による資金消失の不確実性をあわせ持ったものであった危険性も内包していたのではないかと指摘出来る。
これらの記述の後には、「平成19 年度末〜20 年度上期に立ち上げる方向で検討」とあるが、ヒアリングによれば、中期経営計画の策定が遅延したこと等により実現には至らなかったとのことであった。しかし、実際に不動産事業に一部乗り出している現状を踏まえれば、これら過去の構想に日本郵政グループとしての総括を行い、当初計画の洗い直しをした上で、取捨選択の「経営判断」が求められていると考える。
なお、日本郵政グループから本調査への報告によれば、「不動産事業については、投資額も大きく、その成否が経営に与える影響が大きいことから、昨年12 月より、日本郵政副社長及び事業子会社社長計5名をメンバーとし、民間不動産事業者等の話を聞くなど情報収集・勉強会を始めたところであり、また、今後、この勉強会を発展的にルール化し、日本郵政グループ全体の不動産戦略や個別不動産開発の方針等を構築する横断的な体制を立ち上げることを検討しているところである」とのことである。
〔不動産事業のリスク遮断と意思決定の迅速化の矛盾〕
「『不動産事業戦略』日本郵政における不動産事業の基本的考え方2007 年10 月24 日・日本郵政株式会社・CRE部門・不動産企画部」は、具体的な事業計画が登場する文書である。同文書によれば理念を列挙した後で、次のような「ただし書き」を添えている。
「不動産事業は、これまでの日本郵政グループの郵便局・郵便・貯金・保険の各コア事業とは大きく異なることから、コア事業からのリスク遮断と意思決定の迅速化を図り、より発展性のあるビジネスモデルとして日本郵政グループ全体の収益向上に寄与するため、『分社化』を視野に、必要な準備を進めます」とある。
リスク遮断はむろん必要なことだが、「意思決定の迅速化」によって経済環境と事業計画の歯車が上手く回れば、「グループ全体の収益向上に寄与」することは可能だが、経済環境の悪化や事業計画の甘さで歯車が空回りしたり、逆に動いたりする場合もある。
その場合は、「グループ全体の経営に打撃」を与える危険性もあった。分社化はまだ果たされていないが、郵政事業を補佐するはずの新規事業が損失を膨張させるリスクをコントロールするための適切な情報を総合し、責任を持った経営判断が行なえるようにするガバナンスについては、現在の課題であることも忘れてはならない。
同文書には「不動産事業の経営資源計画(主要プロジェト実施スケジュール)」の進行日程も図示されている。
「東京中央郵便局」の再開発は着工し進行中だが、「名古屋中央郵便局・大阪中央郵便局」の再開発事業は、着工していない。この3 大大規模開発事業以外の主要プロジェクトのうち、実際に事業が進行しているのは「沖縄用地」「東池袋用地」「東山用地(社宅跡地)」の3 カ所である。「東池袋用地」は「収益オフィスビル」の用途とされ、住友不動産に信託受益権の7 割を譲渡したが、旧施設の解体には至っていない。「東山用地」も「分譲マンション」の用地として旧社宅の解体工事は公社期中に終わったが、建設施工は止まっている。
沖縄用地は、「分譲+賃貸」で自社開発予定であったが、なぜか方針変更されて2008年にオリックスアルファ株式会社に売却・譲渡された。詳細は調査専門委員会の報告書に委ねるが、「不動産戦略」に書き込まれている自社開発方針は、ある日、突然にくつがえる。こうした経営判断をどの人が中心になって、いかなる理由で「自社開発」をやめたのかは不明だ。
〔大規模事業の資金計画の欠如〕
「不動産事業の経営資源計画(予想損益、資金計画)」も表示されている。表の枠外・下欄には「資金調達の考え方 07〜08 年は全額郵便局会社手元資金充当。09〜11 年、所要資金(敷金除く)の半額を手元資金、残額を外部調達」とある。実際には、「外部調達」はされていない。不動産事業の全体が当初規模より縮小・遅延していることもあるであろうが、1000 億円を超える規模の東京中央郵便局の再開発工事は始まっている。これまでの事業費用は全て「郵便局会社手元資金」で支出されている。
なお、日本郵政グループから本調査への報告によれば、「不動産事業に係る「資金計画」については、上述のとおり、東京中央局、大阪中央局、名古屋中央局駅前分室に加え、主要な他の開発案件も含めた不動産事業全体の事業収支、資金需要などを織り込んだ損益計算書、資金計画を作成し、これらの不動産開発を順次実施した場合における事業全体の損益、資金計画の見通しについて、問題がないことを確認しているところである」とのことである。
だが、郵便局会社の手元資金のそもそもの由来は何か。民営化当初、郵便局会社には4500 億円の手元資金が存在した。しかし、日常業務運営にかかる手元資金でもあり、退職金の引当金も含まれている。本調査に対しての日本郵政株式会社の回答によれば、「手元資金の4500 億円は、窓口における貯金や保険の支払いのための資金とは別に保有しているものである。また、退職給付引当金については、必ずしも同額の手元資金を準備しておくことが会計上求められるものではなく、投資が生み出す利益も含めて将来の退職金の支払原資とするものである。」とのことである。
また、東京中央郵便局の再開発を中心とした不動産事業に郵便局会社の手元資金で支出された総額は、100 億円を超えている(2009 年12 月末現在)。不動産市況の低迷により、大阪中央郵便局、名古屋中央郵便局の再開発は着工していないが、本文書の計画通りであれば、2008 年に東京中央郵便局、2009 年に大阪中央郵便局・名古屋中央郵便局は着工している予定で11 年には竣工する見通しであった。
総額3000 億円を超える大規模開発にもかかわらず、それと連動した実施主体である郵便局会社の中・長期の「資金計画」が存在しなかったということは、常識では考えられないことである。外部調達とは、いったいどの金融機関からの調達を予定していたのか。これらの計画は、いついかなる理由で変更されたのか。日本郵政グループの経営にとって、これらの経緯を正確に把握することは必要不可欠であると指摘したい。
なぜなら、東京中央郵便局は建設工事が進んでいて、大阪中央郵便局は基本設計が終わり、事業としては現在進行形だからである。「三中郵を連結した3000 億円規模の大規模事業の資金計画が更新されていない」ということはにわかに信じがたいが、大阪・名古屋中央郵便局が着工していない現状を幸いとして早急に手当てするべきであると指摘しておきたい。付言すれば、東京中央郵便局の再開発のような大規模開発の場合、キーテナントの6割程度の入居を確保した上で、着工に至るのが不動産業界の常識である。工事の発注を決定する時点で「東京中央郵便局跡の新ビルにゆうちょ銀行の本店が入居するのかどうか」というような議論が行なわれているなど、普通の民間企業ならありえないことが行なわれていたことも指摘しておきたい。
〔不動産事業の収益見通しとは〕
「不動産事業の経営目標及び体制」も描かれている。2016 年の売上・営業収益500億円以上、税前利益200 億円以上とし、追加物件等を含むと売上・営業収益1000 億円以上、税前利益350 億円以上としている。そのために、収益指標を立ててプロジェクト実施の可否を判断するとしているが、PIRR、ROI、DSCRの収益指標がそれぞれ一定値より大きいことなどを「基準」としており、東京中央における建設投資決定時点(2008.6.25)のPIRRはこの「基準」の値を上回っていた。しかし、東京中央のPIRRも設計発注段(2007 年3 月26 日)の数値は、建設投資決定時点の数値を上回っていたが、建設投資決定を経た後、最終的(2008 年11 月18 日)にはこの「基準」の値を若干下回る水準まで低下していた。
〔郵便局会社にとっての「不動産事業」とは何か〕
「持株会社と郵便局会社の業務分担」も整理されている。ここでの記述によると日本郵政株式会社・不動産企画部が個別の「不動産事業方針」を策定し、「開発目的」、「開発規模」、「総投資額」、「機能」、「設計者及び施工者の選定方法」、「竣工予定」を担う。一方の郵便局会社の方は、「実施スケジュール」、「資金調達方法」、「契約手続き」、「維持・管理方法」等を実行するとある。不動産事業の実施主体は郵便局会社と言っても、不動産事業開発の「意志決定」は持株会社が独占し、郵便局会社はこの方針を施行管理、資金調達、維持・運営で支えなさいというものであるということが判る。
持株会社から郵便局株式会社あてに、事業計画を決定した場合に「通知書」が発出される。そこには「本件事業の推進にあたり、発生し得るリスクの管理については、弊社(持株会社)において行うとあり、実質上、不動産事業は持株会社の専権事項だったことがうかがえる。持株会社のCRE部門の責任者が、郵便局会社の不動産部の責任者を兼任しているという事態(持株会社の不動産企画部長が郵便局会社の不動産部長を兼務している。)もあり、「不動産事業の実施主体は、形式上、郵便局会社」であるが、実際には持株会社というガバナンス上の問題点を含んでいたことも指摘したい。
〔意思決定上の問題〕
調査の終盤において、持株会社の取締役会における三中央局の再開発を巡るやりとりが明らかとなり、その意思決定過程を見てみるとガバナンス上の問題点が指摘出来る。三中央局については、日本郵政公社の「不動産ワーキングユニット」において「駅前一等地で都市再生プロジェクトが潜行するなど緊急性・重要性が高い資産」と分類されるなどの検討が重ねられ、不動産事業を実施することを前提に郵便局株式会社に承継された。
当該三中央局の開発については、民営化直後の持株会社の平成19 年10 月5 日決裁(決裁権者専務執行役)で、「不動産開発事業用資産及び三中央局の開発方針」を決定しているものの、全体の不動産戦略について取締役会に諮られることなく、具体的な個別案件が進められることとなった。
なお、郵便局株式会社においては、持株会社から10 月5 日に通知を受けて、同月9日経営会議で協議、17 日に決裁(決裁権者代表取締役会長・社長)、24 日取締役会に報告されている。
大阪中央郵便局については、同10 月5 日決裁に基づき事業方針が決定され、平成20年11 月18 日の持株会社の経営会議において、大阪中央郵便局の建設工事の実施について審議、了承され、同月27 日の取締役会において報告されている。同事案は取締役会の決議事項ではなく報告事項とされている案件ではあるが、同取締役会では複数の社外取締役から大阪中央郵便局開発事業についてテナント確保の面などでフィージビリティ(損益上、資金上の問題)に疑問が提起されていた。また、社外取締役からは、基本設計に入る前の段階で取締役会において議論すべきであるとの指摘もあった。
その後、12 月26 日の取締役会において、11 月27 日取締役会での指摘事項等に対する補足説明がなされ、社外取締役よりテナント確保を進めるなどの指摘があった。さらに、平成21 年3 月25 日の取締役会においては、11 月の取締役会での損益上、資金上等の問題があるとの指摘がなされた点は、どのように記録化されるのかとの指摘もなされている。
これらの取締役会でのやり取りの事実が、今回判明したものであるが、公式な議事録にはその旨の記載がなかった。なお、郵便局株式会社においては、建設工事の実施について、平成20 年11 月25 日経営会議及び同月26 日取締役会で審議、了承されている。
以上のとおり、三中央局開発は経営を左右する大規模プロジェクトであるにもかかわらず、執行側(経営会議)の決定で進められる体制となっており、持株会社の取締役会では単なる報告事項とされ取締役会の意思を反映できる体制となっていなかったことは問題ではないか。また、大阪中央郵便局の開発案件については、経営会議での建設着工決定後に取締役会で異論が提起されていることから、少なくとも建設着工決定前に取締役会に諮るような体制を構築すべきではないかと思われる。
なお、日本郵政グループから本調査への報告によれば、「取締役会議事録は、従来は結果のみの記載であったが、その後、質疑応答まで含めるものとなっているほか、平成21 年10 月の新体制移行後は、取締役を兼務する執行役を2 名から5 名に増員し、取締役会と執行側をつなぐ部分を強化している。また、同年9 月以降、社外取締役のうちの1 名を会長とし、経営会議に付議した案件を全件報告し、会長が取締役会に報告すべきと判断した事項は報告することにしている。」とのことである。
〔小括〕
前述資料には不動産事業会社の構想が記述されているが、「国民共有の財産」に由来する郵政不動産資産を「利活用」するためには、公的セクターとしての透明性・公共性が求められるのは言うまでもない。公社時代から、郵政不動産開発に至るまで、売却・譲渡にあたって地元自治体と協議を行っていない事例もあり、国有財産を承継したとの自覚を疑う事例も散見される。
郵政不動産事業は、その規模を縮小、または一時停止を余儀なくされている状態である。「不動産の利活用」は適正になされるなら、日本郵政グループの今後にとって、なかんずく郵便事業の近未来にとって必要であることは、十分に理解出来る。だからこそ、事業のリスクヘッジがきちんとなされ、郵便事業への収益還元を地道に実現出来る経営見通しが必要なのではないか。そのためには、不動産事業全体の見直しと透明化、ガバナンスの確立に取り組まなければならないとの認識を強く持つ。
繰り返しになるが「不動産事業」への進出は、民営化後の象徴的な事業であった。して、大きく見通しを誤り、開発や投資による負債を負うことがあれば、二度とやり直しのきかない事業である。こうした日本郵政グループの「生命線」とも言うべき「不動産事業」が、民間企業からの事実上の出向者たちが意思決定の当事者となり、経営上の「戦略」「指針」を策定することなく、個々の契約・取引を急ぎ、そして不動産事業の入口をくぐった所で、持株会社西川社長の退陣とともに、民間企業出向者たちはほぼ全員退社してしまうという「異常事態」は民間企業ならありえないことではないだろうか。
郵政事業の側面支援のために「不動産事業」を手がけたのなら、事業についてのすべての責任と経営判断を行なった執行役は、少なくともこの事業が軌道に乗るまでの間、しっかりと仕事を尽くすべきではないか。資金調達を命じられている郵便局株式会社の経営陣にしてみれば、ヘッドとなる意思決定者が不在となった今も、企画・設計・建築の契約は残り、そのリスクを実体的に負うことになる。しかし、企画・契約時の通知書には、「本件事業の推進にあたり、発生し得るリスクの管理については、弊社(持株会社)において行う」と約束されている。この責任を負うはずの人たちの多くは、日本郵政グループを去っている。ガバナンスの不在とは、このことだと言えないだろうか。
〔引用終了〕
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