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パリの飛幡祐規さんから届いたメールを先日紹介した。かなり大きな反響をいただいた。「毒殺・暗殺」に関する共謀罪が新設されていたということは、あまり知られていなかった。フランスはそもそも、団体参加罪たる「凶徒の結社罪」(刑法450・1)があり、その条文を熟読すると共謀も含んだ処罰が課せられるようになっている。

○凶徒の結社罪 一又は数個の重罪又は5年以上の拘禁刑で処罰される軽罪(長期10年以下の拘禁刑のある罪)の準備のために結成された集団又はなされた謀議はすべて、その準備が一又は数個の客観的行為によって特徴づけられている場合は、凶徒の結社とされ、それへの参加は、以下の刑罰に処せられる
①準備された犯罪が重罪又は10年以上の拘禁刑で処罰される軽罪である場合、10年の拘禁刑及び100万フランの罰金

②準備された犯罪が5年以上の拘禁刑で処罰される軽罪である場合、5年の拘禁軽及び50万フランの罰金(政府訳・外務省・法務省提出)

この参加罪の内容を見ると、「謀議」という名で「共謀」が、認定条件として「準備行為」が挿入されている。それでは、同じ大陸法のドイツはどうだろうか。

○犯罪団体の結成の罪(刑法129条第1項)

その目的若しくは活動が犯罪行為の遂行に向けられた団体を設立した者、又はこのような団体に構成員として関与し、そのために構成員若しくは支援者を募り又これを支援した者は、5年以下の自由刑又は罰金刑に処する

ただし、違憲宣告をされていない政党は除外し、団体の「設立未遂」は処罰される。さらに「謀殺・故殺・人質・放火・爆薬による爆発・公共事業の妨害・空路及び海路の介入などに係わる犯罪」については、このような団体を設立し、関与した者を1年以上10年以下の自由刑にする等のただし書きがある。

日本における共謀罪とどちらが幅広いのか。万人に網をかける共謀罪に比べて、対象団体を限定した参加罪のフレームの中に「共謀」をいれた方がはるかに狭くなる。さらに、ここ最近検討しているように「第3の選択」=共謀罪も参加罪も導入することのない国際組織犯罪対策の立法を考える時ではないか。「既遂・未遂」の手前には「予備」という領域がある。カナダで2トンの爆薬を用意して逮捕されたテロ計画中のグループのことが話題になっているが、このケースは現行法の改正など必要なく対応できるものである。「共謀罪がない日本では野放しとなる」と語る学者やジャーナリストは、「爆発物取締規則3条」に予備罪(3~10年)が規定されているのを知らないのだろうか。

ふたたびパリから届いた飛幡さんからメールが届いた。許可を得て、ここに紹介したい。

保坂展人さま

この国際組織犯罪条約を読んでみると、第五条で、日本でいう「共謀罪」か「団体参加罪」を新たに加えよといっているのは、第三条の「実施の範囲」で定義されている国際的な(国境を越えた)組織的犯罪集団の行為に限っているわけですよね。
だから、第五条で新しく国内法を整備せよというのは、マフィアや国際的なマネー・ローンダリングを含む収賄などの犯罪を推定して、それに合わせた整備という意味だから、日本政府の立法は筋が間違っているわけです。

フランスも刑法改革によって、とりわけ「非合法滞在の人を助ける」ことが厳し罰せられるようになったり、「怪しいと思われる人物の身分検査ができる」ような法律がつくられてしまい、むろん人権擁護団体などや市民も反対しましたが、なにせ与党大多数のうえ、「治 安」セキュリティで票を集められる世の中ですから。

でも、今度の「先見日記」や「国境なき教育網」のときにも書いたように、非合法外国人の子どもを「法を犯してでもかくまう」という運動が広がっているので、権利感覚が健全で、基本的人権を守ろうとする人はまだまだたくさんいると思います。

で、国際組織犯罪条約を批准したのはジョスパン政権で、整備をしたのはその後の保守、ラファラン政権。サルコジが内相のときに刑法改革が行われたのでかなり問題になりましたが、この新しい「共謀罪」についてはまったく話題にならなかったので覚えていません。

問題になったのは、おそらく「団体参加罪」と日本で言われる犯罪集団に特別な捜査法が適用された部分で(ただし、国連条約に合わせるという名目ではなくて、テロリズム対策の面が強調されていたと思う)、その犠牲者たちは「テロリスト」と 思われたイマームなど、やはり移民と移民系がいちばんの標的です。

そういう場合には、むろん新聞記事にもなり、弁護士がついて権利を主張していますが。また、サルコジが内相になると警官がわがもの顔になっていきすぎた取り締まりが増え(身分検査、街で走っている車をとめての検査もすごく増え)、白人のフランス人にもかなり被害が及んだほど。(飛幡祐規)

フランスでも「参加罪」濫用の危惧も指摘ささているようだが、テロ対策との兼ね合いで議論されていて、条約が大幅に国内法を変えたということはない。


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