渋谷で起きた短大生殺人事件について、同世代はどう受け止めているのだろうか。昨年連続講座を行ったユーストーク実行委員会の佐藤太郎君にお願いして、同世代の事件への意見・感想を集めてもらった。また、下北沢を中心に演劇を志している若者たちとも連絡をとり、「事件」の周辺を考えてみたい。私はジャーナリスト出身なので、「かくあるべき」という理念からは出発しない。同世代の若者たちが「事件」をめぐって何を考え、またどう受け止めているのかを継続して聞き続けることから始めたい。
1 いまの私が言われたとしてもカチンとくるかなぁ
事件についての感想ですが、いまの私が言われたとしてもカチンとくるかなぁと思います‥。百歩譲って現在だけならともかく、未来まで否定する言動はしてはいけないと思う。
ただそういうことを人に言ってくる人は世の中に山といるわけで、まして家族なら気軽に言う場合もあるだろうし、いくら悔しいからといって殺害に至ってしまったのは残念。それに至るまでよっぽど険悪な仲だったのかなと察しますが。（大学生・女性）
2 親の壁は厚い 一言目に「弁護士」、二言目に「医者」……
今回の事件はあまり他人事とは思えない部分もあります。彼は３浪していたわけですが、僕は２浪で今年大学に入る事ができました。しかし、やはり２年間は親の重圧、朝、「あんた！いつまで寝てるの！速く起きて勉強しなさい！」という言葉を毎日毎日目覚まし代わりに起き、話をすれば喧嘩、目をあわせればビクビクと、それはもう日々が一日でも早く過ぎ去る事を願う毎日でした。
浪人の時に撮った学生証の写真は本当に犯罪者のようだと皆が口をそろえて言います。そんな日々を大学に合格できずにまだ送っていたとしたら。もちろん殺人は許されないし、遺体をわざわざ切断するというのはよくわかりませんが、そんな状況で耐えられなくなってカッとなったら何をするかわからない、というのは何となくわかる気がするのです。
今でも親の壁は厚い。一言目には弁護士。二言目には医者。それが親戚一同歯医者だったとしたら。いろんな角度からゾっとする事件です。別に頑張らなくてもいいと、「親に」言われていたら、少なくとも自分はあの二年間が変わっただろうなと思います。（大学生・男性）
3 破裂寸前の爆弾……トドメの一言で爆発したのか
渋谷、といってもあそこってほとんど新宿ですが、で起こった歯科医の娘さんが殺されて犯人がその兄だった事件、あれは個人的にすごく考えさせられた事件でした。
わが国の最近の個人を測るツールの１つとして学歴、いわゆる肩書きというものがあります。偏差値の高い大学に入り有名な大企業に就職する。小さい頃からそんな教育を受けてきた子供が多いと思います。ちなみにオレもそうでした。
しかし、その道から外れてしまった場合、例えば浪人したり就職しなかった場合、周りの態度がいきなり冷たくなってしまいます。
この事件のあった一家、両親は歯科医、兄もそろそろ歯科医、妹は夢に向かって一直線、それに比べて犯人だった次男は３浪、、、本人は他の家族と比べるとすごく閉塞感を感じたのだと思います。
実は自分の置かれている状況についてだれかに愚痴をこぼしたかった、もしくは同情してほしかったのかもしれません。しかし、家族の中で閉塞感を感じていた彼は親にも相談できなかった、もしかしたら話すことも出来なかったのかもしれません。
それが年月を重ねるごとに不満、というかなにか爆弾を抱えた状態、がどんどん大きくなり、ついには破裂寸前になっていたところで、妹がたまたまトドメの言葉を発してしまい彼の抱えていた爆弾が爆発してしまったのでしょう。
なんか家族にも本当のことを言えなかったとしたら、彼はすごく孤独だったに違いないでしょう。そう考えるとなんだか切なくなってきます。。。
奈良の医者の息子が母親と妹を殺害して放火した事件、山口県の高等専門学校でクラスメートを殺害して加害者が自殺してしまった事件、最近はこういう加害者にすごく同情、というよりも加害者の心境はどうだったのか考えると切なくなってくる事件が多くなってきています。
たしかに人を殺めたのはやってはいけない行為です。しかし、そういう行為に至ってしまった過程というものを考えてしまうと単に殺人犯という一括りでかたづけていいものではないと思います。
個人的には残された両親と兄が、彼が家族のもとに戻るときに受け入れてくれてほしいものです。どんなことがあっても、親と子であることには変わりはしないのだから。
近々オレも親と連絡がつかない兄、なぜかオレとは連絡が取れているのが謎なのですが、と連絡を取ってお互いにいろいろ話したいと思います。（会社員 ２０代前半・男性）
| Trackback ( 0 )
|
|
