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 ここ数日は、データと資料に囲まれて、原稿を書き続けている。世間では、東京地検特捜部の小沢幹事長に対しての「強制捜査」の急展開が耳目を集めていて、18日からの通常国会は荒れ模様になるだろうとメディアは解説する。私が取り組んでいるのは、すでに多くの人が忘却の彼方に追いやっている「八ッ場ダム」にかかわる話である。

 ダムに巨大な利権が宿り、多くの血税が消えていく構造の集大成こそ「八ッ場ダム」だ。先日は、報道ステーションで「地滑り」危険地域であることも詳細に報道され、治水・利水についても、すでに根拠を失っていることは繰り返し書いてきた。

 しかし、それでも地元は「工事続行」「本体工事凍結解除」なのである。これは、大型公共事業を大黒柱にして利権分配してきた群馬県の構図である。24日の午後2時半より前原国交大臣が現地を再訪して、住民との対話を予定していると言うが、「このまま工事を続けてくれ」「ぜひ再開してくれ」との大合唱に囲まれる予定だ。

 本来なら大型公共事業中止後の「生活再建法案」をこの通常国会に提出し、「八ッ場ダムの大転換」を政権交代のシンボルに出来る好機だったが、なぜか法案作成は進んでいない。
治水の見直し有識者会議が昨日、非公開で開かれた。水源連の島津さんが30分間報告し、質疑応答を受けたという。しかし、ダムで飯を食ってきたお仲間が集まって、どんな見直しが出来るのか疑問だ。

 昨年末から品木ダムに堆積するヒ素の問題を集中的に調べている。八ッ場ダム最大のタブーとも言えるこの問題は、慎重に扱いたいと考えてきた。しかし、国交省の「隠蔽体質」は想像を絶するものだった。詳しくは来週明かしたいが、関連記事を今日は紹介しておく。

(引用開始)日下部信夫の二言三言から

八ツ場ダム問題でヒ素問題が明らかに

 やっと新聞記事になりました。日刊ゲンダイ10月17日号である。

 それは八ツ場ダムが建設予定されている群馬県吾妻川の上流に大量のヒ素が堆積している問題である。

 「品木ダム」というなんともへんてこなダムがある。それは、吾妻川の支流のひとつである「湯川」などの下流に設置されている。お役所は、この品木ダムのおかげで吾妻川の水の酸性が中和されて、魚などがすめる川になっていると宣伝している。

 この湯川は、おもに草津温泉の街から排出される水が流れている。pH2というとても強い酸性の水である。温泉水だから生温かい水である。

 酸性が強いということは、それが流れ込む吾妻川の水を酸性にしてきたことになる。酸性の強い水が吾妻川に流れ込んだままにしていると、仮に八ツ場ダムを作ってもコンクリートや鉄はすぐに劣化して、ダム自体が崩れてしまうことになってしまう。そこで作られたのが「品木ダム」である。それでは品木ダムは崩れないのか、という疑問が出てくるだろう。

 湯川の水は、草津の街のはずれに「中和工場」というところを通すことにしたのだ。酸性水を中和するには、大量の石灰を水に混ぜるのである。そしてそこから品木ダムにまで流れていく間に酸性水が中和されていくというのだ。だから品木ダムに流れ込んでいく水は強酸性ではなくなっているから、ダムは崩壊はしない。

 それではなぜ品木ダムが必要か。

 現地を見るとわかるのだが、石灰と混ぜられた湯川の水は「中和生成物」という石灰混じりの濁りが大量に発生する。それをそのまま吾妻川に流すわけにはいかないので、一度その中和生成物をためるために作られたのが品木ダムなのである。

 そんなわけで品木ダムには白濁した水がたまり、同時に中和生成物が堆積していくのだ。ダム湖の7~8割ほどにたまっている。そこでその中和生成物を浚渫している。浚渫したものは品木ダムの近くに埋め立てられている。野ざらし状態である。「産業廃棄物」と指定されているのに。

 ところが、別の問題が最近明らかになった。それは「ヒ素問題」である。ヒ素が人間に有害であることはすでに広く知られていることだ。口から体内に入ると皮膚がんなどの原因にもなる。

 草津温泉の有力な泉源の一つである「万代鉱」からは、毎年50トンからのヒ素を含んだお湯が出てくるのである。草津温泉はとても酸性の強いことで有名だが、ヒ素も含んでいるのである。ただし、ヒ素の専門家によれば、ヒ素は皮膚を通しては体内に入ることはないとのことで、温泉につかるのには何の問題もない。(ヒ素問題の世界的専門家の北里大学山内教授の話。ただし、飲んではいけない。)

 さて品木ダムにはしたがって、中和生成物として堆積しているヘドロの中にここ10年くらい前から年間50トンものヒ素もいっしょに堆積していっていることがわかったのである(上智大学理工学部化学科調査)。すでに500トン以上のヒ素が堆積していると考えられる。ヒ素の致死量は200mgとのことだから、大変なものだ。

 品木ダムからの浚渫物の中に含まれ、品木ダムのすぐ上に野ざらしで堆積されている。これが崩れたら、と思うと背筋がぞっとなるのだ。

 しかも、この中和事業は、ヒ素の有無に関係なく、湯川から酸性の水が流れ出している限り永遠に続けなければならない事業である。八ツ場ダムを維持するためには。しかし、その石灰は永遠にどこかから運んでこなければならないのだ。そして永遠に浚渫を続けなけらばならないのである。永遠にお金をかけ続けなけらばならない。浚渫には、毎年3億円かかるというのに、ついている予算は1億円しかないという話で、浚渫作業さえままならない。品木ダムは近いうちにうずまってしまう危険性さえ指摘されているのだ。そしたら、ダムを乗り越えてヒ素を含んだ水が吾妻川に流れ込んでしまう危険性さえ心配されている。

 浚渫物の崩壊の危険性、品木ダムが中和生成物で埋まってしまう危険性、などなど、八ツ場ダムにはまだまだ知られていない危ない話があるのだ。

 さらに別の問題もあるのだが、それは改めていずれ書こう。それは八ツ場ダムができた途端、八ツ場ダムは崩壊の危機に直面する、という話である。
 
(引用終了)
 


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