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「数日内にニュースとなるものと予測する」と昨日書いたら、今朝の朝日・東京をはじめ新聞・テレビで一斉に報道された。「原子力委員会の食品照射専門部会は13日、香辛料の殺菌に放射線照射を認めるべきだと報告書をまとめた」「『全日本スパイス協会が2000年「蒸気を吹きつける殺菌法では風味が損なわれる』として、当時の厚生省に許可を求める要望書を提出、原子力委員会が昨年暮れから検討していた」(7月14日朝日新聞)「食品衛生法は食品への照射を原則禁止している。……植物の種子や果実などからつくられる香辛料には多くの害虫や微生物が付着している。同法は、ハムやソーセージなどの加工食品に使う場合、一定数以下に微生物を減らすよう求めており、加熱殺菌が必要とされている」(13日東京新聞)ということ。昨日のブログ内に、一括掲載したかったが質問主意書と答弁書の分量があまりに多いので、後半部分を今日は掲載する。

照射食品に関する質問主意書。答弁書

<昨日のブログの続き>

六 消費者が照射食品を必要としている具体的な調査をしているか。また、照射食品の消費者へのメリットを具体的に挙げられたい。

一五 同報告書では、「今後の取組を考える際には、国内外の様々な課題を踏まえた、我が国における食品照射の意義の評価が重要となる」としているが、現在照射についての意義をどのように考えているか。日本国内でスパイスのように多品種の食品に使われるものに照射した場合起きると想定できる問題について検討しているか。また、国外から照射された食品が輸入された場合に検知できるか。照射食品に照射された線量が特定できる検知法はあるか。二回、三回と重複照射された場合検知できる方法はあるか。

六及び一五についての答弁書
 専門部会においては、「食品照射についてご意見を聴く会」を開催し、広く国民の意見を聴取するとともに、これも踏まえ、消費者にとっての食品照射の意義についても調査審議を進めている。
 食品照射の意義については、専門部会において調査審議を進めているところであるが、食品照射は、有害微生物・害虫制御の有用な技術の一つであり、また、貯蔵期間を延長できる技術であると承知している。さらに、オーストラリア・ニュージーランド食品安全局が行った検討において、一定の条件で照射することを許可した場合、消費者の便益として、安全な香辛料・ハーブ類を手にすることができること等が指摘されたと承知している。専門部会においては、御指摘の「多品種の食品に使われるものに照射した場合起きると想定できる問題」について、これまでのところ検討を行っていない。
 一方、放射線が照射された食品の検知法については、厚生労働省において、海外の情報を収集しつつ香辛料を対象として研究を行っているところであるが、現在のところ、海外から輸入された食品を対象とする行政処分をするか否かを判断するために用いる検知法は確立していない。また、食品に照射された放射線の線量及び重複照射の有無について検知する方法は、現在、大学等の機関において研究が行われているものと承知している。

七 香辛料とはどのようなものをさすのか、その定義を示されたい。スパイスに照射を認めたとされる国で照射されているスパイス名と量をすべて挙げられたい。

七についての答弁書
 香辛料とは、一般に、植物体の一部であり、植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎等であって、特有の香り、辛味及び色調を有し、飲食物に香り付け、消臭、調味、着色等の目的で使用し、風味や美観を添えるものの総称であると承知している。
 IAEA等による調べによれば、平成十五年にスパイスの照射を許可している国は四十か国であるが、これらの国の「照射されているスパイス名と量」については、把握していない。

八 原子力委員会は「消費者の理解不足」が照射食品の広がらない理由としているが、消費者の理解不足であるとした根拠を示されたい。

八についての答弁書
 「消費者の理解不足」については、原子力委員会は、原子力政策大綱(平成十七年十月十一日原子力委員会決定)において、「社会への技術情報の提供や理解活動の不足等のために、なお活用が十分進められていない」としている。

九 愛知県の中神食品工業がベビーフード原料への放射線照射事件を起こし、食品衛生法違反事件として裁かれたが、この判決はどのようなものであったか。このような違反事件を防ぐ手立ては具体的にあるか。

九についての答弁書
 昭和五十九年六月六日名古屋地方裁判所豊橋支部判決においては、中神食品工業株式会社が、殺菌を目的に粉末野菜に放射線の照射を行い、当該粉末野菜をベビーフード等の原料として販売していた事案について、当該会社の代表取締役等に対し、「被告人ら五名の判示の所為は、それぞれ、いずれも包括して刑法六〇条、食品衛生法三〇条の二第一項、七条一項、二項、昭和三四年一二月二八日厚生省告示第三七〇号食品、添加物等の規格基準第1B1に該当し、被告会社の判示の所為は、包括して刑法六〇条、食品衛生法第三三条本文、三〇条の二第一項、七条一項、二項、前記規格基準第1B1に該当する」とし、懲役等の刑に処する旨を言い渡したと承知している。なお、本事案については、昭和六十年十月二十二日、名古屋高等裁判所が、被告人らの控訴を棄却したと承知している。
 厚生労働省としては、本事案を踏まえ、「食品の放射線照射業者に対する監視指導について」(昭和五十三年十月十二日付け環食第二百六十七号厚生省環境衛生局食品衛生課長通知)により、各都道府県衛生主管部長等に対し、食品の放射線照射業者に対する監視指導の留意点について通知している。

一〇 原子力委員会は「食品照射研究開発基本計画」を策定し数十億円の予算をつぎ込んでいるが、国内で現在まで照射食品に使った予算の総額はいくらか。こうした予算で行われた研究が正当にされたかどうかのチェックはしているか。

一〇についての答弁書
 食品照射研究開発基本計画(昭和四十二年九月二十一日原子力委員会決定)に基づく原子力特定総合研究(以下「食品照射総合研究」という。)が実施された昭和四十二年から昭和六十三年までの間における食品照射に関係する予算の合計は、約十七億円である。食品照射総合研究については、食品照射研究運営会議において、健全性、照射技術等の点から評価が行われ、原子力委員会において確認されている。食品照射総合研究の終了後も、関係機関における予算の中で、食品照射に関する研究開発が実施されており、その研究開発の成果については、それぞれ適切に評価が実施されていると考える。

一一 日本の照射食品関係の施設で起きた事故、事件は何件あるか。また、照射施設内で使われた水や機材、排出したごみ、埃などの処理はどのように行われているか。

一一についての答弁書
 我が国において食品照射を行っている施設は、士幌町農業協同組合士幌アイソトープ照射センターのみであるところ、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則(昭和三十五年総理府令第五十六号)第三十九条第一項の規定に基づき報告された事故は、一件である。
 また、同センターにおいて使用された水・機材、排出したごみ、ほこり等の廃棄については、これらが放射性同位元素によって汚染されている場合には、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号。以下「放射線障害防止法」という。)第十九条の規定に基づく廃棄の基準に従う必要がある。なお、同センターにおいては、密封された放射性同位元素を使用しており、放射性同位元素によって汚染されたものは、これまで発生していないと承知している。

一二 放射線照射施設が国家管理であるため、照射の毒性実験などをしたい研究者へのサンプル提供などがされない問題があるが、こうした国家管理であるため推進に積極的である研究者だけが集まる弊害に対し何らかの手立てを行ってきたか。

一二についての答弁書
 「国家管理」の意味が明らかではないため、お答えすることは困難である。

一三 ヒヤリングで元国立衛生試験所毒性部長は実験動物の解剖が数人の人間がやったため卵巣の重量に異常が出たと説明しているが、解剖を担当した技官の技術によって個人的バラツキがあっても、その誤差の幅が一定内に抑えられているはずである。しかも照射したエサ群の方が卵巣の重量が減っているのであるから重要な危険を提示していると評価するのが妥当だと考えるが原子力委員会ではどのように評価しているか。

一三についての答弁書
 お尋ねは、放射線が照射されたばれいしょの毒性についてと思われるが、食品照射研究運営会議が、「放射線照射による馬鈴薯の発芽防止に関する研究成果報告書(昭和四十六年六月三十日)」において、「照射馬鈴薯についての広範な毒性試験の結果を総括すると、マウスおよびラットにおける長期慢性毒性試験では、諸種の検査項目において、馬鈴薯を飼料に混入したことによる影響が認められているが、照射馬鈴薯摂取によると考えられる所見としてはラットの三万および六万ラドの照射馬鈴薯添加飼料を与えた雌の体重増加の割合が少なく、六万ラドの照射馬鈴薯添加飼料を与えた雌の卵巣重量に変化が認められた。これらが照射馬鈴薯摂取によると考えられる所見である。マウスにおける長期慢性毒性試験と次世代試験およびサルにおける短期毒性試験では、催腫瘍性および催奇形性を含め、照射によると考えられる影響は認められなかった。以上のとおり照射馬鈴薯の各種動物における毒性試験の結論として、ラットにおける所見を考慮して、一万五千ラドの照射が無影響レベルと考える。」と取りまとめており、原子力委員会はこれを確認している。

一四 原子力委員会食品照射専門部会の「報告書のうち、食品照射の論点とその現状認識についての骨子(案)」に「一部の食品成分は放射線の影響を受けやすく、ある種での食品での食味の低下や加工適性の低下、特定の栄養素の損失といったことが起こる。ただし、このような影響は、食品の毒性や付着した微生物など食品の安全に係わるものへの影響でなく、また、加熱調理の際などにも生じるものである。」としているが、食味の低下を起こすことがわかっている食品を全て挙げられたい。加工適性の低下を起こす食品を全て挙げられたい。加熱処理で生じるとしているが、2-アルキルシクロブタノン類も加熱で生成するのか。

一四についての答弁書
 我が国で実施された食品照射に関する研究開発の成果の中で、米について品種により食味が低下するものがあること及び小麦について小麦粉の粘度が低下するものがあることは承知している。
 また、2-アルキルシクロブタノン類は、食品に放射線を照射した際に発生する生成物とされており、加熱で生成することはないとの研究成果があると承知している。

一六 照射食品を販売している国の販売量はどのくらいあるか。(推定量でない実際の販売量を一〇年前までさかのぼって記されたい。)

一六についての答弁書
 お尋ねについては、承知していない。

一七 照射で食中毒が減るとしているが、実用化した国で食中毒はどのくらい起きているか。照射開始前と開始後のデータをもって示されたい。

一七についての答弁書
 食品照射には殺菌効果があることは証明されているが、食中毒には多様な要因があるため、実用化された国における「照射開始前のデータと開始後のデータ」をもって、食品照射と食中毒の関係を明らかにすることは困難である。

一八 食品照射専門部会の「報告書のうち、食品照射の論点とその現状認識についての骨子(案)」に、2-ドデシルシクロブタノンについて「消費者に健康の危険をもたらすものではないとされている」と伝聞の記述になっているが、この物質について、安全性試験を行う予定があるか。

一八についての答弁書
 お尋ねについては、専門部会において検討中である。

一九 食品照射専門部会の「報告書のうち、食品照射の論点とその現状認識についての骨子(案)」に、我が国での研究で卵巣や体重に異常が出たことについて「サンプル数が少なかったことによる振れ幅と考えられている」という記述があるが、サンプル数が少なくても、統計的有意差が出ている結果を否定してよいとする理由はなにか。逆にサンプル数が少ない実験を安全の根拠にできる理由は何か。これまでの研究も統計的有意差があってもこのような評価法をしてきたのか。

一九についての答弁書
 専門部会の資料「報告書のうち、食品照射の論点とその現状認識についての骨子(案)」における「サンプル数が少なかったことによる振れ幅と考えられている」との記述は、放射線を照射したばれいしょのラットでの試験に関することである。
 これについては、食品照射研究運営会議が、「放射線照射による馬鈴薯の発芽防止に関する研究成果報告書(昭和四十六年六月三十日)」において、「照射馬鈴薯についての広範な毒性試験の結果を総括すると、マウスおよびラットにおける長期慢性毒性試験では、諸種の検査項目において、馬鈴薯を飼料に混入したことによる影響が認められているが、照射馬鈴薯摂取によると考えられる所見としてはラットの三万および六万ラドの照射馬鈴薯添加飼料を与えた雌の体重増加の割合が少なく、六万ラドの照射馬鈴薯添加飼料を与えた雌の卵巣重量に変化が認められた。これらが照射馬鈴薯摂取によると考えられる所見である。マウスにおける長期慢性毒性試験と次世代試験およびサルにおける短期毒性試験では、催腫瘍性および催奇形性を含め、照射によると考えられる影響は認められなかった。以上のとおり照射馬鈴薯の各種動物における毒性試験の結論として、ラットにおける所見を考慮して、一万五千ラドの照射が無影響レベルと考える。」と評価している。
 また、専門部会において、「サンプル数が少なくても、統計的有意差が出ている結果を否定してよい」、「サンプル数が少ない実験を安全の根拠にできる」とする判断は行っていない。

二〇 食物の安全性確認は毒性学的、微生物学的、栄養学的な三項目で足りると考えているか。動物に食物を与えた場合、どこまで餌の中にまぜて食べさせることができるかという実験は可能であるが、それが、食物の安全性の証明になる理由を説明されたい。

二〇についての答弁書
 専門部会において、照射食品に係る安全性及び栄養学的適格性に関する国内外の評価の現状について調査審議を行っているところである。

二一 全日本スパイス協会からスパイスへの照射推進の依頼、請願等を受けたことがないか。

二一についての答弁書
 平成十二年十二月四日、全日本スパイス協会の理事長から「香辛料の微生物汚染の低減化を目的とする放射線照射の許可の要請」と題する当時の厚生大臣あての文書の提出があった。

二二 各国で照射に反対する消費者運動があるのか。その反対の理由を把握しているか。

二二についての答弁書
 「各国で照射に反対する消費者運動」の実態については、把握していない。なお、食品照射に対する懸念に対し、FAO、IAEA及びWHOがその懸念に対する考え方を示してきたことは承知している。

二三 アフラトキシンは「適正な条件で貯蔵した照射食品では増大しない」と記載されているが適正な条件とはどのような条件であるか。適正でない場合にアフラトキシンが増えることがあるということか。

二三についての答弁書
 専門部会の資料における「適正な条件」とは、FAO及びWHO合同食品規格計画の照射食品の一般規格において言及されている「食品衛生の一般原則」等を想定している。「適正でない場合」については、様々な条件が考えられ、一概にお答えできない。

二四 食品製造業者から照射食品の相談を受けたことがあるか。あるなら、どのような食品業者か。

二四についての答弁書
 厚生労働省においては、食品製造業者から照射食品について、個別の照会を受けたとの記録はない。

二五 家畜用飼料に放射線照射がされているが年間の照射飼料はどのくらい生産されているのか。家畜用飼料がペット用エサとして使われている可能性はないか。家畜用飼料を人間が食べてはいけないという法律はあるか。

二五についての答弁書
 放射線が照射された家畜用飼料の年間の生産量については、把握していない。家畜用飼料がペット用のえさとして使われているかどうかについては、把握していない。また、「家畜用飼料を人間が食べてはいけないという法律」はない。

二六 士幌農協で照射されたジャガイモの量を照射開始以来、年度別の量を示されたい。士幌農協で照射されたジャガイモが実際に市場で販売された量を開始以来、年度別に示されたい。

二六についての答弁書
 士幌町農業協同組合によれば、士幌町農業協同組合において放射線が照射されたじゃがいもの量とこのうち市場で販売された量とは同じであり、その量は、昭和四十八年度約一万四千トン、昭和四十九年度約一万九千トン、昭和五十年度約二万二千トン、昭和五十一年度約一万四千トン、昭和五十二年度約一万五千トン、昭和五十三年度約一万五千トン、昭和五十四年度約七千トン、昭和五十五年度約八千トン、昭和五十六年度約一万トン、昭和五十七年度約一万三千トン、昭和五十八年度約一万二千トン、昭和五十九年度約一万三千トン、昭和六十年度約一万二千トン、昭和六十一年度約一万二千トン、昭和六十二年度約一万四千トン、昭和六十三年度約一万五千トン、平成元年度約一万四千トン、平成二年度約一万三千トン、平成三年度約一万三千トン、平成四年度約一万千トン、平成五年度約一万トン、平成六年度約一万千トン、平成七年度約一万千トン、平成八年度約一万トン、平成九年度約一万四千トン、平成十年度約一万千トン、平成十一年度約九千トン、平成十二年度約七千トン、平成十三年度約八千トン、平成十四年度約九千トン、平成十五年度約九千トン、平成十六年度約九千トン及び平成十七年度約八千トンとのことである。

二七 照射施設がテロの対象となる危険があるが具体的にどのような予防措置がとられているか。また、照射施設が不要になり解体される場合、残ったコバルトなど放射性廃棄物は誰の責任によって、どのように処理をするのか。

二七についての答弁書
 食品照射を行っている施設を含め、放射性同位元素を使用している工場又は事業所は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)第百二条第一項に規定する生活関連等施設として位置付けられており、同法第三十二条第一項の規定に基づき定められた国民の保護に関する基本指針(平成十七年三月二十五日閣議決定)に従い作成された生活関連等施設の安全確保の留意点に沿って、施錠管理の徹底、管理区域への出入管理の徹底、治安当局等の関係機関への通報連絡体制の整備・確認等の措置を講ずることとされている。
 また、放射性同位元素の使用を廃止する場合、使用者は、放射線障害防止法第二十八条第一項の規定に基づき、当該放射性同位元素を同法第三条第一項の許可を受けた者等に譲り渡し、当該放射性同位元素による汚染を除去し、又は当該放射性同位元素によって汚染された物を廃棄する等の措置を講ずることとされている。


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