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菅総理記者会見で、「国会議員自身が身を切ることも必要だ。衆議院定数を80、参議院定数を40削減する方針に沿って、8月中に党内の意見をとりまとめ、12月までに与野党の合意を図る」と発言した。以前から「衆議院比例定数80削減」について疑問を感じてきたが、この国の政治をさらに劣化させる提案だと私は思う。メディアは「国会議員が身を切ることが必要です。ぜひ比例定数を削って下さい」などと追随する向きが多いが、もう一度考え直してみたい。

 小選挙区制度は二大政党の議席占有率が極めて高い。また、議席獲得後の再選率も高く、無名の新人が挑戦出来る確率はきわめて低い制度だ。今回の「比例削減」案は、この国の選挙制度を更に小選挙区中心にして、少数政党の議席を激減させるか壊滅させる効果を持つ。この菅総理の選挙制度改革案が実を結ぶなら、「自民か、民主を選べ、他に政党はありません」という選挙の姿になる。

菅直人さん自身が政治に挑戦した当時は、「自民か、社会」という時代だったが、最初は無所属、次に社民連というミニ政党での挑戦を続けて1980年に当選をされた。あえて、少数政党を選んで、国会で経験を積んだことは決して無駄ではなかったはず。長く国会での経験を積んだ後で、新党さきがけに合流する。社民連よりは大きいが、それでも新党さきがけも大きな政党ではなかった。菅直人の名を大きなものとしたのは「薬害エイズ問題」だが、新党さきがけから入閣した厚生大臣だったことも覚えておきたい。

一般的に少数政党は、国会内で窮屈な思いをしている。発言時間や機会も制約され、政治メディアもそれほど注目しない。だからこそ、大きな政党が取り組めないことを、小さな政党に所属する議員として積み上げる活動も可能だということを証明したのが厚生省が隠蔽していた「薬害エイズファイル」を発見し公開した手腕だった。

こうした政治経歴を持ちながらも、「比例区から削れ」という発想が前に来るのはなぜだろうか。政権交代可能な二大政党制を標榜しながら、今や「民主・自民大連立」が頻繁に話題になる。そして、もし、両党が示し合わせて少数政党の息の根を止める選挙法変更を多数決で行うというなら、次の衆議院選挙から選挙制度は大政党有利・少数政党不利にある。

テレビ・新聞などのメディアで「比例区削減」以外に「国会議員が身を切る方法」が存在すると提示・報道するように求めたい。国会議員の歳費・経費の削減も効果的だし、議員定数削減を考えるのなら「小選挙区削減」をなぜ議論しないのか。選挙区の削減は比例区削減よりも「身を切り合う」(自民も民主も、選挙区調整は七転八倒となる)結果となる。

「国会議員自身が身を切る」と言いながら、民主・自民に痛みはほとんどなく、少数政党には激痛か議席消滅を宣告する結果となる。衆参がこれほど似通った選挙制度でいいのかという問題もある。地域代表としての衆議院での中選挙区導入や、参議院の完全比例代表制度など改革の道はいくらでも考えられる。拙速な「比例区のみ削減」に走るべきではない。
 


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