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「死刑廃止の信念変わらぬ」で「死刑執行」とは
死刑制度
/
2010年07月30日
どうも千葉景子法務大臣の様子がおかしい。当選が確実視されていた参議院選挙で落選し、長期にわたる「続投」に批判が高まる中で、これまで拒否してきた「死刑執行命令」ににわかに傾斜したのではないかという観測を、千葉大臣自身は否定している。ただ、15年にわたって歴代法務大臣と法務省刑事局のやりとりを見てきている私からすれば、いくつかの情報を総合して次のような推測をせざるをえない。人事異動を直前にした法務省幹部との間で「死刑廃止のための死刑執行」という「特異な論理」を構築し、肥大化させていったというシナリオだ。最新のニュースを見てみよう。
〔「
読売新聞
」より引用開始〕
死刑の刑場、8月中に公開…千葉法相が表明
千葉法相は30日の閣議後記者会見で、8月中に東京拘置所(東京都葛飾区)の刑場を報道陣に公開し、死刑制度の存廃を含めたあり方を研究する勉強会も同月中に発足させる方針を明らかにした。
千葉法相は、刑場を公開する理由について「市民が裁判に参加することになった。市民に判断を求める以上、判断の材料として、できるだけ刑の内容を知ってもらうことが必要だと考えた」と説明。死刑制度の勉強会も途中経過や成果を原則公表するとした上で、「みなさんに議論してもらえるようできるだけ伝えていきたい」と述べた。
同拘置所で28日午前、死刑囚2人の執行に立ち会った際の感想も「必要があれば(感想を発表することを)考えていきたい」と語った。
千葉法相は昨年9月の就任直後まで「死刑廃止を推進する議員連盟」に加盟しており、この日の会見では「私自身、もともと廃止するのも方向性の一つと考えてきた。それは変わるものではない」と強調。死刑を執行したことは「法務大臣として職責をどう果たしていくべきかを考え、様々な検討、精査した結果」と語った。
裁判員裁判で裁判員が死刑か無期懲役かの判断を迫られるようになったことが執行を決断した要因なのかと問われた時は、「それもまったくないとは申し上げない」と答えた。(2010年7月30日12時55分)
〔引用終了〕
千葉法務大臣は、「死刑廃止議員連盟」のメンバーだったことを悔いることなく、「死刑廃止もひとつの方向性、それは変わるものではない」と発言している。同時に、裁判員制度で市民が「死刑」か「無期懲役」かの選択に直面する時に、「法務大臣が判断しなくていいのか」とも自らを問い詰めた形跡が残る。そして、千葉大臣が自ら刑場に赴いて死刑執行に立ち会い、また「刑場のメディアへの公開」という方針を打ち出したことが今回の死刑執行の大きな引き金になったと見る。
法務省はこれまで、再三にわたる死刑廃止議員連盟の「刑場を見せてほしい」との要望に対しても拒否を貫き、過去3回衆参の法務委員会での視察時を例外として、刑場を外部に公開していない。私は、衆議院法務委員として2回にわたって刑場の視察に赴き、その様子をメディアに語ってきた。それだけ閉鎖的で、密閉性の強い刑場を「公開」するという決断を法務省側がするので、千葉大臣は「死刑執行」によって「大きな国民的世論を興す後世に残る役割を果たすことになる」というのが「特異な論理」の中心部分にあったのではないか。
こうして、死刑の刑場がテレビなどで「公開」された時、どのような反応が起きてくるのかも、当然ながら法務省刑事局側は予想している。私は、メディア側が「死刑の舞台装置」の巧みさに感動し、また「厳粛にして必要な空間」などと称賛する報道も出てくる可能性がある。ここでのポイントは法務省記者クラブ加盟社以外の海外メディアやフリーの記者を入れることにある。
裁判員制度では、市民が多数決で死刑判決に参加するという世界中に例のない評決の仕組みがつくられた。千葉大臣は、死刑の刑場が公開されることで、より慎重から事実に即した死刑の存廃も含めた議論が尽くしたいという意図があるのかもしれない。しかし、海外メディアやフリーを排除して行なわれる「刑場の公開」によって「鎖国ニッポン」は千葉大臣の意図とは別方向に暴走しかねない。
それは、ずばり言って市民・国民参加の「死刑執行」という姿だ。
死刑の刑場も公開され、裁判員で市民・国民が決めた死刑の瞬間を皆が見届ける……もちろん、最初から「執行中継」などはないだろう。しかし、刑場が公開され、死刑囚の実名が公開され、法務省が発表するというのが次の「処刑」の状況だ。裁判員制度で開いた死刑への市民参加の入口が、市民・国民が処刑を確認・承認すると出口で完結し、今後50年は死刑判決と死刑執行に疑問を持たない社会を彼らは目指している。
もちろん、死刑の情報公開が進むのは歓迎だ。だが、メディアコントロールの術にたけた法務・検察の思惑通りに「世論」が誘導されていくことのないように、冷静かつ論理的な議論を深めたい。
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