TOP PAGE BLOG ENGLISH CONTACT




たった10分の制限時間をフルに使って、安倍内閣の最優先課題としている「教育3法」への本会議質問を行った。とはいうものの本会議場はガラガラ、安倍総理の熱意も空転気味であることがよく現れている。明日、特別委員会は設置され、議論は始まろうとしている。

07年4月17日 衆議院本会議 質問全文     衆議院議員 保坂展人

 社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の教育関連3法案(学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案)対する代表質問を行ないます。

(緊急)今回の3法案は本来、常任委員会である文部科学委員会でじっくりと審議されるべきものであり、これをすっ飛ばして特別委員会で急坂を転げ落ちるように特急審議をするものではありません。
総理、「学級閉鎖」直前のような欠席だらけの今日の本会議の議場を見てどう感じますか。通告はしていませんが答弁を求めます。

①総理が語る「教育再生」という言葉は、無用な学校教育への不信感を煽っていないでしょうか。従来、国会で議論されてきた「金融再生」「民事再生」という言い方は、経営破綻後の法的手続きやスキームを表していますが、ニッポンの教育は「破綻」あるいは、「壊滅寸前」の事態という認識のもとで、総理は、「教育再生」という言葉を使っているのでしょうか。(総理)

②子どもたちの「規範意識の欠如」を憂慮し、そのための「教育再生」を訴える総理には、「政治家の規範意識」「政治倫理」についてどのような関心と方針があるのでしょうか。松岡農水大臣の「ナントカ還元水」事務所費問題も無為無策で放置し続けて政治不信が広がっている今、教育再生にまして「政治倫理再生」を最優先するべきではないでしょうか。総理の見解を問います。(総理)

③安倍総理の教育観を聞いていると、「教育の自由」について統治権力の当事者としての「規範意識」の欠如を感じます。フランスの社会学者コンドルセは『公教育に関する5つの覚書』の中で、「教育の自由」にふれて「学ぶ自由」「教える自由」をすべての人間に固有の自然権としています。公教育は「人民に対する社会の責務」であり、「公権力の義務」なのです。総理は、国家権力が教育現場に介入を強めることに熱心だが、「教育の自由」を国民に保証する為政者の責務について無自覚ではありませんか。(総理)

④過去の教育改革論議を踏まえて、中曽根内閣当時の臨時教育審議会で実現したこと、また森内閣の「教育改革国民会議」で「17の提案」で述べられたことは、今となっては不十分だったのか総理に答弁を求めます。(総理)

⑤官邸主導で設けられた教育再生会議には、教育現場の経験者は2人のみ、教育問題専門の研究者は1人も含まれていません。文科大臣から諮問を受けた中央教育審議会は、土日返上の突貫審議を行ない、わずかな期間で答申を強いられています。

総理自身もメンバーとなった「教育再生会議」第1次報告は、いったい誰に対して行われたのか。また、この報告と文科大臣が中央教育審議会に諮問した内容は同一であるのか。誰が見ても前のめりにドタバタと急ぎすぎている理由は何なのか、総理の答弁を求めます。(総理)

⑥01年6月の国会で審議された「学校教育法」「社会教育法」「地教行法」の教育関連3法改正後、政府はその実施につとめている最中ではないでしょうか。今回、あらためて制度変更を行なうというのであれば、6年前の教育関連3法案改正をどう総括されるのか、総理の答弁を求めます。(総理)

⑦教育再生会議第1次報告は、「ゆとり教育」を見直し、学力向上を図るために「授業時間」の10%増加などで「基礎学力強化」をうたっています。ところで、「ゆとり教育」による学力低下が現実に起きているという調査結果はあるのでしょうか。文部科学省の全国の高校3年生を対象として行われた調査によれば、学力改善と学習意欲の向上が見られたとの傾向が報告されています。また「授業時間増」が学力向上に貢献するデータがあるのであれば文科大臣、お示しください。(文部科学大臣)

⑧「土曜日スクール」の提言なども行われているが、長い時間をかけて議論してきた「学校5日制」の存否に関わります。学校教育のみならず、社会全体で「週休2日制」を定着させようとして努力してきた政府の方針を転換する考えもあるのですか。官房長官にうかがいます。(官房長官)

⑨学校教育法改正では、「我が国と郷土を愛する態度を養う」ことなどが教育の目標とされています。いわゆる「愛国心」の規定は、偏狭なナショナリズムの蔓延につながるおそれが極めて大きいのではないですか。
さっそく、教科書検定において沖縄戦での集団自決で「軍の強制」の部分につい修正意見によって削除されています。ことは重大です。総理の見解を問います。(総理)

⑩従前、教育内容に係わることは学習指導要領で示されてきました。上位法である学校教育法に具体性を持たせるべきではなく、「目標」は大綱的な基準とすべきではないでしょうか。学校教育法と学習指導要領の関係についての見解を文科大臣に聞きます。(文科大臣)

⑪政府は新設される副校長、主幹教諭、指導教諭などの管理組織で教職員の管理強化を図ろうとしています。従来の教頭や教務主任、学年主任との相関関係はどうなるのか。教師総掛かりで子どもに向き合う必要がある教育の現場に、教職員のピラミッド型の指揮命令を持ち込むことは、管理職の顔色にふりまわされ、子どもの顔色に目がいかないヒラメ教員を増やしてしまうのではないかと心配です。文科大臣の認識を聞きます。。(文科大臣)

⑪「学校評価」の拙速な導入は、学校間の格差を広げるだけであります。安倍総理が手本としている「イギリスの教育改革」では、学校間の格差が拡大し、下位校の通う子どもたちの多くが見捨てられました。

一部のエリートを選抜・育成するのではなくて、達成度の低い学校こそ手厚くサポートし、子どもの学力全体の底上げをはかる必要があります。テスト結果のみを絶対視せず、教育実践の全体を見なければなりません。また、短絡的に教職員評価と学校評価を連動させるべきではないと考えます。学校評価と学校間格差について、また評価結果の取扱いについて、文科大臣の方針をお示しください。(文科大臣)

⑬地方自治法に規定されている「是正要求」を地教行法に新設し、「指示」権限も国が持つ。これは、国の管理強化に他ならず、教育の中立性と教育行政の安定性確保を目的とした教育委員会制度の否定にもつながりませんか。
また、地方分権の理念と根本から対立するものです。「是正要求」「指示」の要件とされる「児童・生徒等の教育を受ける機会が侵害されている」あるいは「生命・身体を保護する必要」とはどのような場合なのでしょうか。文科大臣から頻繁に「是正要求」や「指示」が出されるのか、それとも「伝家の宝刀」のようなものなのか。文科大臣に問います。(文科大臣)

⑭「教職員免許」は教員資格の問題であり、教員としての勤務状態は人事管理の問題であります。「教員の採用、養成、研修」などの人事行政・管理の不備を、教員免許更新とすりかえており、問題の所在をはき違えていると言わざるを得ません。

免許・資格が就業条件とされる医師、法曹など多くの専門職のなかで、「教員免許」のみを更新制とすることは、ただでさえ多忙な教員全体に苛酷で不要な負担を強いることであり、現場を混乱させます。また、免許更新のためのコストは誰が負担するのでしょうか。文科大臣に聞きます。(文科大臣)

⑮また、教育公務員特例法改正による人事管理の厳格化によって、任命権者の恣意的な運用が行なわれるおそれがあります。これを防止するためには、第三者による判定審査や不服申立て等の制度化が必要だと考えますが、文科大臣のお考えはどうでしょうか。(文科大臣)

⑯OECD加盟各国の中で、政府提案のような教員免許更新制がある国はあるのか。どのような制度となっているのか文科大臣にお答えいただきたい。(文科大臣)

⑰また、教員免許更新制の根拠となっている「教員の質が低下している」ということを証明するデータは文科省にあるのでしょうか。(文科大臣)

⑱政府が提出した教免法改正案は、子どもをめぐる社会的環境の変化を無視し、学力低下の要因を教員にすべての責任を負わせるものではないですか。30人学級など、少人数教育やきめ細かい教育プログラムによって、子どもの「教育環境」を改善することが先決ではないか。自由な発想の独創的な教員によって、意欲的な授業が出来る環境を整えることが政府の使命ではないか。予算も、教育施設も大幅に拡充も必要との認識をどう持っているのか。総理・文科大臣に聞きます。(総理・文科大臣)

⑲教育基本法審議の過程で議論された「いじめ自殺・未履修問題」が、国の地方教育行政への関与の強化によって、はたして改善されるのか。いじめ問題は、こどもをめぐる社会問題であり、未履修問題は有名大学への受験競争を本質とする問題ではないのか。総理に聞きます。(総理)

教育の制度設計を誤れば、多くの子どもたちのかけがえのない人生を奪われることと言っても過言ではありません。突貫工事はしばしば手抜き工事となり、通常の工期を半減して出来上がった建物は欠陥建築となります。教育制度の重大な変更は、慎重を期した安全で間違いのない構造としなくてはなりません。

極めて拙速に提出された3法案は、典型的な欠陥法案であることを指摘して、私からの質問を終ります。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 突貫作業で本... 法務委員会、... »